表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/341

第55話

【更新について】


「地上げ問題」解決までの分を一括更新致します。


12時で6話、16時で6話となります。なんでこんなに長くなった・・・


よろしくお願いします。

「いやー、それにしても、ああもあっさりまとめちまうとは!さすがアニスさんっすね

!」


「あそこは創業者の婆さんが肝だからね。あとはせいぜいその娘。旦那は婿だし。そこにうまく食い込めばこの通り!」


アリステアとクライヴは目を合わせ、静かになった隣をチラリと見る。


(こちらの会話を意識しているな、よしよし)


「ですが、あの『コーンズフレーバー』を買収できるとは!南方系料理じゃ王都で一番の店ですものね!これはオーナーも喜びますよ!ボーナスも出ちゃいますね!」


「まあそれ位は貰ってもいいんじゃない?まぁ、あたしにとっちゃそれほど難しい相手じゃなかったけど!」


「やっぱうちのエースは違うな!さすがアニスさん!」


「いやいや、クライスも手伝ってくれたからね!いい働きだったよ。これからもよろしく!」


「いえいえ、アニスさんあってこその俺ですから!」


「また、うまいこと言って!今日はあたしのおごりだよ!たくさん飲んじゃおう!」


「はい!ありがとうございます!いただきます!」


(違和感無いなぁ・・・って言ったら怒られそう。さて、隣はどうかな・・・)


隣のテーブルのファクトは無表情だった。


だが、何かを抑え込むかのように歯を食いしばり、鼻からの呼吸を繰り返している


(『コーンズフレーバー』を買収?この隣の2人組みが?本当か?俺たちが手をかけても買い取れなかったあの店を?)


(ファクトの様子がやばい。こいつはあの店にはこだわりがあるからな・・・探りを入れてみるか)


「お二人さん、こんばんは。ちょっと訊いてもいいかい?」


「・・・なに?」


「いやいや、そんなに警戒しないで。今、『コーンズフレーバー』を買収したって言ってたよね?それってあの南方料理のお店の『コーンズフレーバー』だよね?問屋街の北入口の近くの」


「ええ、そうだけど。それが何?」


「いや、私も飲食店を経営していてね。前にあそこの買収を考えた事もあったんだけど、上手くいかなくてね」


「ああ、そうだったの。いや、あそこなんか嫌がらせみたいなのを受けているらしくて、うちのグループに入ればそれを解決させるって言ったら、楽勝で話しまとまって。誰が嫌がらせをしているか知らないけど、助かっちゃいました。ねぇ?」


「ええ!ラッキーだったですね!」


「・・・ってほしい」


「・・・なんです?」


「『コーンズフレーバー』を売って欲しい!」


「・・・あんた、何言ってるの?あんなに繁盛している店手に入れて、他人に売るわけないでしょ?ねぇ?」


「本当ですよ!もう酔っ払っちまってるんじゃないですか?」


「金ならいくらでも出す!頼む!この通りだ!」


ファクトは椅子から降りて床に膝をつく。


周辺の席から視線が集まる。


「ちょっとちょっと!こんなとこで何やってるの!?目立ちすぎだって!立ちなよ」


アリステアはファクトの腕を掴んで一度立たせ、改めて椅子に座らせる。


「ここじゃ話しづらいな・・・確かこの店個室あったわよね。空いてるかな」


アリステアは合図をしてウェイトレスを呼んだ。


「アニスさん!?こいつの話まともに聞くんですか?」


「聞くだけはタダだし。もしかしたらもっとデカい儲け話になるかもしれない」


「ですが、勝手なことするとオーナーに」


「あたしが売るかどうかを約束する訳じゃない。最終的な判断をするのはオーナーだよ。あたしはこいつから話を聞いてもっていくだけ。お姉さん、確かこの店は個室があったよね?空きがあれば使いたいんだけど」


尋ねながらチップの1000リアル紙幣を胸元に差し込む。


(一々様になるな・・・かっこいい)


