第66話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けてみました。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?
私はよくあります・・・
【前回まで】
食堂向いの詰所の隊長から、北国境のダンジョンから魔物が溢れ、その援軍として参戦してほしいという依頼を受けたアリステア一行。魔法陣による馬車の軽量化や馬に身体強化のバフを掛けたりと、色々手を加えて可能な限り急いで向います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
詰所からダンジョンまでは、馬車でも鐘1つ分と元々そう遠くないが、色々増強した結果、馬車は鐘半分にも満たない時間で駆け抜けた。
間もなく到着するというその時、意外な事実が判明した。
「そういえば・・・ここに来るの見つけた時以来だな」
アリステアがぼそっと言う。
「!?それ以降一度も・・・?」
さすがのフランもまさかの発言に目をパチクリさせる。
「ああ・・・ちょっと機会が無くてな」
アリステアはきまり悪げに頭を掻く。なんと46年振りだ。
あの頃は、森の奥に古代王国の遺跡があって、そのすぐ裏側が川だった。
(色々建物が建っているというが、どんな様子なんだろうか。こんな時だがちょっと楽しみだな)
「建物が見えてきました。もう間もなく到着です」
キースが御者台に通じている小扉から、馬車の中に入ってきた。
「キースは初めてですから、建物の位置関係を説明しますね」
「はい、ありがとうございます」
フランが説明する。
・全体の一番北側、川の中洲にダンジョンの入口。そこに渡る為の橋が架かっている。
・その橋の渡り口の右側に国務省の事務所と職員の集合住宅、左側に国軍の兵舎。
その正面が広場の様に広くなっており、広場を挟んだ反対側に宿屋、食堂、冒険者ギルドの支部、武具関係の店、消耗品等を売る雑貨屋が並んでいる。
「となっています。橋で魔物を食い止めている、と言っていましたから、広場をそのまま馬車で突っ切って邪魔にならない所に止めましょう」
国務省の職員の集合住宅の前に馬車を止め、走って橋へ向かう。
近づくにつれて、怒号、叫び声、金属のぶつかり合う音など、戦いの喧騒が聞こえてくる。
「こっち誰か一人入ってくれ!」
「おい、スティーブ!怪我してんだから後ろへ回れ!誰か一番前替ってやってくれ!」
「くそ!応援はまだ来ねぇのか!?いつまで戦ってりゃいいんだ!」
橋の手前側すぐの所で、衛兵20人程が押し寄せるゴブリンやコボルトの群れを食い止めている。
これらは上層の魔物であり、一匹一匹はそれ程強くは無いがとにかく数が多い。それに被害を気にせず押し寄せてくる。
終りが見えない戦いは、肉体的にはもちろんだが、それ以上に精神的にしんどい。
橋の幅は6~7m程だ。それを考えると、後数人戦えなくなったら穴が空き、そこから一気に魔物がなだれ込んでくるだろう。そうなったらもう手が付けられない。
「アーティ!僕が上から魔法を使いますので、クライブと一緒に衛兵の応援を!フランは怪我人に癒しをお願いします!」
(上から?上からってなんだ?)
「< 浮 遊 >!」
アリステアが問いただす前に、キースは走りながらにも関わらず魔法を発動させ、空中に浮かび上がる。
!?
