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おばあ様は心配性 - 冒険者になった孫が心配だから、現役復帰して一緒にパーティを組む事にしました -  作者: ぷぷ太郎
【第四章】北国境のダンジョンでのあれこれと大貴族の悩み
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第82話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


アンリと一緒にヴァンガーデレン家の当主と大奥様に面会したキース。どうやら気に入ってもらえた様で一安心です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なるほど・・・それなら上手くいきそうですね。解りました。ですが、細心の注意をもって取り計らうのですよ」


「はい。だいぶお時間いただきましたが、これで解決できる様、抜かり無く進めてまいります」


説明を終えたアンリが頭を下げる。


「キース、我が家の事情であなたにも手数を掛けますね。礼を言います」


「お気遣い感謝致します。ですが、自ら進んで口を挟んだ事でございます。お気になさいませぬ様に」


キースは顔をほころばせる。


「それでは、準備を進めて参りたいと思いますので、失礼いたします」


「侯爵様、大奥様、本日はお目通りいただき感謝致します。お近づきの印に、この魔法陣は贈り物とさせていただきますので、お楽しみいただけたら幸いでございます」


「分かりました。ありがたくいただきます。では、私達からも一つ贈り物をしましょう。アンリ、彼に認識のプレートを渡しておきなさい。あなたならいつでも歓迎しますよ」


!?


「はい、かしこまりました」


(そんな事になる様な気もしましたが・・・)


認識のプレートを渡されるという事は、ヴァンガーデレン家が身分を保証し、何かあったら保護するという事だ。しかも、「いつでも家に来い」という。これ以上の待遇は無いだろう。


「キースさん、私は認識プレートの手配をしていきます。先程の待合室でお待ちいただけますか?」


「はい、分かりました。それではお先に失礼します」


キースはリーゼロッテとエヴァンゼリンに礼をして退室する。


キースの気配が遠ざかっていくのを三者三様に感じながら沈黙が続いたが、受付のある待合室に入るのを確認したのを切っ掛けに、リーゼロッテが口を開く。その顔は興奮に包まれている。


「アンリ!よく彼を連れてきてくれました!あの華奢な体つき、サラサラの金髪、南方の海を思わせる瞳、色づいた頬、そしてあの笑顔!あぁ、まさに噂通りの天使でした!」


「リズ、大きな声を出すのではありませんよ。はしたない」


エヴァンゼリンがたしなめるが、彼女も笑顔だ。


「ですがお母様!あれでは興奮するなという方が無理でございます!それに、お母様だって、書斎で研究書をなどと誘って!油断も隙もない!ずるうございます!」


「うふふ、本当に可愛らしい少年でしたね。ひと目見た時から、顔がほころぶのを我慢するのに必死で、ずっと難しい顔になってしまいました。怖がらせてしまわなかったかしら?あのアリステアが手放したがらなかったのも納得です」


「見た目はもちろん、あの頭の回転の速さ、張り詰めた空気の中でも自ら踏み込んでくる胆力、どれをとっても一級品です。それでいて、動揺が表に出てしまう歳相応の若さもある。アンバランスさがたまりません!」


「今回の事が解決したら、そのまま他所へ行くのですよね?その前にぜひ直接お礼をしなければいけません。でないと、私は今回が最初で最後になる可能性がありますからね。アンリ、その辺りの誘導をよろしく頼みますよ」


「生ける伝説」とまで言われるエヴァンゼリンがこれである。


「はい、お任せください」


アンリはそつなく返答をしながらも、心の中では(どうしてこうなった・・・)と思うことしきりだった。


「今年の魔術学院の一般市民側の主席卒業者は、独創的な魔法陣を作る程の大変な才能の持ち主であるが、国務長官も近衛騎士団長も誘いを断られた」


「それでいて性格がよく、見た目も天使の様に可愛い」


「そしてその祖母は、白銀級冒険者であるあのアリステアである」


という噂は流れていた。


当然、様々な情報網を持つヴァンガーデレン家であれば、その辺りも把握している。


エリーから連絡を受けた時点で、リーゼロッテもエヴァンゼリンも、その噂の少年に会うのを楽しみにしていたらしい。


そして、会ってみればこの有様だ。まるで舞踏会で王子様に声を掛けられた、貴族のお嬢様方である。


「そうです、研究書は写本を作って贈り物にしましょう。いえ、いっその事、原本をあげて写本を家に残せばいいわね。エレジーアの研究書なんて、内容が高度過ぎてとても理解できないのですから。早速写本をさせる人員を確保しませんと」


