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第36話

【更新日時について】


書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。


通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

あれはまだフランが9歳の時だ。


「海の神様、お腹を空かせた神殿のみんなとお姉ちゃんと小さな子供達の為に、どうかお魚をお恵みください。よろしくお願いします」


孤児院の食事のおかずの足しにしようと、そんな事を呟きながら港の隅で魚釣りをしていたのだ。


しばらく釣りをしていると、周りが急に霧に包まれ見通しがきかなくなった。周囲2mぐらいしか見えない。


(何だろう急に・・・)


不安に感じ始めたとき、海面から立て続けに5匹程魚が飛んできて、足元に落ちた。


フランの身長と同じぐらいある魚が、地面でピチピチ跳ねている。


!?


ポカンと口を開けていると、どこかから声が聞こえる。


キョロキョロしていると、何と海面に中年の男性が立っていた。


(なんで海の上に立てるんだろう・・・)


「娘よ、お主の声を聞き入れその魚をやろう。持って帰り皆で食べるが良い。欲しければまたここに来て祈りなさい。ただし3日に1回じゃ。あまりやってしまうと魚がいなくなってしまうからな」


「も、もしかして、海の神様ですか? 神様って本当にいるんだ・・・」


「!? お、お主それは・・・ま、まあ良い。これからも私に祈るのだぞ。そうすればまた魚をやろう」


「分かりました!でもなんで私に・・・?」


「そなたの祈りは、なんというか・・・とても心地よく感じる、心に響くのだ。その礼だ」


「そうなんですね・・・よくわからないけど、頑張ります!」


「うむ。そうだ、そなたにこれをやろう」


男性の前に何やら首飾りらしき物が浮かんでいる。


「これは・・・?」


「わしを表す印を首飾りにした物だ。わしの加護を受けているという証になる。祈る際に手に握り込むのだ。よりお主の声が聞こえる様になる。ではよろしく頼むぞ」


男性の姿は霧に溶け込むように薄くなり、気が付いた時には霧も晴れていた。


(まさか神様からお魚がもらえるなんて・・・)


(これからも貰えるのであれば頑張ってお祈りしよう)


と思う、現金なフランであった。


そして、足元で元気にピチピチはねる5匹の魚を見て思う。


(どうやって持って帰ったらいいんだろう・・・)


