第46話
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女性店員は、ダルクの店について知っている事を喋りだした。テンションも高めで楽しそうだ。
(こういうの好きなんだろうな・・・)
「ダルク自身が経営している店は、大きめな平屋の建物に複数の店舗のカウンターが入っていて、色々な料理を一つの建物内で楽しむことができる、という店になります」
「営業するには、各店舗用のカウンターの改装をしなければならないのですが、たいていどこの飲食店も懇意にしている木工工房があるのものです。ですが、あの店ではダルク側の指定の工房にしか頼めないそうなんです!その費用も全て自腹で、しかも若干割高だそうで。工房からキックバックされているかも?なんて言われてますね!」
「営業を始めてからも、カウンターの毎月の家賃も周辺の物件より高め!しかも、幾つかの特定の食品問屋からしか仕入れることができないらしく、スムーズに食材が調達できなかったりもするそうです。それが嫌で出店をやめようとしても、カウンターの原状回復の費用も掛かるし、契約期間内の出店取りやめの違約金がまた法外らしくて・・・あそこに出店した飲食店は、辞めるに辞められなくて困ってるという話ですよ」
「どこまで本当の話かわからないけど、その店に対して自分達で嫌がらせを仕掛けて、救いの手を差し伸べるかの様にしてグループに引き入れた、いう話まであるぐらいです」
「私も一度行った事がありますが、店で出している料理自体は、程よい価格で美味しいです。でも、そんな状況だからなのかどの店にも活気が無いですね。元気がないというか」
「タンブロアさんもご自身の商会は堅調ですが、オーナーのティボーさんの奥さんの実家の方が不安定みたいですね。ロワンヌ商会というのですが、奥さんのお父さんが亡くなって奥さんのお兄さんが継いだのだけど、あまりうまくいっていないらしいです」
「先代の奥様が、商会とは別に女性向けの高級衣料品を扱っているそうなのですが、そちらの売上を回して補填している、という話も聞いた事があります」
その後も女性店員は喋り続けた。
(もういいかな・・・帰りたい・・・)
と、皆が思い始めたところで、テリオス商会のオーナーが外出から帰ってきた。
そのタイミングを逃さず、お礼を言って急いで皆を出る。
「いや・・・参りましたね・・・」
「思った以上に色々聞けましたが、さすがにしんどかったですな」
「話の整理がてら一息入れたいな」
「あ、あそこのカフェはどうですか?」
道を挟んで反対側にあったカフェに入り、人数分のお茶と焼き菓子の盛り合わせを注文する。お茶を飲んでお菓子を摘み、やっと人心地ついた。
「では、タンブロア商会とダルクについての話を整理しますね」
・タンブロア商会はティボーで四代目になる。堅実で、地道な商売をしており周囲からの評判は良い。取り扱い商品は北方系の品物がメインで、南方系のものは少なめ。
・妻の実家も商会を運営しているが、3年前に先代である父が亡くなり、兄の代になってから業績が少しずつ下がっている。兄妹の母が、個人的に行っている高級衣料品の売買で出た利益で補填している。
・ダルクは、良い話が全くない詐欺師のような奴で、関わらない方が良いと言われている。
自身の店も高額な家賃や、仕入れ問屋と木工工房の縛り(そこからのキックバックも考えられる)、出店取りやめには法外な違約金も設定している。そのせいかどのお店も元気がない。
「ティボーの妻の実家の商会は何を扱っているのでしょう?」
「ロワンヌ商会と言ってましたよね・・・冒険者ギルドで誰か何か知らないか聞いてみるか」
「そうですね・・・ではこの後は、ダルクのお店で夕食をとり、ギルドでロワンヌ商会について話を聞いて終了、ということにしようと思います」
「「「了解!」」」
「キース、この話が片付いたら最初にどこに行きたい?」
「そうですね・・・やはり北国境のダンジョンでしょうか」
ダルクの店に向かう道すがら、次の目的地を話し合う。
「北国境のダンジョン」とは、かつてアリステアが見つけたあのダンジョンの事だ。
他の冒険者たちと確保の為に対応し、ご褒美をいただき金級冒険者に認定された。
その後、ダンジョンの入口がある中洲に橋がかけられ、周辺の森は切り開かれた。
その材木を使い、ダンジョンを管理する国務省の管理事務所や担当職員達(及び家族)の宿舎、国軍の兵士用の兵舎が建てられた。
さらに、ダンジョンに入る冒険者を目当てに、宿屋や食事処、武器や防具の店、消耗品関係を扱う雑貨屋が建てられ、今や小さな町と言えるぐらいの規模になっている。
さらに、元々付近を通っていた北街道もその街まで伸ばし、馬車での行き来が楽にできるようになった。その小さな町を中心にまだまだ大きくなりそうだ。
「王都から一番近いしな。とりあえずダンジョンを経験するなら、確かに手っ取り早い」
「はい、ぜひ一度入ってみたいです」
キースは頬をピンクに染め目を輝かせる。
5の鐘が鳴る頃、ダルクの店に到着した。
平屋のかなり大きな建物に、肉・魚・麺類・軽食とアルコール・南方系・北方系と様々な店のカウンターがある。
中央が席になっており、それを囲むように建物の壁際にカウンターが並んでいる。
席を決め、各自自分が食べたい物のカウンターに行き注文、品物を受け取り席に戻る、という流れのようだ。とりあえずメニューを見ながら一周回ってみる。
「これは迷いますね・・・」
「私は鶏出汁の塩味のスープヌードルにします」
「う~む・・・では北方系の店の、牛の内臓の煮込み料理のセットにしましょう」
「じゃあ僕は、魚の切り身をタレに漬け込んだ丼にします」
「私はステーキとピラフのプレートにしよう」
各自がそれぞれのカウンターへ行き、料理を受け取って戻ってくる。
「いただきます!」
「あ、このスープ出汁が濃くて美味しい!」
「魚もタレが程よく染みてていいですね!」
「この煮込みも時間をかけて柔らかく煮こまれていますな・・・濃いめの味付けもご飯に良く合います」
「肉香ばしくて美味いぞ!」
4人は料理の感想を言い合い、シェアもしながら楽しい食事を済ませた。
「美味いとは聞いてもおりましたが、確かに美味かったですな」
「ええ、あれなら他のお店の料理も食べたいですね!」
「うんうん、美味しかったです」
「「「ただ・・・」」」
(やはり思うよな)
「聞いていた通り、店員の元気はありませんでしたね」
「そうですね・・・」
店員の話はあくまでも噂だ。全てをそのまま信じる事はできない。割引も必要だと思っていたが、実際に自分の目で見てみると(確かにそうかも)と思わせるだけのものはあった。
冒険者ギルドに着き建物の中に入る。
各窓口は依頼を終え報告をしたり、戦利品を売却する冒険者で混雑している。
椅子やテーブルがあった待合室には、その代わりなのか複数のベンチが置いてあった。
大体七7の鐘ぐらいまでは混雑しているので、それまで待合室のベンチで待つことにする。
と、カウンターの脇にある「職員専用」と書かれた扉が開き、ディックが顔を出すとアリステア達に向かって手招きをしてきた。彼らが来た事を< 探 査 >の魔法で感知したのだろう。
皆でディックの執務室に入り、ソファーに座る。
やはりダルクは悪い奴でした。




