第71話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けています。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?
私はよくあります・・・
【前回まで】
これまでのやり取りを分析し、「ベルナル坊っちゃまはわざとおバカっぽいふりをしている」キースとフランはそう結論づけました。
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「なるほどな・・・そうなると、今度はなぜそこまでして道化を演じているのかだな」
「そこなんですよね・・・まだまだ情報が足りません。カーティスさんに、時間が取れたら宿に来てもらえるように話をしてあります。ここまでの話を彼に伝えて、色々引き出したいです」
「彼こそがベルナル坊ちゃまがここに来た理由、という事はないか?」
「うーん・・・坊ちゃまの発言に対する彼の反応を見ていると、彼は違うと思うんですよね」
「そうか・・・そうすると残るのは、副管理官のカデル、冒険者ギルド支部長のウラン、副隊長のタニスぐらいか」
「ですね・・・あ、あと一つ忘れていました」
「なんだ?」
「ベルナル坊ちゃま、魔力操作がとても上手なのと魔力の質からして、彼、魔術師ですね。後、アンリさんは徒手格闘の専門家っぽいです。圧を感じさせない様に抑えていますが、気が凄いです。彼の護衛でしょう」
良い笑顔であっさり言った。
「キース・・・」
「はい?」
「それを忘れるのはおかしいだろ!」
「す、すいません、ついうっかり・・・テヘヘ」
肩を竦めて右手を頭に乗せる。
「可愛いく笑ってもダメ!」
会議室から自分の執務室に戻ったベルナルは、勢いよくソファーに腰を落とし、背もたれに倒れ込むように寄りかかり、グッタリとした。
「坊っちゃま、お行儀が悪うございますよ?」
すかさずアンリの指摘が飛ぶ。
「僕とあなたしかいないのですから良いじゃないですか、アンリ。それに、ああいう喋り方は本当に疲れます。王都に戻った時にちゃんと喋れるか心配ですよ・・・」
ベルナルはそのままソファーにポスっと倒れこむ。
「それにしても危なかったですね・・・どうにもダメなら、僕とあなたで対応しなければならないところでしたよ」
「ここまで道化を演じてきたのに、本来の目的を果たす前にバラしてしまうのは、さすがにもったいのうございますね」
「でも、死者を出すわけにもいかない。可能であれば、衛兵の怪我人だって出したくない」
真剣な顔で断言する。
(本当に優しい方ですね、坊っちゃまは)
国内屈指の大貴族であるヴァンガーデレン侯爵家の、「あのエヴァンゼリン」の孫。
誰もが敬意を払う存在である。
だがそれは自分ではなく、家名(というか祖母)に向けられたものの余りでしかないことを、彼はちゃんと自覚している。
「アンリ、橋の上の魔物を魔法一発でまとめて倒したという少年、彼の持っている杖とローブを見たでしょう?何か気が付きませんでしたか?」
「・・・学院卒業時に与えられるもの、という事以外にですか?」
「そうです」
「はて・・・特には思い当たりませんでしたな」
アンリは顎を擦りながら思い返す。
「まぁ、1年で1人しかいませんし、じっくり見る機会も無いから気づきませんよね。彼は学院の首席卒業者です」
「なんと!?」
「杖の握りに当たる部分と、ローブの左胸、ここに学院の紋が入っていました。それが入るのは首席卒業者だけなんです」
「お待ちください。小柄で金髪、緑の瞳の首席卒業者・・・まさか、今年の学院の卒業式で、国務長官と近衛騎士団長から勧誘を受けたにも関わらず、どちらも断ったという、あの・・・」
「そうです、家にある影のウサギが走り回る魔法陣の作者で、まだ学生なのに『万人の才』と二つ名がついた、稀代の天才魔術師。そして・・・」
「あの白銀級冒険者アリステアの孫です」
「・・・これはとんだ大物でしたな」
「魔物暴走と彼の登場、これは事を一気に進める良い機会かもしれませんね・・・目星はついていますが、明確な証拠がない。彼らを味方に引き入れて何とかできないものか・・・」
ベルナルは腕を組んで宙を見据える。
「坊っちゃま、急いては事を仕損じると言います。彼らは今日初めて会った相手です。まだそこまで信頼に足る人物かどうか判りませぬ」
「あぁ、それはもちろん解っていますよ。明日国軍が着けばダンジョンの方は任せられると思いますから、本来の目的を中心にできるでしょう。わざわざここまで来たのです。絶対にやり遂げてみせます!」
ベルナルは左の掌に右拳を叩きつける。
「不肖、この私めもこれまで以上に努めさせていただきます」
アンリは最敬礼する。
「よろしく頼みますアンリ。とりあえず・・・お茶にしましょう」
食堂で夕食を終えた後、部屋で窓の外を眺めていると、カーティスが歩いてくるのが見えた。
(おっ、来ましたね・・・)
部屋を出てアリステアとフランを呼ぶ。
2人が部屋に来てすぐに、カーティスも部屋に入ってきた。
「カーティスさん、お忙しいところお呼び立てして申し訳ないです」
「いやいや大丈夫です。で、お話とは・・・?」
キースは、ベルナルについての考えをカーティスに伝える。
「まさか・・・そんな・・・」
カーティスは呆然としている。
毎日の様に彼に接し、そして言動に悩まされてきた人間としては、いきなり「あれは全て演技」と言われても、俄には信じられないだろう。
「いきなり信じるのは難しいかもしれませんが、まず間違い無いと思います。それに彼は魔術師です。後、アンリさんは徒手格闘の専門家です」
もうカーティスの顎が外れそうである。
(一気にいったな・・・大丈夫か?着いてこられるか?)
アリステアは、そんなカーティスを気の毒そうに見る。
(話し掛けて引っ張り戻そう)
「それでですね、彼がここに異動を希望した、何かしらの理由があると考えています。それを知る事ができたら、ここで起こっている何かの解決に協力できるのではないかなと」
「そうですな・・・」
うまくこちら側に戻ってこれた様だ。
「ここはダンジョンですから、やはり魔石関連でしょうか。魔石は高価です。横流しとかはどうでしょう?」
(まず考えるのはそこだよな)
「私達もその線が強いのではと思っています。でも、そもそも、魔石を扱っても不自然ではない方でないと関われませんよね?それはどなたでしょう?」
「それはやはり、副管理官とギルド支部長ですね」
冒険者が持ち帰ってきた魔石の買取はギルドの支部が、それを取りまとめて王都に送るのは、副管理官が責任者として行っている業務だという。
「しかし、横流しという事は、王都に送る分をちょろまかして懐に入れているという事です。魔石は冒険者から買い取ってお金を払っています。取引自体に関わっている人数と、帳尻を合わせなければならない数字が多過ぎる気もするのですよね・・・」
窓口で冒険者とやり取りを行う者、数と重さを数える者、買取金を用意する者、帳簿に記録する者、仕分けして所定の管理室に運ぶ者、王都へ運搬する者、これだけの人が関わり、全ての工程で記録が残っている。
これをどうやって潜り抜け、さらに記録を改竄して懐に入れるのか。
(どうしても無理がある気がするんだよな・・・他に何かあるのかな・・・)
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