第68話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けてみました。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?
私はよくあります・・・
【前回まで】
魔物を退け衛兵達に感謝されるキースを、我が事の様に喜ぶ大人3人組。まだ事後の片付け等が残る中、衛兵の隊長と一緒に非戦闘員に状況説明に行きましたが、何やら面倒な若い貴族がいて・・・
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降りてきたキースを3人が物言いたげな目で見る。
(まぁ気になるよねぇ・・・)
「今のやり取り聞こえてました?」
「あぁ・・・何だあれ?」
「20代前半ぐらいの若い貴族の男性なのですが、どうやら彼が国務省の管理官の様です」
「!?あれでか?面倒くさいな」
「やはりそう思いますよね・・・」
「馬車を宿屋の裏に回して、食堂か宿屋の待合を借りて待機させてもらうというのはどうかしら?今日の宿泊や食事でお金も払うし、渋られても何とかなるかなと思うのだけど」
「そうですね・・・部外者ですし、積極的には関わらない方向でいきたいと思います」
「「「賛成!」」」
宿屋の裏に馬車を回し正面に回ると、ちょうど食堂に人が入っていくのが見えた。従業員の様だ。
入口から中に声を掛ける
「こんにちは~。お忙しいところすいません」
「はーい」
出てきたのは40手前ぐらいの女性だ。
「ごめんなさいね、今避難から戻ったところなので、お食事はお昼の残りぐらいしか出せないのですけど・・・って、さっき窓の外にいた子よね?」
「あ、はい、そうです」
「じゃあ、皆さんが、衛兵さん達の応援に来てくれた冒険者の方達?あなた達が来てくれたから助かったって隊長さんが言ってたわ!どうもありがとうございました!」
「僕達も間に合って嬉しいです。皆さんに怪我も無かった様ですし。それでですね・・・」
キースは事情を説明する。
「あぁ、そういう事でしたか・・・確かにあの方は・・・ね。ここで良ければどうぞ使ってください」
「ありがとうございます。お邪魔します」
「しかし、この様に何があるか分からないのに、管理官があの様な男で良いのですかな?」
「うーん、いかにも貴族のボンボンという感じだったな・・・フランはどう思う?」
「私はちょっとまだ何とも言えませんね・・・もう少し判断材料がほしいところです」
フランは、隣の席に座るキースを見る。腕を組んで目を閉じている。何か考えている様だ。
厨房へ続く扉が開き、中から10歳ほどの少年が出てきた。手にはカップとお茶のポットが乗ったトレーを持っている。
「いらっしゃいませ!冷たいお茶はいかがですか?」
「おおっ、ありがとう!いただきます」
「魔物を倒してくれたのは、皆さんなの?」
「私達は手伝っただけだよ。頑張ったのは衛兵さん達だね」
所詮キース達は外から来た人間だ。ここは衛兵達を推しておいた方が良いだろう。
「そうなんだ!あの人たち体も大きくて力も強いし、やっぱりかっこいいな!僕も大きくなったらなれるかな?」
「そうだな、ご飯をしっかり食べて、たくさん体を動かして、しっかり休む、それが大事だ」
フランがクライブの脇腹をつつく。
「ま、まあ一般論としてだな。特性もあるし、その辺は人それぞれだ、ハ、ハハハ」
「ボクモガンバリマス」
キースが遠くを見る。
「・・・せっかくだから冷たいうちにいただこう!」
「そ、そうね。では注ぎますね」
気温が上がってきた中、冷たいミント系のお茶はスッキリさっぱりして美味しかった。
お茶のポットが空になる頃、若い衛兵が入口から顔をのぞかせた。
「ああ、皆さん。やっと見つけました。隊長が管理事務所までお越し願いたいということなのですが・・・」
「分かりました。すぐに行きます」