「待たせたな!応援だ!街道の詰所からも増援がくる!もう少しだけ持ちこたえろ!魔術師もいるぞ!」
キースの浮かび上がる姿に驚きながらも、クライブが今にも崩れそうな衛兵達へ向けて声を掛ける。
応援が来るという話と、見るからに歴戦の猛者であるクライブの姿を見て、衛兵達が喜びの声を上げる。
クライブ自身も、巨大なメイスを振り下ろしまとめて数匹を叩き潰し、当たるを幸い薙ぎ払う。
「クライブ!背中を貸せ!」
アリステアが双剣を抜き放ち、クライブの背後から走ってくる。
クライブが少し膝を曲げ背を丸める。
腰の辺りに片足をかけ宙に飛び、上からクライブが開けたスペースに飛び込んだ。
周りは全て魔物だ。
目にも留まらぬ速さで双剣を繰り出し、魔物達を切り崩す。2人の余りの勢いに魔物達が怯む。
あっという間に多くの魔物を倒した2人の姿に、衛兵達の士気は大いに上がった。
だが、2人は深追いせずに衛兵達の隊列に戻った。
キースの魔法が発動する以上、あまり突っ込んでもその邪魔になってしまう。個人の力で倒しきるのが目的ではない。魔法発動まで防衛ラインを保たせられれば良いのだ。
(・・・?何か・・・動きが妙だな・・・)
魔物を抑えながら、クライブは違和感を覚え首を捻る。
(まぁ、その辺は後回しだ)
「海の神ウェイブルトよ!民を守る勇気ある彼らに、あなたの癒やしをお与えください!」
フランが聖印を握りながら神に奇跡を祈る。
「< 回 復 >!!」
衛兵達の身体が黄色い暖かな光で包まれ、みるみるうちに傷が癒える。衛兵達から驚きの声が上がった。
大抵の<回 復>は一度に一人、しかも相手に触れながら掛けるものだ。だが、フランはその場の全員に対し誰にも触れずに癒した。尋常では無い。
(橋を確保して中洲から橋に入れない様にしないと・・・よし)
「アーティ!いきます!一瞬だけ押し戻してすぐ橋から下がってください!」
「分かった!みんな、私の合図で一瞬だけ押せ!押したらすぐ橋から下がる!上から魔法が飛ぶから遅れるなよ!いくぞ!せーの、押せーーー!!!!」
「おおおおおおおおっ!!」
アリステアとクライブ、衛兵達は力を振り絞り、盾と武器を掲げて魔物の群れを押し返す。
一番前の魔物がバランスを崩し、後ろから進もうとしている魔物にぶつかり転ぶ。転倒した魔物が邪魔になり、全体の勢いが緩るんだ。
その隙に衛兵達は橋から下がる。
その動きを見て、キースは上に掲げていた両手を振り下ろし魔法を発動させる。
「< 氷 の 嵐 >!!!」
橋の中ほどで涷気の塊が具現化した。
その塊は球状に拡がり一瞬で橋全体を包みこむ。それを見ている皆の視界を蒼白く染める。
魔物達は、急に冷たくなった空気と薄青くなった視界に戸惑い、周囲を見渡していた。
次の瞬間、氷混じりの凍てつく暴風が吹き荒れ、魔物達に襲いかかった。氷の刃が魔物に刺さり切り刻んでゆく。
橋の上の魔物達は一瞬で息絶え、橋は制圧された。
(威力、範囲の広さとその制御、発動までの速さ、複数魔法の同時発動、どれをとっても凄まじすぎる・・・)
アリステアはそのあまりの光景に身震いした。
衛兵達は「魔法が飛ぶ。橋から下がれ」という指示に合わせて動くのが精一杯で、何が起こったのかまでは分かっていなかった。
振り向いたら先程まで自分達が戦っていた橋が蒼く染まっており、散々苦しめられた魔物が皆死んでいた。
その様子を見て唖然としている。
ダンジョン入口付近にいる魔物達は、橋の上で起こった惨状を目にした事により、恐慌状態に陥っている。
(よし、このまま入口を押さえよう)
キースはそのまま橋の反対側へ移動すると、空中からダンジョンの入口を中心に再度< 氷 の 嵐 >の魔法を発動させ、残った魔物を打ち倒す。
入口周辺から魔物がいなくなった事を確認し地上に降りると、鞄から結界の魔法陣を取り出す。
それをダンジョンの入口前の地面に置き、起動させようとした時
(!?)
ダンジョンの奥から何かの気配を感じた。
(なんだ・・・?いや、今はいい)
改めて魔法陣を起動し入口を塞いだ。
(ふぅ・・・とりあえず何とかなったかな・・・)
倒した魔物は塵となって消えつつある。そして、その消えた後には魔石が残る。
ゴブリンやコボルトの魔石は小さいが、今回は数が多い。200個はあるだろう。きちんと回収すれば結構な収入になる。
キースは橋を渡り、歓声を上げる衛兵達と仲間の下へ戻リ始めた。
ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!
お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)




