第65話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
前回のまとめ的なものを付けてみました。
「あれ?前回どんなところで終わってたっけ?」という事ありませんか?私はよくあります・・・
【前回まで】
ようやく王都を出発し「北国境のダンジョン」に向かっているアリステア一行。街道の途中にあった食堂で休憩した所、とんでもなく美味しいお茶とケーキを出すお店でした。「こんな場所になぜこんな店が?」店主に尋ねようとしたところ、外から大きな声と物音が・・・
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何やら大きな人の声と馬のいななき、物音が聞こえ始め、外が騒がしくなる。
「何でしょうね?詰所の方で何かあったのでしょうか」
「ちょっと見てみるか」
皆で席を立ち外へ出る。
向かいにある詰所に衛兵が頻繁に出入りし、馬を引いたり装備品を整えたりと、忙しく動いている。明らかに出発の準備だ。
「熊でも出たのかしら?」
魔物はダンジョン内で発生し生息しており、基本屋外には出てこない。その辺りの詳細は不明だが、空気中に含まれる「魔素の濃度」が原因ではないかと言われている。
その為、屋外で脅威となるのは熊等の大型の獣や、集団生活をする狼等だ。余程の大物や大集団でない限り衛兵で対応可能のはずだ。
「まぁ・・・大丈夫・・・でしょうかね?」
「そうだな。中に戻るか」
アリステア達が食堂に戻ろうとしたその時、詰所の方から中年の衛兵が一人近づいてきた。何やら厳しい表情をしている。
「突然申し訳ない。私はこの詰所の警備隊の責任者でギャビンという。あなた方は冒険者だろうか?」
「はい、そうですが・・・」
「もしお手空きならご助力願いたい事があるのだが、いかがだろうか?」
「特に急ぎの用事はありませんが、どうされました?」
と言いつつもだいたい察しは付く。
(冬眠明けの子連れ熊とかかな?気性が荒い時期だというけど・・・)
こちらが手空きと知ったからか、厳しい顔をしていたギャビンと名乗った責任者は、少し表情を緩ませた。衛兵より特性、装備、戦闘経験で勝る冒険者は貴重な戦力だ。1人でも多く欲しいだろう。
「北国境のダンジョンで魔物が外に溢れたという連絡があったのだ。我々と一緒に討伐の応援に向かってほしい」
!?
(魔物暴走!?熊どころの騒ぎじゃ無かった・・・)
そういう現象があるという事は聞いた事があるが、頻度としては数十年に一度あるかないかと言われている。アリステア達も遭遇した事は無い。
そもそも、この国のダンジョンは常に冒険者が探索に入り、魔石の回収と魔物の討伐を行っている。魔物が溢れる程増えたりはしないはずだ。
「あれは、余程ダンジョン内の魔物の密度が高くならないと発生しないというが・・・」
アリステアも腕を組んで首をひねる。
「その辺は現時点では不明だが、事実外に出てきてしまっているのだ」
「国軍も常駐していましたよね?それでも対応しきれない程多いのですか?」
「それなのだが・・・常駐していた国軍は、10年程前に半分程に削減されていてな。人手が足らんのだ」
警備隊長は苦い顔で言う。
「国境とダンジョンの警戒の兵を減らす?なぜそんな事を?」
「ダンジョン発見からもうすぐ50年が経つが、ダンジョン内の状態も安定しており、ターブルロンドとの関係も良い。多数の兵を置いておく理由がない、という事らしい。・・・私が言ったというのは内緒で頼む」
「ダンジョンの事なんて、ほとんど何も解っていないというのに軽率過ぎる!ただの鉱山じゃないんだぞ!」
アリステアが憤慨する。
「危機感に欠けていますな。こういう所にはしっかり金を掛けてほしいものです」
クライブも同意する。
「二人共、国に対して色々あるかとは思いますが、それは後にしましょう。ダンジョン周辺には非戦闘員もいるのですよね?」
「ああ、国務省の担当官やその家族、国軍の兵舎の職員、周辺の店鋪の従業員等がいる。あのダンジョンの入口は川の中洲にあるから、架かっている。橋はそれほど広くないから何とか抑えてはいる様だが、何時まで持つかわからん」
「分かりました。それではすぐに準備して出発しましょう」
「おおっ!ありがとう!よろしくお願いする。報酬等は片付いてからになってしまうと思うが、きちんと手配するので心配しないでほしい」
「分かりました。それでは準備を始めます」
食堂に戻り店主に声を掛ける。
「ご主人、どうもご馳走様でした。北国境のダンジョンで魔物が外に溢れたらしいです。ここまでは来ないとは思いますが、ご注意ください」
「おお、それは・・・分かりました。皆さんもお気を付けて」
店主も眉をひそめる。
「はい、ありがとうございます!」
荷物を持って馬車へ戻り積み込む。
キースは荷台の方へ回ると、鞄の中から魔法陣の書かれた紙を2枚取り出した。
荷台と箱部分に貼り付けて起動させる。魔法陣は青く光った。
「キース、それは何の魔法陣なの?」
「これは、『軽量化の魔法陣』です。馬車全体を軽くすれば、馬の負担が減りますから。後、フラン、馬に<身 体 強 化>の加護を与えてください。走力と持久力が上がります」
「わかったわ」
フランが前へ回って神聖魔法を唱える。
「では皆さん、準備は完了ですね?」
「ああ、大丈夫だ!」
「それでは行きましょう!僕は御者台に乗ります。馬の前に空気の壁を作って、空気抵抗を減らします!」
馬の前に空気の壁を斜めに2枚作り、三角にする事で空気を左右に流し空気抵抗を軽減、さらに馬の負担を減らす様だ。
(よくまぁそこまで色々思いつくな・・・)
「ギャビン隊長、それではお先に失礼します」
「よ、よろしく頼む」
準備を見ていたギャビン隊長は、呆気にとられつつも何とか返事を返した。
クライブが馬に合図を出すと馬車が走り出す。合図も何もしていないのに、どんどん速度が上がってゆく。まさに飛んでいるかの様だ。
整備された街道だから良いが、それ以外の場所ではとてもまともに走れないだろう。
(先程、馬車は速く走る為のものではない、と言ったばかりなのだが・・・)
必死に手綱を操りながらも、クライブはフっと笑った。
(彼らは・・・一体何なんだ・・・)
自分で頼んでおいて隊長は首を捻る。
「隊長!準備完了です!」
「お、おう、今行く!」
衝撃覚めやらぬギャビン隊長は、アリステア達を見送った後もしばらくその場に佇んでいたが、呼びに来た部下の声に応え詰所へ向かって歩き出した。
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