トレーに空になったポットとカップ、お茶の代金を載せ、器を下げに来た少年に渡す。
「どうもご馳走様でした。また来ますとお母さんに伝えてください」
「はい、ありがとうございました!またどうぞ!」
4人は元気の良い声に送られ食堂を出た。
管理事務所に入ると、副隊長のタニスが待っていた。
「皆さんご足労ありがとうございます。ご案内します」
タニスが先頭に立ち歩きだそうとするが、その背中にキースが声を掛ける。
「タニスさん、ちょっと待っていただけますか?お尋ねしたい事が幾つありまして」
「はい、私で分かる事であれば・・・何でしょう?」
「あの、坊ちゃまと呼ばれていた方についてなのですが。あの方が国務省の管理官なのですか?」
「・・・はい、そうです」
(やはりそうか・・・)
この時点で上に上がりたく無くなる。
「こちらに就任されてどれぐらいになるのですか?」
「半年程になりますね」
「ご家名はどちらの・・・?」
「・・・・ヴァンガーデレン侯爵家でいらっしゃいます」
皆が驚きで眼を見張る。
「ヴァンガーデレン侯爵家というと、あの・・・」
「そうです。『あの』ヴァンガーデレン侯爵家です。彼は、エヴァンゼリン・ウル・ヴァンガーデレンの娘の子供、孫になります」
エヴァンゼリン・ウル・ヴァンガーデレン元国務長官。
国王アルトゥールの懐刀で、他派閥からは「魔女」とまで呼ばれた女侯爵だ。
「なんとまぁ・・・とんだ大物の名前が出てきたな」
(あの国務長官の孫とは・・・)
「なぜその様な大家の方がわざわざダンジョンの管理官に・・・?」
「その辺りは分かりません。ですが、ご自身でここへの異動を希望したという噂もあります。あくまでも噂ですが・・・」
(ヴァンガーデレン家の者なら、いくらでも実入りの良いポストに就けるだろうに、自分から進んでダンジョンの管理官に?)
「そうですか・・・ありがとうございました」
「いいえ、これぐらいであればいくらでも。でも、私が喋ったのは内密にお願いします」
「もちろんです」
「あの方はまだご存命だよな?」
「はい、引退して既に家長でもありませんが、あれだけの実績を残された方ですからね。もし亡くなったら間違いなく国葬でしょう」
「だよな・・・」
国王アルトゥールと彼女は、王国の改革を推し進め、役人の不正を正し、金を掛ける・絞るを的確に判断し、国を富ませる事に成功した。
彼女自身は、身内を贔屓するなどの私情を一切排し、国と国王にとって有益か無益かだけを判断基準に仕事をおこなった。
(その彼女の孫があれか・・・同じ人間では無いと言われればそれまでだが・・・)
「失礼致します。冒険者の皆さんをお連れしました」
タニスがノックをし扉を開ける。先程避難していた部屋だ。
室内には坊ちゃま、その席の後ろにアンリ、副管理官、冒険者ギルドの支部長、衛兵隊長であるカーティス、といった各部署の責任者達がいた。
キースはローブのポケットに手を入れ、静かに魔力を流した。
「皆さん、ご足労いただき申し訳ない。専門家としての意見を聞かせてほしいのです。どうぞそちらに掛けてください」
「ちょっとカーティスさーん?何であなたが仕切ってるのよ?俺が責任者なんだからさ、俺が言葉を掛けるのが筋でしょ?何かあったら怒られるのは俺なんだからさぁ」
「・・・失礼しました」
カーティスはぷるぷるしている。
(着任して半年か・・・万事がこの調子だとキツいな・・・)
「あんた達強いねぇ!助けてくれてありがとな!それにしてもさ!女性達、タイプは全然違うけど二人共めちゃくちゃ美人さんだよねぇ!こんな綺麗なのにえらい強いんでしょ?それに少年!とんでも無い魔術師らしいじゃん?小さいのにすっげぇなぁ!大きい人もまとめて何匹も叩き潰してたんだって?やっぱデカいのは正義だよ!」
何に納得したのかは不明だが、一人で頷いている。
皆面食らって言葉もない。
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