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第41話

【更新日時について】


書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。


通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

フランとクライブは王都の中央広場の脇にある、海の神の神殿に来ていた。


礼拝堂に入り中にいた神官に寄進を渡し、お祈りをしたい旨を伝える。


クライブは特に海の神の信者ではないが、王都の神殿に来た時ぐらいは祈っている。


お願い事は主に妻の身の安全だ。


まぁ、自分などが祈らなくても、フランは海の神のお気に入りだ。問題は無いであろうが。


祈り始めてしばらく経った頃、礼拝堂の側面にある扉が開いた。


神殿の奥へ続く通路からの扉だ。


扉からは、年老いているが姿勢のよい、立派な身なりの男性が入ってきた。


フラン達の方へ近づいてくる。フランも気配に気づき、眼を開ける。そしてその姿を見て懐かしそうに微笑えんだ。


「ご無沙汰しております、司教様」


「よくぞいらした、海の神の娘よ。お元気そうで何よりだ」


「はい、司教様もお変わりなく・・・姿が違うのに全く戸惑われないあたり、さすが司教様でございますね」


「あなたの気配は、この世で唯一のものだ。今もそれを感じたので、部屋から出てきたのです。姿など関係ありません。もちろんご主人も分かります」


(こう言い切るこの方も相当だかな・・・)


「して、今日はどうなされた」


「はい、しばらく旅に出ることになりまして」


フランは今回の経緯を説明する。


「ほほぅ・・・世の中にはまだ未知なるものがたくさんあるものですな。その様な魔導具があるとは・・・」


「はい、不思議なものでございます」


「それにしても、あなたとあの方は本当に縁がありますな」


「そうですね、人生の転機になるような時はいつも一緒です」


もう50年の付き合いになる。


海の神の啓示を受けた日、アリステアが瀕死でバーソルトに戻ってきた時、足を無くし王都に戻った時、アーサーが死んだ時、そして孫が旅立つ時。


「海の神は、彼女の力になれるように、あなたに力を与えてくださっているのかもしれませんね」


「はい、そうかもしれません。これからもあの人と一緒に行けたらと思っています」


司教が入ってきた扉が開き、先程寄進を渡した神官が入ってきた。


「ちょうど良い、紹介しましょう。私の後を引き継いで司教になるリエットです」


「リエットでございます。まだまだ至らぬ身ではありますが、精一杯務めさせていただきます。よろしくご指導くださいませ」


「とんでもございません。私に出来ることでしたらなんでもおっしゃってください。司教様、長きにわたるお役目、お疲れ様でございました」


「後を任せようと思っていた方がいなくなってしまいましたのでな、長くなりました」


片目をつぶりながら、フランを見て言う。フランも苦笑いだ。


「フラン、例の件をお願いをしてみたらどうだ?」


「はい、私もちょうど今それを思っておりました。リエットさん、大変不躾なのですが、お願いがございまして・・・」


「はい、如何されましたか?」


「ちょっと法衣のサイズが合っておりませんで・・・予備の法衣を何着か譲っていただけないでしょうか?」


「はい、かしこまりました。では実際に試着して決めましょう。どうぞこちらへ」


「ありがとうございます。ではちょっと行ってまいります」


フランはリエットと連れだって部屋を出る。


司教は二人を見送ったあとクライブを見遣り


「また冒険とは大変ですな」


「それが・・・正直なところ、この先が楽しみでならないのです。中身はいい歳ですのに、気持ちが高ぶり仕方がありません。お恥ずかしい限りです」


「ふむ・・・やはり体が若くなり調子の悪いところがなくなると、気力も充実するのでしょうな」


「冒険者ギルドのマスター、ディックも同じようなことを言っておりました。それにもう一点ありまして・・・やはりキースの存在がとても大きいようです」


司教は無言で先を促す。


「将来ある若者と行動を共にし、その考え、反応、表情に触れていると、自分でも知らないうちに影響を受けている様で、何事にも積極的にという気分になっている自分を感じます」


「それに、私達には子供がおりませんが、キースの事は生まれた時からずっと成長を見てきました。少し歳がいってから出来た息子だと思っております」


「大きくなった息子と一緒に旅に出て、日々その成長ぶりをみることができる、これ以上の喜びはそうないのではないかなと思うのです」


「今回の事で、それをまだまだたくさん感じたい、共に過ごしていきたいという欲が出てきました。その為にも、3人の前に立ち続けたいのです」


「気力が衰えると人は一気に老けるといいます。新たな力が漲っているのは、大変喜ばしい事。私も皆さんの旅の無事を祈りましょう。王都に戻られた時には、ぜひお立ち寄りを。土産話を楽しみにしております」


「はい、必ず。ありがとうございます」


扉が開きフランとリエットが入ってくる。


やはりきちんとサイズの合った法衣であれば、そこまで目立たない。今までの法衣はさすがにぴったり過ぎた。


「そろそろ行きなさるか」


「はい、お邪魔いたしました。行ってまいります」


「皆さんの旅の無事を祈っておりますよ」


「はい、ありがとうございます。司教様、リエット様、お二人もお身体には気を付けてお過ごしくださいませ」


別れの挨拶を交わし、フランとクライブは神殿を出た。

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