第61話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします。
(さて、どうしましょうか・・・)
2人で連れ立って歩きながら考える。
(よし、試しに・・・)
建物の角を曲がった瞬間、< 隠 蔽 >の魔法を掛け、リリアの手を取り積んであった木箱の裏にしゃがみ込む。
驚くリリアに向け、口の前で指を立て喋らないように示す。
しばらくすると足音と話し声が近づいてきた。
(あれ?この声ってもしかして・・・)
リリアがある人達の姿を思い浮かべていると、まさにその通りの人物が現れた。
「!?いないぞ!確かにここを曲がったはずなのに!バレていたということか?」
「100m以上離して歩いていたのに・・・< 探 査 >だと思いますが感知範囲が広過ぎますね。王都の人混みではこれ以上離れると姿が見えませんし」
「気配も感じられません。となると< 隠 蔽 >の魔法でしょう。これはもう無理ですな・・・」
「何言ってるんだクライブ!諦めたらそこで勝負終了だぞ!」
クライブは(勝負って何の勝負だ?)と思いながらやんわりと反論する。
「アーティ、18歳の男なのですから、女の子と出掛けている時ぐらいそっとしておいてあげれば良いのでは?」
「何を言っているのだ!!キースにはまだそういうのは早い!」
「その通りです!」
2:1ではどうしても分が悪い。しかも相手は殺気立っている。
「まだそう遠くには行っていないはずだ!分かれて辺りを探してみよう!」
「承知しました!」
アリステアとフランは二手に分かれ動き出す。
(はぁ・・・やれやれ)
クライブは妻の後をついてその場を離れていった。
そのまま5分程隠れた後、そっと立ち上がり辺りを見回す。
「もう大丈夫かな・・・?」
「付いてきていたんだ・・・全然分からなかった・・・」
「100mぐらいは離れていましたね。この人出の中、それだけ離れていても見失わずに付いてくる技術はさすがです」
しかし、キースの< 探 査 >の魔法の範囲はもっと広い。追ってくるのはいつも近くで感じている魔力だ、個人の特定も簡単である。
「一応、< 認 識 阻 害 >の魔法も掛けておきます。アーティさん相手だと微妙ですが、無いよりはマシでしょう」
いくらアリステアでも、どこにいるか解らない状態では見つける事はできないだろう。
「皆さん、ちょっと過保護なんですよね・・・僕の事を、ギルドマスターとおばあ様から任されているという意識が強いからだと思うのですが」
「そ、そうなんだ・・・」
(それ絶対違う理由だと思うけど・・・)
「とりあえず危機は脱しました。歩きもしましたし、お茶とおやつで休憩にしませんか?近くに学院に通っていた頃の行きつけのお店があるんです」
「うん!行ってみたい!」
「リリアが気に入って通ってくれたら嬉しいです」
2人は店を目指して歩き出したが、そこでリリアは気が付いた。
(て、てて、てって、手つないだままだ!)
先程、物陰に隠れる際に手を引かれて以降、ずっと手をつないだままだったのである。
真っ赤になって慌ててキースを見ると、キースの顔も赤い。
キースだって18歳の男である。当然女の子に興味はある。
それに、リリアの今日の装い、学院に向かうまでの口ぶりや態度を見れば、自分に好意を持ってくれていて、別れ難く思ってくれているという事ぐらいは分かる。
ただ、自分がリリアの事をどう思っているのかは、正直よくわからない。
もちろん「好き」なのだが、それは異性として特別な思いなのかと聞かれると微妙だ。
だが、キースは、今まで特定の女性と親密な関係になった事は無いが、ここは男としてエスコートするべき場面だと判断した。
学院生だった頃、キースに対して周囲から寄せられる言葉、評価は「可愛い」と「凄い」だった。
魔力量、発動までの速さ、既存の魔法陣を改造し、オリジナルを作れるだけの知識量、その全てにずば抜けており、国務長官や近衛騎士団長から直接スカウトを受ける逸材。
それでありながら、小柄で華奢な身体つき、くりくりぱっちりお目々でサラサラ金髪、さらに性格も良いというギャップ。
勿論「もっと仲良くなりたい」と思う女子学生はいただろう。しかし、ここまで注目度が高いと正直近寄り難かたい。特にそういった事を言ってくる女子学生はいなかった。
実は、女子学生達の中で「あの子は皆で愛でるものである。抜け駆け禁止」という取り決めが徹底されていたのだが。
2人は手を繋ぎ少し俯きながら歩く。動きも硬いが喋りも硬い。
意識し過ぎてしまって、店の前を通り過ぎてしまったぐらいだ。
店に入り、お茶とデザートを頼んだが、緊張からか2人とも妙に饒舌になってしまい話も噛み合っていない。
結局、お茶もデザートの味もよく分からない。
(せっかくなのにこれは・・ちょっともったいないな)
キースは正直に言うことにした。
「リリア、ちょっとこれは・・・お互いに不自然過ぎますね」
「そ、そうだね・・・」
「僕は女性とこうやって2人で出掛けるというのは全く初めてなので、勝手が分かりません。それに、今の段階でリリアに対して特別な気持ちがあるかと尋ねられると、正直よく分からないとしか言えないのです」
「うん、うん・・・」
「もちろん一緒にいたくない、という事ではありませんよ?それは解っていただけると思いますが・・・」
「ですので、今日のところは、仲の良い友人という意識でこの後を過ごす様にしてみませんか?その方がお互い気持ち的にも楽しいと思うのです」
「私もそういうのはまだよく分からないし・・・分かった!変に意識し過ぎない様にするよ!」
リリアは笑顔で頷いた。
(とりあえず嫌がられていないならそれで十分かな)
店を出た後、これもキース行きつけの魔導具や魔導書、研究書の写本を扱っている店を覗く。年配の店主はもちろんキースの事を覚えており、無事冒険者になれた事を喜んでくれた。
その後は、リリアが行きたいと思っていた、溶いた小麦粉を焼いた、丸いふわふわとしたパンの様なケーキを出すお店でランチにした。果物との相性の良さと、その不思議な食感に驚く。
(これは女性は好きそうだな・・・アーティやフランにも教えてあげよう)
その後は、衣料品店や雑貨屋を覗き、王都の中に多数設置されている公園で休憩する事にした。
こういった公園には、飲み物や軽食の屋台が出ている事が多く、この公園にも利用者目当ての店が出ている。飲み物とお菓子を購入し、近くの東屋に入る。
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