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第338話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


ブチ切れたイングリットは、アルトゥールとキースになぜこうなったのかを説明させ、謝罪を受け入れました。


□ □ □


「それで……これからお2人はどうなさるのですか?人の姿で過ごされるのですか?」


「いや、それは無い。ワシらはとうの昔に死んだ身よ。今更公の場に出ようとは思わん。そもそも、依代の魔導具に入っていた目的も無事に果たせた。これで朽ちても構わんぐらいだ。のう、エヴァ」


「ええ、左様でございますね。精々、昔馴染みに挨拶するぐらいでは?委細アルトゥール様にお任せいたします」


(あらあら、お母様も随分と素直におなりだ事。まあ、25年も一緒にいればそうなりますか)


母の言葉に、澄まし顔はそのままに、リーゼロッテのテンションは上がった。


「……ですが、もう元の身体はありませんし、生きていらっしゃると分かっているのに、放置という訳にもいきません」


イングリットの眉が下がり八の字になった。


(髪型や色は違うのに顔のパーツは同じであるせいか、意外と母上を窺わせる瞬間もあるな。人の顔というのは不思議なものだ)


長男のゲオルグはやり取りを聞きながら考える。


「猫に戻るか、お好きな姿、お好きな場所で過ごされればよろしいのでは?まあ、今慌てて決める事も無いかと」


「確かにキースさんの言う通りですね。それに、生きていらっしゃるのであれば、聞いていただきたいお話も沢山ございます 。子供達もアンジェリカ以外は初めて会うのですし」


アンジェリカは今年27になる為会った事はある。とはいえ、最後に顔を合わせたのは2歳になる前だ。本人にしてみれば初対面も同然である。


「ほっほ。皆素晴らしくデキが良いと聞いておるよ。さすがは2人の子供達だの」


アルトゥールは隣のテーブルにいる、ゲオルグを初めとする玄孫(やしゃご)にあたる子供達を眺める。子供達は、在位60数年、ダンジョンを2箇所増やした元国王の前で、少々緊張気味だ。


「特に……そなたがジェラールだな?ちょっとこちらに来てくれるか?……ううむ、まさに瞳の色以外は若い頃のキースだの」


「はい、ここまで似るか、という程に似ていらっしゃって。懐かしゅうございますね。初めて会った頃を思い出します」


周囲を回られながら上から下まで眺められ、さすがにジェラールは恐縮しっ放しだ。


「ライアル、マクリーン、デヘント達も久しぶりじゃな。元気そうでなによりだ」


「ご無沙汰しております。まさかまたお目にかかれる日が来ようとは……夢の様でございます」


「ふふっ、何も言わんですまんかったな。皆も2人を支えてくれてありがとう。それに、ワシの願いもきっちり果たしてくれた。本当に、心から感謝する」


アルトゥールの願いとは、報奨の授与式の後、『イングリットを家族の一人として接して欲しい』という件だ。キースと婚約した事で、アルトゥール以外に血縁者がいなかったイングリットに、家族と親類ができた。


周囲にも頼れる大人はたくさんいたが、それらはあくまでも臣下である。身分差がある以上、家族ほど遠慮無しという訳にはいかない。


「そうだ、まだ礼を言わねばならん者がおった」


そう言いながら出入口の扉の方を向く。その視線の先にいるのは、イングリットの側仕え兼護衛である、マルシェとレーニアである。


いつもは少々の事があっても表情を変える事は無いが、そんな2人もさすがに意表を突かれたのか、軽く目を見張った。


「2人ともこちらへ来てくれ」


呼ばれた2人は、アルトゥールの前に並んで跪く。そのキレのある所作は年齢を重ねても変わらない。


アルトゥールはもう国王どころか人ですら無いが、近衛騎士団出身の彼女達にとってはそんな事は関係無い。どの様な存在になろうとも、イングリットと並ぶ忠誠を捧げる相手だ。


「マルシェ、レーニア、長年の務めご苦労であった。同性で歳の近いそなたらには、イングリットは多くの事で助けられたと思う。大人や男には言えん様な話も多くあったろうからな」


「もったいないお言葉、ありがとうございます。まだ歳若かった私共に、この様な大事なお役目を任せいただき、毎日が感謝の日々でございました。ありがとうございました」


「マルシェの言う通りでございます。イングリット様と過ごせた事はもちろん、近衛騎士団にいたままではできない経験も、数多くさせていただきました。実り多き人生を送らせていただき、感謝致します」


イングリットと一緒にいるという事は、キースがもたらした未知の魔法陣や魔導具、魔法を間近で目の当たりにしてきたという事だ。彼女達にとっても非常に刺激的な人生だった。


