第69話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けてみました。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?
私はよくあります・・・
【前回まで】
貴族の若い男「坊ちゃま」は、先々代の国務長官の孫という大物と判明。各部署の責任者が集まって、現状把握と今後の対応を話し合います。しかし、皆、坊ちゃまのペースに着いてくだけで精一杯です。
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「でさ、そのなんつうの?魔物暴走っていうの?それってさそんなにあるこっちゃねーんでしょ?なんで今日起こったかとかさ、心当たりある人いる?」
「一昨日まで2パーティがダンジョンの探索に入っていました。その時点で異常発生など変わった点があれば報告が入ると思いますが、特にありませんでした」
冒険者ギルド支部長が書類を見ながら答える。
クライブがスッと手を挙げる。
「おっ?なになに?何かあるの?」
「魔物と橋で対峙した時なのですが・・・」
「うんうん」
「やたらと後ろを気にしている様に感じました」
「・・・どゆこと?」
「こちらを倒すというより、ダンジョンから離れる事を優先していると感じました。自分達が逃げるのに邪魔だから目の前にいた我々を倒そうとしている、と言いましょうか」
「・・・カーティスさん?今の話どう思う?」
「衛兵達からはその様な意見は出てきませんでした。専門家ならではの視点、感覚なのかもしれませんが、戻ったら聴き取り調査を行います」
「よろしくね?でもそうすっとさ、ダンジョンにさ、魔物達も怯えて逃げ出す様な何かがいるって事なのかな?それってやばくね?」
「も、もうここを放棄して王都に戻った方が・・・」
得体の知れない何かがいるという話になり、副管理官が顔色を悪くしている。
「カデルちゃーん!何言っちゃってんの?このダンジョン1箇所で幾ら金入ってくるか知ってる?去年ここで6.5t産出してるんだよ?去年は1kg/40万リアルで流通させたんだから、26億リアルだよ?とりあえず脅威が無いのに放棄は無理っしょ?」
(ちゃんと去年の数字を把握しているんだ・・・これはやはり・・・)
フランは自分の勘でしか無かったものに裏付けを得た気がした。
「ダンジョンの入口は結界の魔法陣で塞いであります。私の魔力を上回らないと破壊できませんので、中から出てくるのはまず無理かと」
「おおっ!?すっごいねぇ?自信満々じゃん!でもそれ本当に大丈夫なの?皆に大丈夫って言っちゃうよ?いい?」
(キースの魔法陣を疑うのか!)
アリステアとクライブはカッとなったが二人の間に座ったフランに突かれ我に返る。
「ええ、安心して大丈夫です。皆さんにお伝えください」
「よっしゃ!じゃあ少年、俺の名前で大丈夫って言うから!いいんだよね?」
「はい、お願いします」
キースは笑顔で返事をする。
(自分で張った結界なのに、手柄を取られても良いというのか?)
カーティスは心の中で首を捻る。
「でさ、王都に国軍の応援出してくれって言ってるんだけど、こういうのって何時ぐらいに着くんだろうね?夜ぐらいには来るかな?」
「このダンジョンが発見された時の対応の記録によりますと、3の鐘頃に発見され、国軍が到着したのは翌朝の9の鐘だったそうです」
ギルドの支部長が資料を見ながら答える。
『かーっ!明日かよぉ!遅っせぇなぁ!緊急事態なんだからさぁ?もっと早く来いよなぁ!馬車でも鐘3つし掛かんねぇんだよ?とりあえず最低限の装備で先発隊を出してさぁ、こっちの安全確保に努めるべきっしょ?輜重隊は後からゆっくり来ればいいんだからさぁ?アンリどう思うよ?』
坊っちゃまが天を仰ぐ。
「はい、ぼっちゃm・・・ベルナル様、遅うございますね」
「だよなぁ?今度王都に帰ったら文句言ってやるわ!ざっけんなよなぁ」
(坊ちゃまはベルナルっていうんだ)
「とりあえずカーティスさんさぁ、明日の国軍が到着するまで、交替で入口見張ってもらえるかなぁ?」
「はい、承知しました」
「そういえばさぁ、さっきの戦いで怪我人とか大丈夫なの?また魔物が出た時にさ、痛くて戦えませんじゃ困るんだよねぇ?ポーションとか足りてる?在庫まだあるけど?」
「多少発生しましたが、衛兵達は皆神官殿に癒やしていただきましたので問題ありません」
カーティスがフランに目をやる。
「皆?皆って衛兵隊全員?全員癒やしちゃったの?すっごいねぇ!こんな綺麗なのに、あの人数みんな癒やしちゃう力があるの?か~!マジかよ!俺も癒やしてほしいわ!」
「もしご入用でしたらいつでも承りますわ。お声がけください」
ウフフと微笑む。社交辞令的な微笑みではない、素の笑顔だ。
アリステアとクライブが横目でフランを見る。
(こういうタイプはあまり好きじゃないと思っていたが・・・意外だ)
「よっしゃ!とりあえずさ、みんな今の状況は分かったっしょ?何か聞きたい事とかある?無い?じゃあさ、一旦これで解散しよっか。ちょっと一息入れたいし、後は各自担当の仕事やってちょうだい!アンリ、ウェイティス産の茶葉でお茶入れてよ。いつものより落ちるけど、まあまあ悪くないしさ」
「かしこまりました」
(あれで「悪くない」って、いつもどんなお茶飲んでるんだよ・・・)
ここに来る前に衝撃的な体験をした4人は、あれを「悪くない」と言い放つベルナルに対して、心の中で突っ込んだ。
「じゃ、カーティスさん、見張りの件よろしくね?夜中とか立ったまま寝ちゃダメだよ?油断したら死んじゃうよ?昼間戦った訳だし、一人一人短い時間で回すといいんじゃないかなぁ?ま、任せっけど」
「カデルちゃんもさ、明日の国軍の指揮官に渡す状況報告書の作成、よろしくね!ほら、俺字汚いじゃない?カデルちゃん綺麗だし!今度お礼するからさ!よろしく!じゃ、皆さんこれで終わりね!はい、かーいさーん!」
ベルナルはアンリを伴って部屋を出て行った。
扉が閉まり数えること10秒、皆が一斉に溜息を吐いた。
「何というか・・・中々個性的な方ですね・・・」
「はぁ・・・」
「あの方はいつもあの様な感じですか?」
「・・・そうだな」
「それは・・・お疲れ様です」
皆反応が鈍い。ぐったり気味だ。
「では私達も失礼します。ちょっとダンジョンの入口を確認して宿に行きたいと思います」
「皆さん、出席していただきありがとうございました」
「いえいえ、とんでもないです。カーティスさん、もし少しでも時間が取れたら、宿の私達の部屋へ来ていただけますか?」
後半は顔を寄せて囁く。カーティスは小さく頷いた。
管理事務所を出て橋を渡り、入口へ向かう。入口の脇には衛兵が3人配置していた。
入口と結界、魔法陣本体を確認するが、特に変わった様子は無い。
見張りの衛兵にそれを伝え安心させる。
(見つけた時はただの穴だったんだよな・・・)
アリステアは、拡張され石段で歩きやすくなっている入口を見ながら懐かしむ。
「では宿に行きましょうか」
「そうだな、さすがにちょっと疲れたな・・・主に心が」
「宿泊の手続きをして荷物を置いたら、隣の食堂に集合でお願いします」
「「「了解!」」」
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