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第47話

【更新について】


48話以降は、現在の「地上げ問題」最終まで書き終わりましたら、まとめて更新致します。


よろしくお願いします。


2020年9月12日

「皆、今日の用事は終わったのか?出発日は決まったか?」


執務室に入りソファーに座るとディックが尋ねてきた。


「いえ、それが・・・元々の用事は終わったのですが・・・」


キースが今日の昼からの出来事を説明する。


「あの店がそんなことに・・・」


ティックも渋い顔だ。あの店には若い頃から何度も行ったことがある。馴染み深い店が酷い目にあっていると知れば、気分も悪くなるというものだろう。


「明日は、ロワンヌ商会の商売の内容と、なぜ業績が落ちてきているのかを調べて、それから具体的に対応を考えようと思っています」


キースが明日の予定を説明する。


「それについては、情報屋を使って探らせてみたらと思うんだ。私達はそういった面では素人だし、こんな目立つ四人組で聞き回ってたら怪しまれると思う」


アリステアが腕を組みながら提案する。


「それは確かにありそうですな・・・タンブロア商会は食品問屋でしたから、買い物ついでにうまく話が聞けましたが、ロワンヌ商会の取り扱いが不明では同じようにできる保障もありません」


「なので、ここはプロに任せたいと思うがどうだろう、リーダー?」


「分かりました。でも、情報屋というのはどう接触すれば良いのでしょう?」


「ギルド経由ですぐ連絡をつけることができるぞ、どうする?」


「え!?そうなんですか?ぜひお願いします!」


「分かった、ちょっと待っていてくれ」


ディックは執務室を出たと思ったらサイモンと一緒にすぐ戻ってきた。


「で、知りたいのは、ロワンヌ紹介の商売の内容、業績が落ちている理由、オーナーを務めるファクトの人物像、母親の高級衣料品販売の件、といったところだな?」


「あ、後もう1点。タンブロア商会のオーナー、ティボーとあのダルクの詳細についてもお願いします」


「ん?昼間聞けたが足りないか?」


「いえ、ちょっとおかしいなと思う点がありまして・・・堅実な商売をしているのに、なぜダルクの様な男と行動を共にしているのでしょう?食品系の問屋なのですから、ダルクがどんな評判の人物なのかは知っていると思うのです。商会の信用問題になりますよ」


「どうだろうなサイモン?」


「そうですね・・・それぐらいであれば、明日の午後ぐらいにはご報告できるのではないと思います」


「そうか、よろしく頼む」


「承知ました」


サイモンは皆に挨拶をし部屋を出ていった。


「情報屋ってまさか・・・」


「そう、サイモンだ」


皆びっくりである。


「まさか、サブマスターが情報屋とはなぁ・・・予想外だった」


「まぁ、正確には情報屋を仕切っているのがサイモンだ。本人が情報屋というわけではないぞ」


複数の情報屋から話を集め、それを精査し依頼者に伝える。もちろんタダではない。



「では、皆さん、今日はこれで終わりましょう。明日ですが、サイモンさんからの情報が届いて、その内容を確認してからどうするか決めたいと思います。なので、午前中はフリーで良いかと思うのですが、どうでしょう?」


「そうだな・・・私も午前中にちょっとやりたい事ができたし丁度良いな」


アリステアは大きく伸びをした。


「そういえばキース・・・宿はどこに取っているのだ?」


「この左隣の区画の、『白ウサギ亭』というところです」


「今日はもうこの時間だから無理だけど、明日からは私達と同じ宿に部屋を取るようにしましょう。別だと色々不便ですからね」


「確かにそうですね!分かりました!では皆さん、明日の12の鐘に合わせてギルドに集合という事でお願いします」


「「「了解!」」」


「私達はまだマスターと話す事があるから、キースは先に宿に戻っていてくれ」


「分かりました。おやすみなさい」


キースは、皆に挨拶をして部屋を出ていった。扉が閉まり、キースの気配が間違いなく離れていくのを確認してから、笑顔のディックが口を開く。


「頑張っていますね」


「微笑ましいだろう?可愛くて仕方がないぞ」


フランとクライブも笑顔で頷く。


「だが、もちろん可愛いだけでは無いんだ。話を整理しポイントを掴み、それを元に次の行動を決め、まだはっきりしていない部分を予想する。経験はほぼ0なのに、その辺りは素晴らしい。さすが私の孫だ」


「国を一周りして王都に戻ってきた時に、どれだけ成長しているか楽しみですね」


「あぁ、期待していてくれていいぞ。で、先程のロワンヌ商会関係の話なんだが・・・」


「はい、なんでしょう?」


「前オーナーの母親が、個人で高級衣料品の売買をしているという話があっただろう?」


「商会の売上が下がった分の、穴埋めにしているのではないかという話ですね?」


「それな、おそらく私の卸先だ。レース編みの」


皆呆然した。意外なところで繋がっていたものである。


「彼女の名前がエレインだったら確定だな。気付かなかったのは、彼女はこのやり取りでロワンヌの名前を出してないんだ。だから結びつかなかった」


「なるほど・・では彼女はなぜ商会の名前を出さないのでしょうな?」


「正直、あれは半分彼女の趣味みたいなものだ。他にも手工芸品を買い取り販売しているが、特性持ちの個人が生活の合間に作っているからな、どうしても数が揃わないんだ」


「なので、明日の午前中に編みかけのレースを完成させて、アリステアの遣いという体で直接納品に行って様子をみてみようかと思う。あ、後キースにはレース編みの事は内緒だ。おばあ様に結びついても困るし、さすがにこの姿の冒険者の趣味がレース編みではな・・・」


「た、確かに」


皆微妙な顔である。


「よし、では私達も帰ろうか。さすがに色々あって疲れた・・・」


「盛りだくさんの一日でしたね・・・朝の大立ち回りが何日も前の様です」


皆で大きく溜息をつく。


(だが表情は「これはこれで悪くない」と言っているのが丸分かりだけどな)


ディックは心の中で突っ込んだ。


「ディックも今日一日ありがとうな。とりあえず、この件が片付いたら王都を出るからもう少し付き合ってくれ」


「最近は静かでしたからな。まぁこれぐらいであれば・・・それに、この歳になっても、かつての仲間と色々できるのは悪くないです」


クライブとフランをチラリと見やりニヤリと笑う。


「そう言ってくれるとこちらも気が楽になるな」「ありがとうディック」


「ふん、ではまた明日な」


「ああ、お疲れ」


3人はギルドを出て宿へ向かった。



キースは部屋に戻り、共用シャワーを浴びてさっぱりすると、ベッドに入り大の字で伸びをして脱力し、それを複数回繰り返す。寝る前に行うリラックス法である。


(今日は、人生最大の激動の一日だったな・・・)


朝からのできごとを思い返してみる。


・パーティメンバーの募集をしていたらサームズに誘われた。でも彼らは追い剥ぎの犯罪者で、アーティさん達とギルドの待合室で他の人を巻き込み大乱闘。


・家出とバレて帰る事になるかと思いきや、一転許可が出て、冒険者として活動できる様になった事。


・挨拶をしてお昼を食べに行くだけだったのに、その店の誘拐されそうだった娘を助け、嫌がらせの調査。


(これだけの事が一日で起こっているっておかしいだろ・・・)


我が事ながら呆れる。実は、トラブルを呼び込む体質なのだろうか。


(明日は、午前中にリリアを連れて学院に行ってみよう。編入の件を理事長先生に相談してみないとな)


明日の予定を考えているうちに、キースの意識は遠くなっていった。


これだけ色々やって24時間も経っていないなんて・・・


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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