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第53話

【更新について】


「地上げ問題」解決までの分を一括更新致します。


12時で6話、16時で6話となります。なんでこんなに長くなった・・・


よろしくお願いします。

「奥様、飲食店で『コーンズフレーバー』というお店をご存じありませんか?50年程前に開店した、問屋街の北側の入口付近にある南方系の料理を出すお店なのですが」


「ええ、知ってますよ。夫が好きで家族でよく行きましたので。それが・・・?」


エレインは目をしばたたきながら答える。


「そこについてご主人が何か言った事はありませんか?」


「一度口論の中で『ノウハウも無いのに飲食店経営などできるはずがないだろう!そんなにしたければ、コーンズフレーバーみたいな繁盛店でも買収してこい!』と言った事がありました」


(それだ・・・)


「奥様、商会についてのお話を伺っているのは、そもそもその『コーンズフレーバー』が、地上げに絡む嫌がらせを受けているからなのです」


「まぁ・・・」


「あの店はアリステアさんも大のお気に入りで、開店直後から通っていました。その店が危ないと聞いて居ても立っても居られなくなったらしく、人を雇い調査を始めました」


アリステアは、アドルから聞いた嫌がらせの詳細、リリアが攫われそうになった事、昨日の午後テリオス商会の店員から聞いたダルクの店についての話をする。


静かに聞いていたエレインの顔色は、今や蒼白だ。


「そして、ここまでの話を元に、さらに詳しい調査をさせた結果がこちらです」


報告書を出しエレインに渡すと、エレインは静かに読み始めた。


アリステアはすっかり冷めてしまったお茶を口に含む。



読み終わったのかエレインが大きな溜息をついた。言葉もない様だ。


「このままではダルクや息子さんは、恨みが限界を超えた関係者に、直接的な危害を加えられることも十分に考えられると思います」


「・・・」


「それに、仮に息子さんが死んだら、その後釜はどう考えてもティボーさんです。ダルクと息子さんはまだ昔からの友人ですから対等でしょうが、彼はダルクに頭が上がりません。もっと酷いことになる可能性がある。そうなると娘さんも巻き込まれてしまいます」


「娘が・・・」


「内容が非常に不平等な契約でも、お互いがサインをしてしまっている以上、他人ではどうにもできません。法的に正攻法では難しいですし、そこまで時間もかけられません」


「ですので、こちらも騙して罠にはめる方法を考えています。とりあえず誰も死んだりはしないでしょう」


「ただ、ロワンヌ商会が今の形で続くかどうかは分かりません。赤字事業の精算、不平等な契約を正し、集めた金を返さないといけないでしょう。もしかしたら事業の継続ができなくなるかもしれません」


「保障が果たせて、今いる従業員達の再就職先が決まれば、商会は解散でも問題ありません。むしろ続けてはいけない気もします」


「では、この件は、アリステアさんにお任せ頂けますか」


「私の家族、親族の事でこんなにたくさんの方に迷惑をかけるだけでなく、アリステアさんにまで・・・恥を忍んでお願い致します」


エレインは頭を下げる


「では、その旨アリステアさんにお伝えします。それほど日数はかからないと思いますので、特別なことがない限り、全て終わってからまたお邪魔します」


「分かりました」


アリステアはレースの代金を受け取り、エレインの家を後にした



アリステアがギルドに戻ると、職員が「皆さん会議室でお待ちです」と声をかけてきた。


礼を言って部屋に入ると、部屋の中はまた微妙な空気になっている。だが一人だけ可愛くニコニコしている人物がいる


(またキースだな・・・)


「アーティおかえりなさい、ロワンヌの奥様はどうでした?」


「その前にこの空気はなんなんだ?今度は何だ?さては人を転移させる魔法陣でも作ったのだろう?そうだろう?」


皆、ギョッとした顔でアリステアを見つめる


(おいおい、まさか・・・)


キースは嬉しそうな顔でびっくりしている。


「ええ!?何で分かるんですか?凄いですね!」


適当に言ったら当たってしまった。アリステアは目を閉じて頬を撫でる。


(魔術学院の理事長はいつもこんな経験をしていたのだろうか。なんか申し訳ない気持ちになってきた・・・)


「その通り、人、正確には生物を転移させる魔法陣です。仕組みですが、基本的には物質転移の魔法陣と同じです。二箇所に魔法陣を置いて、お互いを入口・出口として移動させます。物質転移の魔法陣は、一定以上の大きさの物や生物は転移できませんでしたが、そこは無事クリアできました」


(クリアできちゃったんだ。そこが一番大変なんだろうに・・・)


「では、アーティにもお見せしますね、今この部屋のそこの角と、入口の扉の前に魔法陣が置いてあります。どちらかの上に立ち、あとはいつも通り魔法陣を起動させるだけです」


(凄く簡単そうに聞こえる・・・)


「では、いきますよ・・・起動!はい!どうです!」


扉の前の魔法陣に立っていたキースが、部屋の角の魔法陣の上にいる。


アリステアはそら恐ろしくなってきた。


いつもなら「うちの孫凄い!天才!」とはしゃぐところだが、人を転移させる魔方陣はまずい。世間に対する影響が大き過ぎる。


なんと言っても戦争の仕方が全く変わってしまう。


王宮に間者を忍び込ませ、人目につかないところに魔法陣を置けば、兵を送り込み放題だ。


そこから城内に火を放つ、毒を撒く、国王を暗殺する。なんでもできるだろう。そして力を得たら使いたがるのが人間だ。


「キース、これを私達の前以外で使ったり、口に出したりするのは絶対にやめろよ」


「はい、わかっています。ご安心を。今の仕様では僕の魔力でないと起動しませんので」


「もちろんそれも秘密だ!誰かがさらわれ、それをネタにキースが脅されて、という可能性もある。とにかく扱いと管理には細心の注意を払うこと!いいな!」


「はい、気をつけます!」エヘヘ


可愛い顔してもダメなものはダメである。


(天才相手は疲れる時があるな・・・)


今更ながらそれに気が付いたアリステアだった。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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