第45話
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店を出た4人はタンブロア商会の店舗がある問屋街へ向かっていた。
「まずは、タンブロアがどんな商会なのか、他の食品問屋で尋ねてみようと思います。地上げに協力するぐらいですから、恨み言が出る可能性が高い気もしますが、自分達で確認するまで思い込みは禁物です」
問屋街に入った辺りは糸や布類、毛糸等を扱う服飾関係の店が集まっていたが、だんだんと食品系の店が増えてきた。
そして、前方にアドルに教えられた特徴の店舗が見えてくる。
「あ、見えてきましたね」
「看板は・・・うむ、あの店で間違いないようですな」
顔は向けずに目だけで店構えを確認する。
道路に面したところには、香辛料や調味料が透明なケースに入れられ陳列されている。大口の注文だけでなく、少量の量り売りにも対応できる様にしてあるのだろう。
その脇には、派手な値札が付いた商品が机に並べられている。お買い得商品の様だ。
店内には、個別に包装された高級乾物や、干物の様な物が天井から吊るされていたりと、様々な品物が見える。
店の前を通り過ぎ、すぐ先の路地に入る。
「皆さん、第一印象はいかがでしたか?」
「普通だな」「普通ですね」「同じく」
「僕もそう思いました。問屋の店構えとしては一般的ですよね・・・もちろん、見た目で判断できる事でも無いのですが。では、他の店で買い物がてら話を訊いてみましょう。できれば女性店員のところが良いです」
「ほう、それは?」
「女性の方が噂話やゴシップに詳しくて話し好きの方が多いですから。色々喋ってくれるかもしれません」
(た、確かにそれはあるかもしれない・・・)
アリステアとフランは、先日までの、お茶を飲みながらお喋りしていた日々を思い出す。
「あ、ここが良さそうですね。奥に女性の店員さんが見えます」
店の看板には「テリオス商会」と書いてある。
「では、買い物自体は私とフランがしよう。このメンバーでキースが食品問屋で買い物をするというのも違和感があるだろうからな」
大人3人を差し置いて、小柄で可愛い魔術師の格好をした少年が食品問屋で商品の注文をする、間違いなく悪目立ちする。店員に強い印象を残す必要は無い。
「あぁ、それは確かにそうですね。ではお願いします」
キースはクライブとフランに任せる事にした。
「南方出身の友人にお祝いとして、香辛料や調味料、食材を贈る為来店した、という設定でどうだろう?」
「ええ、良いと思います。それでいきましょう」
皆で店内に入る。店構え自体は、タンブロア商会とほぼ同じだ。
所狭しと様々な香辛料や調味料、見た事も無い商品が並んでいる。パッと見ただけでは、食べ物なのかどうかも判らない物も多い。
店内の匂いも、主張が強いものが複数混ざっている為、何の匂いなのかもはや判別不可能だ。
「はい、いらっしゃいませ!」
「南方出身の友人に子供が生まれたので、お祝いに香辛料や調味料を贈ろうと思うんです。でも、食べるのは好きなのですけど、何が入っているのかまではよく判らなくて・・・」
「一般的によく使う物を見繕ってもらいたいのだが」
「確かに、その辺は自分で作れる人でないと難しいですね・・・基本になる香辛料5種類、各1kgぐらいあると使い勝手が良いと思いますが、いかがでしょう?」
「はい、ではそれでお願いします」
「かしこまりました。用意しますので、少々お待ちください」
キースは、店内に並んでいる様々な商品を食い入る様に見ている。
「この世のありとあらゆる事が知りたい」と言うだけあって、自分が知らない事はどんな些細な事でも吸収しようと、非常に貪欲な姿勢をみせる。
店員は、重さを量りながら、何かの種や根菜の様な物を袋に詰めてゆく。
(どんな味がするのだろう・・・)
乾燥した葉っぱらしき物が入ったケースを開けて匂いを嗅いでみると、先程食べた料理の中に入っていた・・・様な気がする。
(このお店にある物、全て料理に使う物なんだものな・・・世界は広い。早く色々な所に行ってみたい!)
キースは益々その思いを強くした。
「はい、お待たせしました。使用頻度が高い物を5種類選んでみました。これなら使わずに余ってしまうという事は無いでしょう。後は、これとこれとこれがよく使う調味料と、現地でよく使う香りが独特な油です」
「ありがとうございます。やはり専門家の方に任せるのが一番ね。助かりました」
フランがさり気なく女性店員を持ち上げる。
代金を払い品物を受け取る。アリステアが腰のベルトから背負い袋を出し、それを詰めてゆく。
「こちらに来る前に、手前にあったタンブロア商会?というお店も覗いてみたのですけど、南方系の品物が少なくて・・・」
「あぁ、タンブロアさんは、南方系より北方系の商品が充実しているんですよ。うちとはうまく棲み分けできています」
女性店員はウフフと笑う。
「あぁ、なるほど・・・」
キースは品物を眺めながらも聞き耳を立てている。と女性店員の大きな声のおかげで、< 聴 力 強 化 >の魔法を使うまでもない。
(南方系とは縁が薄そうなのに南方料理を出す店の買収に関わっている?)
「確か、フレッドの奴はターブルロンド出身だったよな?今度アイツを連れてタンブロア商会に行ってみようか?」
「いいわねぇ。何か美味しいもの作ってもらいましょう」
「タンブロアさんなら、間違いなく良い物を揃えてくれると思いますよ。長年きちんとした商売をされてこられた老舗ですから。今のオーナーで4代目だったはずです」
女性店員はタンブロア商会には良い印象しかない様だ。
「ほほぅ・・・それは楽しみだ。よし、今度皆の予定を合わせておこう」
(そんな堅実なお店が、何で怪しげなグループの地上げに協力しているのだろう・・・)
「あなた、問屋の方ならあの事もご存知かもしれないわ。お尋ねしてみましょう」
「おお、そうだな。最近、飲食店の買収の話題とかを聞いた事はないだろうか?遠征に出ている間にお気に入りだった店が買収されたらしく、その場所が別の店になっていたのだが・・・」
「う~ん、まぁ、そういった話は一年で3、4件は入ってきますね・・・」
「そうですか・・・王都にある複数の飲食店を傘下に収めるグループというのがあって、そこが関わっているらしい、という話も聞けたのですが」
「あ・・・それはダルクという男のグループかもしれませんね」
(出たな、ダルク)
「ダルク・・・そう言われるとそんな名前だった様な・・・」
クライブは調子を合わせる。
「あの男は飲食店経営者というより、飲食店を他人に経営させてアガリを掠め取るという、詐欺師に近い男だという話ですよ。関わらない方がよい人物だと言われています」
女性店員は、目を爛々と輝かせこちらが聞いていない事まで話し始める。
(こうまで狙い通りにいくとは)
キースはさらに耳をそばだてる。
ただの地上げかと思いきや、雲行きがちょっと変わってきました。
全体的にゆっくり目に進んでいきますので、よろしくお願いします。




