第67話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けてみました。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?
私はよくあります・・・
【前回まで】
際限なく押し寄せる魔物の群れ。それを衛兵達が何とか押し留めていたところに駆け付けたアリステア一行。皆の活躍により、無事溢れていた魔物を討伐する事ができ、ダンジョンの入口を閉鎖する事ができました。
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橋を渡って戻ってくるキースを見ながらアリステア達は感激し肩を震わせていた。
(あぁ、世界中にうちのキースはこんなに可愛いのに凄いだろう!って叫びたい!孫自慢したい!)
空中に浮かんだまま、全長20mの橋の上にひしめく魔物を魔法一発で全て倒す、まるで吟遊詩人の歌に出てくる魔術師だ。
そんな事を思っている3人の脇を、衛兵達がキースに向けて走っていった。
あっという間にキースの周りを取り囲み、口々に声を掛ける。
「少年!ありがとう!助かったよ!」
「あぁ、もうだめかと思ったぜ!」
「それにしても凄い魔法だったな!」
「ほんと!あんなの見た事無いぞ!しかも宙に浮きながらだぞ!?魔法の同時発動なんてできるんだな!」
皆に褒められキースは照れくさそうだ。
(素直ですぐ照れるキース最高!可愛い!)
そんなキースを見ながら満面の笑みを浮かべる3人に、衛兵が近寄ってきた。他の衛兵より少し歳上の様だ。
「皆さん、私はここの衛兵隊長を務めるカーティスと副隊長のタニスといいます。この度は助力いただきありがとうございました。あと少し皆さんが遅かったら守り切れなかったでしょう」
「いやいや、皆さんこそこの度は大変でした。急いだ甲斐があったというものです」
「時に、ここへは馬車で?」
「ええ、街道の詰所で応援の要請を受けまして」
「・・・?既に向かっている途中とかでは無く、詰所で話を聞いてからこちらへ来たのですか?」
「あぁ、それにしては到着が早くないかという事ですね?まぁ、馬車が壊れるんじゃないか、というぐらい飛ばしましたので何とか・・・」
「あぁ、そうでしたか・・それは重ね重ねありがとうございます」
あまり詳しい話はしたくない。
「それにしても・・・」
フランが話題を変える様に切り出す。
「これまで魔物が溢れそうな兆候などはあったのでしょうか?」
「いや、そんな気配は全く無くてですな・・・一昨日まで2つのパーティがダンジョンに入っていましたから、上層の魔物が大量に発生していれば察知できたと思うのです。なぜ急にこんな事に・・・」
カーティスも眉間にしわを寄せている。
「立ち話もなんですし、まだ片付けもしなければなりません。非戦闘員が国務省の管理事務所の2階に避難しています。私も今からそちらに状況説明に行きますので、よろしければ皆さんもそちらで一息入れて下さい」
そう言うと、カーティスは衛兵達に指示を出す。
「おい、片付けがまだ終わってないぞ!お礼を言い終わったら一旦解散しろ!タニス、片付けの監督を頼む」
「承知しました」
魔物の身体は、生命活動が止まればそのまま消えてゆくが、魔石や持っていた武器、防具(ダンジョン内で拾ったものだ。それぐらいの知能はある)は、そのまま残る。
魔石は大事だが、装備品は状態も良くない物が殆どなので、そのままゴミになる。
一行が管理事務所の前に着くと、カーティスが下から2階の窓に向かって声を掛ける。
しかし、窓が閉まりカーテンも閉めているせいか、室内には聞こえない様で反応が無い。
何度か声を掛けてみるがダメである。
「困りましたな・・・」
「では、僕がちょっと行ってみます」
キースは< 浮 遊 >の魔法を発動させ、音も無く上昇してゆく。
窓は2箇所あるが、どちらも鍵が掛かりカーテンが閉まっている為、室内は見えない。
(とりあえず鍵を開けないとな・・・)
< 浮 遊 >の魔法を維持したまま< 開 錠 >の魔法で鍵を開ける。
引き戸になっている窓とカーテンを開け、中に声を掛ける。
「皆さん、魔物は討伐されました!ダンジョンの入口も塞ぎましたので、もう外に出ても大丈夫ですよ!」
部屋の中には、年配者から子供まで、30人程が身を寄せ合っていた。皆外に浮かぶキースを見て唖然としている。
(知らない子供が窓の外で浮かびながら「大丈夫ですよ」って言っても説得力無いよな・・・)
「あ~少々お待ちを・・・」
一旦下に戻る。
「カーティスさん、ちょっと一緒に来てもらっていいですか?僕では色々足りないみたいで・・・」
「それは問題無いありませんが・・・」
(まさか・・・)
「では、ちょっと失礼します。身体は動かさないでくださいね」
キースは後ろへ回り、脇の下に手を入れるとそのままカーティスと一緒に上昇してゆく。
(や、やっぱり!)
「カーティスさん、窓から中に入って皆さんに説明をお願いします」
「あ、あぁ、承知しました」
カーティスは窓枠に手と足をかけ室内に入り、魔物は全て討伐され外はもう安全である事を告げ、バリケードを片付ける様促した。
避難していた人々から歓声が上がり、皆室外へと移動を始める。
キースも下に戻ろうとした時、男の声が部屋に響く。
「おいおいおい、本当に大丈夫なの?それ誰が保証してくれんの?だって原因解ってないんでしょ?俺達が怪我したらどうしてくれんのよ?」
貴族の格好をした20代前半程に見える若い男だ。カーティスの顔が露骨に歪む。
「坊ちゃま!おやめ下さい。原因など、そんなにすぐには解るものではありませぬ!」
「アンリィ!俺の事を外で坊ちゃまと呼ぶなっていつも言ってんだろ!」
坊ちゃま(氏名不明)は、アンリと呼ばれた男に指を突きつける。
(外じゃなければ呼んで良いのか・・・?)
「外に出た魔物は一匹残らず倒され、ダンジョンの入口は結界の魔法陣で塞がれています。魔物が溢れた原因は不明ですが、脅威と呼べるものはありません」
「何で原因が解らないのに脅威が無いって言えるんだよ隊長さんよぉ?」
(うわぁ・・・面倒くさい)
「先程までの様な、目に見える脅威は無いという事です」
「初めからちゃんとそう言ってくれよなぁ?報告は正確にしないとみんな誤解しちゃうだろ?デマが広まっちまったら皆安心できねぇじゃん?」
キースはカーティスを残して静かに地面に降りた。見捨てたとも言える。
戻ったキースを3人が物言いたげな目で見つめる。
(まぁ気になるよねぇ・・・)
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