第35話
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「さて、アーティどういたしましょうか?」
「ん?どうした?」
「いや、落ち着いたらお腹も空いたなと。でも、キースは私達の事を知らないですよね?自己紹介と朝食、どちらが先かなと思いまして」
「あ~そうだな。自己紹介しないとな」
忘れていた。今は別の身体なのだった。
さすがにこの状況で自己紹介をしない者はいないだろう。
だが、パーティを組むとなると自己紹介も時間がかかる。
という事でとりあえず先に朝食を済ませる事にした。各自が思い思いに注文し食べ進める。
キースは勧誘活動の前に食べていたのでお茶だけだ。
アリステアとクライヴは体も大きいので食べる量が多いのも納得だが、フランもなかなかの量だ。
(やはり体が資本だから食べる量も多いのかな・・・僕も大きくなりたいしたくさん食べよう)
3人が食べ終わりお茶を飲みながら一息入れる
「さて、どこでやりましょうな?」
「ギルドマスターに会議室でも借りられないか確認してみましょう。外で話す内容でもありませんし」
「そうだな、さすがにちょっとこの場ではな・・・」
パーティメンバーの細かい能力や特性、装備品等の込み入った話になる。不特定多数がいる場所では話せない。
ギルドに戻ると、ディックは(元)待合室にいた。ディックより少し若い男性と話をしている。
椅子とテーブルの話をしているところから、彼は木工工房の親方のようだ。
新しいテーブルと椅子の注文だろう。
話が終わるのを待っていると、ディックがこちらに気がついて寄ってきた。
「マスター、会議室を借りても良いか?ちょっと細かく自己紹介をしたいんだ」
「空いているから自由に使ってもらっていいぞ。おーいサイモン、会議室の鍵を開けてやってくれ」
「承知しました」
サイモンの後について、奥へ続くドアをくぐる。
入ってすぐ右の部屋の扉の鍵を開けた。
「どうぞ、こちらをご利用ください。今、お茶の用意をさせますので」
「お、ありがとう。いただこう」
(わざわざ自分で迎えに行くぐらいなのだから、重要人物なのだろうな・・・あのアリステアとも縁があるようだし)
サイモンは、ディックから、昨晩外出したのは彼らを門まで迎えに行ったのだと聞かされていた。対応はきちんとしておいた方が良いだろう。
他の職員がお茶のセットを載せたワゴンを運んできた。フランが引き継ぎ1人1人に入れ始める。
「さて、では私から行くか」
最初はアリステアだ。
年齢・身長・特性を説明する。
「アーティさんの武器を拝見してもいいですか?」
「アーティでいいぞ、とっさの時などは呼び捨てだろうからな。それに、私達はもう命を預け合う仲間だろう」
腰からショートソードを外しながら、茶目っ気たっぷりに笑う。キースはこういうベタなことに弱いのだ。
「そうですね!確かに!分かりましたアーティ!お二人もそれでいいですか?」
ショートソードを受け取り、笑顔で尋ねる。
「「もちろん!」」
(((あんなに目をキラキラさせて・・・くぅ~可愛い!)))
「ではちょっと失礼します」
鞘からゆっくり抜く。
長さは一般的なショートソードだが、キースが持つと片手剣ほどに見える
楽器のような、涼しげな澄んだ音が部屋に響く。
その青白い刀身に、キースが驚きに目を見張る。
「!? これ、ミスリルですか!」
「あぁ。少し前(46年前だ)に古代王国の遺跡でセットで見つけてな」
「この刀身には硬化と鋭刃化の魔法が付与されていますね・・・しかもかなり強い。ミスリル自体の純度も高いから、魔力を込めたらさらに切れ味が上がるでしょう。学院の、持ち出し禁止の倉庫にあるものより上だな・・・これは凄い」
(その学院にあるやつも、私が見つけて、付与魔術の教材が欲しいというので、格安で売ったんだ)
「あとはこれだな」
予備の短剣を渡す。
「これはまた、鞘のデザインが凝ってますね・・・切れ味もショートソードと大差なさそうです。骨ごと足を切られてもしばらくわからないのではないかな?」
(さすがにそれは分かった)
「まぁ、こっちは守り刀みたいなものだ。頂き物だからな。メインはやはりショートソードだ」
キースは納得したかのように頷く。
「防具は胸当て、篭手、脛当て、ですね。機動力重視の回避型の戦士、ということでよろしいですか?」
「そうだ。だが自分で言うのもなんだが、この体の大きさだからな。筋力も女にしてはあるし、なんと言っても武器が良い。単純に火力という面でもかなり高いと思うぞ」
「確かに・・・僕もアーティくらい大きくなりたいですね・・・」
その言葉に3人が大きくなったキースをイメージする。
アーティとクライヴは、(やはり小さい方が良いな)と思ったが、フランは(それはそれでありね)と1人頷いた。
急に深く考え込んでしまった3人を前に、不思議そうに首を傾げるキースだった。
「では、次は私ね」
フランが年齢・身長・特性を説明する。
(僕の方が少しだけ小さいな・・・)
「後、クライブとは夫婦よ」
「!? ゴフッオッホエッヘ」
不意を突かれたキースはお茶が変な方に入りむせた。アーティが背中をさする。
(そんなに驚かなくても・・・まさかフランの良いスタイルに気が引かれていたのだろうか・・・)
「し、失礼しました・・・って、フランは海の神様のお声を聞いたことがあるのですか!」
「最初はよくわからなかったけどね。子供だったし場所は神殿では無かったから」
「あぁ・・・」
(まぁ神殿以外の場所で子供では難しいかも・・・)
フランはあの時のことを思い出す。
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