自分と同じぐらいの大きさの魚だ、自分ひとりでは無理である。


とりあえず、魚を物陰に隠しておき、急いで共同神殿へ戻り海の神の司祭に事情を話した。


司祭は驚きながらも、聖印を首から下げたフランの話を信じ、神官達と荷車と出してくれ、魚は無事回収された。


司祭は、せっかくお声掛け頂いたのだからと、漁師組合に話を通しその付近に祠を建てた。


フランは毎日祠に行き、「いつもありがとうございます」と心を込めて祈り、祠を清め、3日に1度魚をもらって帰った。


漁師達の間でも、「ここで祈ってから漁に行くといつもより多く魚が穫れるらしい」という話が広まり、皆がお祈りしお供えをする様になった。



「で、14歳になる年に王都の神殿に入って、神官の勉強を始めたの。今でも月に1度はバーソルトへ行って、祠のお掃除をしてお祈りをしているわ」


「神様は本当にいらっしゃるのですね・・・」


「もちろんよ!神聖魔法は神の奇跡の具現化ですからね!」


「で、戦う時なのだけど、基本私が前に出ることはないわ。だけど、いざという時にはこの錫杖で対応します。相手次第だけど、自分の身くらいは守れます」


錫杖は鉄製だが、神殿で祝福を授けられているので、魔力付与された武器と同様の物と言えるだろう。


「あとは状況に合わせて、神聖魔法による各種補助をかけて、戦いが有利になる様にします」


いわゆる「バフ」である。身体能力の強化や、炎や冷気に対する耐性の強化等が一般的だ。


「こんなところね。何か質問はあるかしら?」


「今のところとりあえずは・・・また何か思いついたらお尋ねします」


「ええ、いつでもどうぞ」


フランは片手を頬に当てて微笑んだ。


「では、最後は私だな」


「見ての通り身体が大きく力が強いのが取り柄だ。アーティとはまた違った、攻撃を受け止める盾的な前衛、『 タンク』という呼び方もあるな」


「武器は基本的にはこのメイスだ。黒鋼製で、硬化の魔法が付与されている。大剣も使うことはあるが、メイスの方が多いな。なぜかわかるか?」


「打撃はどのような状況でも、一定のダメージが期待できるからでしょうか」


「その通り!金属鎧や外殻、体表、筋組織が硬い相手だと刃が通らない可能性がある。しかし、メイスによる打撃というのは衝撃が伝わる。相手の表面が硬くても衝撃は体の内部に達しており、確実に相手にダメージを蓄積させる」


「それに、相手が鎧を着ている場合、関節部分を狙って変形、破壊する事ができれば、相手の動きを制限することもできる。見た目は地味だが実用性は高い」


「盾も黒鋼製で硬化と軽量化の魔力付与がされている」


「鎧はダンジョンの深層に住む、タイラントリザードという、大きなトカゲの皮を特殊加工したものだ」


(タイラントリザード、トカゲというより劣化した竜と言った方がよいぐらいの、かなり強い魔物だったはず・・・)


「軽くて硬く温度変化にも強い。金属鎧もあるがどうしても音がするからな・・・静かに移動したいことが多いダンジョンや遺跡では向いていない。大きな戦場なら良いがな」


「盾には軽量化の魔法が付与されているという事ですが、メイスには掛かっていないのですね?」


「うむ。それにももちろん理由はある」


「重さが威力に直結するから?」


「そうだ!」


生徒が優秀だと教師は楽なものである。


「では最後に僕が・・・ご存知の通り、魔術師です」


「首席で卒業とは大したものだ」


「はい、卒業式では学院の理事長の他、近衛騎士団の団長や国務長官からもお誘いいただきました。でもどうしても冒険者になりたくてお断りしました」


「そういえば 、キースはなぜそんなに冒険者になりたかったんだ?」


「一言で言うと、『 未知なるものへの興味』でしょうか。僕はまだカルージュの村、王都の一部、魔術学院とその寮でしか暮らした事がありません。僕が知っている知識は、どれも本から得たものや、学院の先生などに教えていただいたものです」


「もちろんそれがダメなわけではありませんし、不満があるわけではないのですよ?ですが僕は自分の目で見て自分で経験したいのです。ダンジョンはもちろん、神話や伝説、古代王国の遺跡、建造物、不思議な現象、未知の生物、もうなんでもいいのです」


キースは目を輝かせ、ほっぺたをピンクに染めながら語る。


「先程の皆さんの自己紹介での内容も、とても興味深かったです。ミスリル製であれだけの魔力を付与がされている剣なんて、王城の宝物庫にだってないかもしれません」


「他人の特性なんて、家族か余程親しい人、命を預ける仲間ぐらいでしか詳しく聞くこともありません。そういった事もとても興味深いです。フランと海の神様のやり取りなんておとぎ話のようじゃないですか!1人の人間と神様があんな風にやり取りするなんて・・・」


「僕はまだ冒険者になってまだ2日目なのに、もうこんな素晴らしい経験をしています。この先どんなことが待っているのか、本当に皆さんとご一緒できるのが楽しみです!」


(はぁ・・・立ち上がって熱く語るキース・・・最高!)


「キースの気持ちはよく解った。私達も冒険者になって10年近くが経つが、そういった気持ちもまだ枯れてはいない」


「そうだな、この国に限っても訪れたことのない場所はたくさんある。もし全てを回ったとしても周辺にも国はあるしな」


「これからどんな経験ができるのか、私たちもとても楽しみですよ」


「はい!よろしくお願いします!」


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