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第39話

【更新日時について】


書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。


通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

皆と別れたキースは、アリステアとは別の通りから貴族街方面へ向かっていた。


ハインラインの屋敷は貴族街の南側、魔術学院は西側にある。


学院の建物は一つだが貴族棟・一般棟・教員棟の3つに分かれている。


昔は、一般国民と貴族を分けずに授業をしていたらしいが、生活水準、人として基本となる考え方が違う人間を、同じ教室の中で学ばせるのはどう考えても無理であるし、実際無理だった。


そのため、貴族側と一般国民側の生徒達はお互い顔を合わせる機会は無い。


貴族である生徒はほとんどが国の組織に入る。


一般国民は冒険者になる者の方が多い。しかし、中には、先程あげた部署・施設に誘われる者もいる。


(やっと理事長先生に報告できる・・・)


道を歩きながら卒業式の事を思い返す。


一般国民側の卒業式だと、来賓の最上位者は王都の行政官(市長)だ。


これが貴族側だと近衛騎士団長や国務長官等も列席する。


しかし、キース達の卒業式には、その本来来ないはずの近衛騎士団長や国務長官が参列していた。


(あれ、近衛騎士団長と国務長官のティモンド伯爵だよな・・・)

(何でいるんだ・・・?)

(やっぱりあいつ目当てだろ・・・)


そう、みな目当てはキースだった。


オリジナルの魔法陣の件もありキースが大変な能力の持ち主であることは皆承知していた。


近衛騎士団長はキースを騎士団の魔術師部隊に入れたいと考えていた。


1人で多数・広範囲を相手取れる魔術師は何人いても良い。


国務長官はキースの魔法陣関連の能力に魅力を感じる。


国務省は魔術学院と連携し既存の魔法陣や魔導具の性能向上と効率化、新たな魔法陣と魔導具の作成に取り組んでいる。


既にオリジナルの魔法陣を作るぐらいの逸材だ。是非とも欲しいと考えていた。


卒業式が終わり、学生たちが解散した後、騎士団長と国務長官は早速動き出した。


キースの手前まで来て声をかけようとしたとその時


「キース!」


「おばあ様!キャロル!ヒギンズも!みんな来てくれたのですか?!」


「当たり前でしょう!孫が首席で卒業する姿を見ない祖母なんて、世界中探したっていませんよ!」


「ご挨拶も素晴らしかったですね!さすがぼっちゃま」


「堂々としたものでしたな!お見事です!」


「そ、そう?ありがとう!」


キースは頭に手をやり、照れる。


(くぅ~久々の照れキース、最高!)


騎士団長と国務長官は声をかけるタイミングを逸してしまい、盛り上がる4人をよそに立ち尽くしている。


「アーティ、近衛騎士団長と国務長官がいらっしゃっています」


そんな二人にキャロルが気が付き、アリステアに囁く。


「キースのことを勧誘に来たのかしら、さすがわかっているわね!キース、あなたにご用みたいよ?」


騎士団なら戦闘時の火力担当として、国務省なら研究職だ。


戦いに出るとなると怪我などが心配である。ここはやはり国務省所属で研究職だろうか。


アリステアが考えていると、キースと話をしていた騎士団長と国務長官は肩を落とし歩き去っていく。


(随分早いわね?それにあの2人の様子・・・)


「ぼっちゃま、所属先のお誘いだったのですよね?どちらにされたのですか?」


キャロルは答えを薄々察しながら尋ねる。


「うん、どちらもお断りした。というか、以前からお話は頂いててね。お断り済みだったんだ。今日は一応心変わりしていないか、念のために確認に来られただけで」


(だから食い下がりもせず、すぐに帰っていったのね・・・)


「ちょっとキース!断ったってあなた!」


どちらの組織も一定レベル以上の力の持ち主でないと入れず、非常に安定した職場である。


それも各組織の責任者が誘いに来ているのだ。それをあっさり断るなど考えられなかった。


「おばあ様、僕にはぜひやりたい仕事があるのです」


「!?そ、それは・・・?」


「冒険者です」


アリステアは言葉もなく呆然としている。


(冒険者?何を言っているのこの子は・・・冒険者なんて危なっかしい仕事、許せる訳無いでしょう!)


「・・・許可できません」


「お父さんの事は許可したのにですか?」


「あの子はあの子!あなたはあなたです!特性も違います!」


「ですがおばあ様、僕は学院を卒業した18歳の成人です。職に付くのに保護者の許可はいらないのですよ?」


「ダメです!」


「それに、僕が冒険者になりたいと思うようになったのは、おばあ様が聞かせてくれたお話きっかけです」


「!」


「僕は世界を周り、この世の全てを自分自身で経験し、この目で見てみたいのです。誰がなんと言おうと、僕は冒険者になります」


「だ、だ、ダメったらダメです!許しませーん!」


どちらが子供が分からない様なやり取りである。


まだ1ヶ月程しか経っていないのに、随分前の様に感じる。


しかし、この2日間で状況は180度変わり、無事冒険者になる事ができパーティにも参加できた。


しかも、朝のギルドでの対応や特性、装備品からも、あの3人は相当な手練れだ。


とても心強い。自分の様な新米と組んでくれた事がまだ信じられない。


しかも、パーティのリーダーにするという。


「ライアルさんの様になれ」


複数のパーティをまとめ、皆の能力を把握し状況を見極め、適切な指示を出す指揮官。


(全く想像がつかない・・・)


だが、自分はまだ18歳、冒険者になって2日目である。


そこに甘える訳では無いが、さすがに失敗しながら学ぶ事は許されている、と思う。


あの3人でもフォローできない程判断や考えがまずいのであれば、実行前に止められるだろうし、それが改められず「改善の余地無し」と判断されたら「リーダーには不向き」となるだろう。


人として冒険者として、経験を積み自身の器を大きくし中身を満たす。そして何事にも手を抜かない。


「これぐらいでいいか」と思った事は、たいてい足りていないのだ。できないくせにサボっていたら、さすがに見放されるだろう、下手をすれば死者が出る。


(よし、明日から頑張ろう!)


魔術学院の一般棟の入口に着いた。

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