「確認してまいります。少々お待ちくださいませ」


ウェイトレスは驚きながらも、溢れんばかりの笑顔で確認に向かう。


「ええ、お願い」


ウェイトレスはすぐ戻ってきた。チップの効果だろううか。


「お待たせいたしました、空きがありましたのでご案内いたします」


6人(2人はいないも同然だが)はウェイトレスに続いて個室へ移動する。


部屋の中の豪華なソファーに身を沈めると、アリステアが口火を切る。


「で、幾らでも出すって言ったよね?いくらまで出せるの?」


「大丈夫ですかね・・・」


「さっきも言ったが、それを決めるのはあたしじゃない。あたしはこのおっさんが出せる限界を確認して、オーナーに伝える。その金額でオーナーが売っても良いと判断すれば売るだろうし、持っていたほうがより儲かるというんだったら売らないでしょう。どちらがより儲かるか、というだけの話よ」


「さ、どう?ちなみにあたし達は契約金として1億払う契約を結んだ。あの店ならそれぐらい簡単に償却できると思ったから。あんたはどう?」


「・・・1億8000万でどうだ?」


「1億8000万?ダメね、話にならない」


「!?そちらの額に8000万上乗せだぞ!なぜだ?」


「その金額目一杯じゃないでしょ?自分たちで買収できなかったものを、横からしゃしゃり出てきて譲ってもらおうとしてるんだよ?そこ解ってんの?そもそも幾らでも出すっていうのは、あんたが最初に言ったんでしょうに。嘘だったってこと?それならこの話は終わり。あたし達は帰る」


「い、いや、待ってくれ!」


「別に明日の食費まで出せって言っている訳じゃないよ?今後のあんたの仕事で最低限必要な分を残して、出せる限界を提示しろって事。そこは頑張ってもらわないと、こっちだって上に話持っていけないよ。ねぇ?」


「そうですよ!図々しいってもんだ!」


(限界まで出せとキツく言って突き放しておきながら、すぐに相手を気遣う様な優しい事を言う。ファクトは条件が緩くなったと感じて、本気で限界額を提示するだろう・・・)


「さあ、どうするの?諦める?」


アリステアは畳み掛ける。


「・・・2億・・・2000万・・・だ」


ファクトが振り絞る様な声で金額を提示する。


(本当に目一杯じゃねえか!この馬鹿野郎!)


「おい、ファクト!お前商会潰す気か!」


ダルクがファクトの肩を掴み揺する。


「俺の目的はあの店を手に入れ、親父を超えることだ!」


ファクトがダルクを見据える。完全に目が据わっている。


その目の奥に得体の知れない暗くドロドロとしたものを感じ、ダルクは何も言えなくなった


(まずいな、このままじゃこっちまで巻き込まれちまう・・・)


「わかった。でも、返事は明日。うちのオーナーは今夜大事な用事がある。話だけは伝わるようにしておくけど、今夜はそれ以上は無理。それでいい?」


「わかった・・・」


「よし・・・あたしはゼピック商会のアニス。そちらは?」


「ロワンヌ商会のファクトだ」


「よし、うちのオーナーは即決果断の人だから、昼前には結論が出ていると思う。明日の12の鐘にそちらの店に結果を伝えに行く。もちろんその金額では売れないと言ったらそれまで。その時は諦めて」


「承知した・・・よろしく伝えてほしい」


「ええ。それじゃあね」


アリステアとクライヴは席を立ち部屋の外へ出て行くが、キースとフランはその場に留まった。


2人の会話を聞きたかったからだ。


「ファクト、お前ってやつは・・・」


「すまんなダルク。だが、あの店はだけは譲れん。あのまま話を聞き流してしまったら、俺は俺で無くなってしまう」


「あぁあぁ、もういいよ。わかってるから気にすんな」


手をひらひらさせて言う。


ファクトに(ほぼ)見切りをつけているダルクは、かなりあっさりしている。


「・・・今日はもう帰るか。なんだか酒飲む気分でもなくなっちまった」


「あぁ・・・」


2人も席を立ち部屋を出る。


それを見届けキースをフランも居酒屋を出るべく歩き始めた。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