推しに全力を注ぐファンと変わらない。なまじ権力も金も暇もあるだけに質が悪い。


「そういえばアンリ、メモにありましたから触れませんでしたが、アリステアの名前を出さない様に、というのはどういった理由なのでしょう?」


「パーティの皆さんから聞いたのですが、アリステアさんは、キースさんに、自分が白銀級冒険者のアリステアだと言っていないそうです」


「それは一体どういうことでしょう?」


二人とも不思議そうに首を傾げる。


「一言で言いますと、言いそびれてしまった、という事の様でございます」


アンリは、アリステアに聞いた話をそのまま伝える。


「なるほど・・・確かに、散々反対していたのに、自分も冒険者だったというのが知れるのは気まずいですね」


「彼に嫌われたくないという気持ちはとてもよく解ります」


二人で頷いている。


「ですが、彼が知るのは時間の問題の様な気もします」


「冒険者として活動する以上、彼女の名前は色々な場面で出てくるでしょうからね」


「その、キースとパーティを組んでいるという3人は、腕は確かな様ですが、人としてはいかがですか?」


アンリは、自分が知っている3人の事を説明した。


「キースをリーダーとして前に出し、自分達はそのフォローに徹している、と・・・」


「自分たちの実績も欲しいであろう年齢ですのに、もっと歳上の、引退も近いベテラン冒険者の様な立ち振る舞いですね」


「それは私も感じました。後、3人共彼を見る目がとにかく優しいのです。何というか・・・頑張る若者が可愛くて仕方がないという様な」


「まるで・・・孫でも見守るかの様な?」


エヴァンゼリンの目がキラリと光る。二人がハっとする。


「カルージュでアリステアと一緒に暮らしている後輩冒険者も、海の神の神官と壁のような大柄な戦士ではなかったかしら?」


「・・・お調べいたしましょうか?」


「正面から尋ねてみて、相手の反応と返答だけ教えてちょうだい。無理に探ったりする必要はありません」


色々と事情があるのだろう。気にはなるが無理に聞き出す事も無い。とても、とても気にはなるが・・・


「かしこまりました。それでは、諸々準備に取り掛かります。吉報をお届けできる様、引き続き全力を尽くしてまいります」


「ええ、彼の件と例の件、どちらもよろしく頼みます」


(・・・キースさんが前にきてしまいましたね)


まだまだキースのネタで盛り上がる二人の前から辞したアンリは、側仕えに主達のお茶の世話と認識のプレートの用意を頼み、キースと合流して諜報等を担当する人員が詰める部屋に向かった。


部屋に入り、連絡員Aの役を担当している諜報員と一緒に、書類と荷物を用意する。


未使用の紙束と、書類が二通。うち一通は納品書、もう一通は偽報告書の代わりに用意した書類だ。


「それでは行ってきます」


連絡員A役の諜報員が荷物を持ち部屋を出て行った。


「よし、これで準備は整いましたね。仕上げは夜です」


キースとアンリが馬車寄せの待合室に戻ると、側仕えが、キース用の認識プレートを持って待っていた。受け取って埋め込まれた魔石に魔力を流す。


キースがプレートを見つめながら息を吐くのを見て、アンリが尋ねる。

 

「キースさん、どうかされましたか?」


「いや・・・何とかお気に召していただけた様ですが、さすがに気疲れしました。お二人共迫力というか雰囲気というか・・・凄かったです」


(実態を知ったらもっと驚き疲れるでしょうね・・・)


「お立場的に厳しい面もおありですが、それだけではございません。人としての情にも篤い方達です」


「はい、それは感じられました。また機会があればお話してみたいです」


(ふむ、本人も希望しているのであれば、解決後にまた屋敷に来てもらうのも問題ありませんね)


「それはお二方も喜ばれるでしょう。ぜひそうしてあげてください。それでは戻りましょうか」


「アンリさん、帰る前にお昼ご飯でもいかがですか?ちょっと寄りたいお店がありまして・・・」


「構いませんよ。ご一緒しましょう。お店はどの辺にあるのですか?」


「ありがとうございます。問屋街の北入口の近くになります」


キースは、『コーンズフレーバー』に行って、魔術学院に通い始めたリリアの様子を聞いておきたかったのだ。


アンリは馬車を問屋街方面へ向け走りだした。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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