更には、2人のプライベートなやり取りも間近で見られる。イングリット大好き( もちろんキースの事も好きだが )な2人にとっては最高の職場である。


イングリットもアルトゥールの横に進み出ると、2人の傍らにしゃがみ込んだ。そして、そのまま2人の肩を抱く様に抱え込む。


「私は会ってすぐに、2人の事を歳の離れた姉と思う様になりました。2人がいてくれた事で、どれだけ安心できて心強かった事か。これからも一緒に過ごしていけたらと考えておりますけど、共に来てくれますか?」


「もちろんでございます!お望みならそれこそ地の果てまでも!」


(いとま)を告げられても勝手に着いて参りますので、どうかお覚悟ください」


女3人、笑顔で目尻に涙を浮かべて抱き合った。


□ □ □


イングリットと側仕え達が今後について盛り上がっている時、部屋に備え付けの『通話の魔導具』の呼び出し音が響いた。たまたま一番近くにいたシリルが受話器を取る。


「はい、こちら『白夜の間』、シリル。……ちょっと待って。キース、近衛騎士団の人達が執務室に来てる。約束があるって」


送話器を押さえながら振り返る。受け応えもその仕草も、明らかにマルシェ達の真似だ。


「はい、間違いありません。こちらに来てもう様伝えてください」


「わかった」


キースの返事にマルシェとレーニアが立ち上がり扉に歩み寄る。この状況で直接ここに呼ばれるという事は、ごく一部の幹部である。いくらイングリットから篤い信頼を得ているとはいえ、元上司達に先程までの様な姿は見せられない。『上皇后様のお気持ちに甘えている』などと言われかねないのだ。


(騎士団からは……騎士団長とかミーティアかな?私、この姿で大丈夫なのかしら……)


イングリットはキースとシリルのやり取りに疑問を抱いたが、考えはそれ以上続かなかった。


今日は『譲位の儀』だけでも大変だったのに、『人型の依代の魔導具のプレゼント』『アルトゥールとエヴァンゼリンが生きていた事』と、余りにも大きな衝撃を幾つも受けてきた。もう頭が上手く回らないのである。


すぐに扉が叩かれ、左右に立ったマルシェとレーニアが扉を開ける。部屋に入って来たのは3人の男女だった。


近衛騎士団の責任者である騎士団長を務めるボブ・ユンゲルス、魔術師部隊を仕切る副団長、ミーティア・イゼルビット、そして、前騎士団長のマテウス・ウル・クロイツィゲルである。3人ともイングリットやキースとは縁が深い。


3人はイングリットの前に跪き、代表してボブが長年の務めを労う挨拶を述べた。入室からの一連の流れには、イングリットの姿形が全く違うにも関わらず躊躇いも無い。


「ありがとうございます、騎士団長、副団長、マテウス殿。私が国を護ってこれたのは、間違い無く皆さんがいてくれたからこそです。私からも感謝を。そして、どうかこれからも、国民とアンジェリカの為によろしくお願いします……時に」


イングリットは一度言葉を切ると、3人を順に眺めてゆく。


「全く驚きも戸惑いもしていないという事は、3人は私と依代の魔導具の事について承知済みなのですね?皆さんは何時からご存知だったのですか?」


その声からは少し疲れも窺えた。自分に関わる秘密なのに、自分の知らないところで知っている人がいる。『またこの展開かよ』と思っているのだ。


「私とマテウス様が知ったのは、あの報奨の授与式の数日後でございます」


「はい。確か、呪文の講義に来てもらった時であったかと。王h……エクリプス公から相談を受けたのです」


「わ、私は今日の朝、団長とマテウス様に教えていただきました」


イングリットの様子を見てミーティアが慌てて返事をする。自分は内緒にしていた訳では無い、という点を強調しているのだ。


ボブとマテウスの返事に、イングリットが眉間に皺を寄せてキースを見る。『説明を』という視線だ。


「お二人に話したのはね、君に依代の魔導具で第二の人生を好きに生きてもらうという計画を、エストリアの貴族としてどう考えるか、それが知りたかったんだ」


マテウスは『四派閥』の一角を占めるエストリア屈指の大貴族の家に生まれ、ボブも王国初期から続く由緒ある伯爵家の出身と、2人とも生粋の貴族だ。


そんな2人が『その様な提案は前女王、王家、それを支える貴族に対し失礼である』と反対するのか、『良い考えだ』と賛成するのか。一般市民として育ってきたキースには、判断がつかなった。


実際には2人ともこれ以上無い程に賛成してくれた。その事はキースの迷いを消し、依代の魔導具の再現に向けての原動力の一つとなった。


「……なるほど。これだけ妻に対する秘密だらけですと、誰がどの話をどこまで知っているのか、把握しておくだけでも一苦労でございましょう。さすがは『万人の才』でございますねぇ」


新たに出てきた秘密に嫌味で返す。イングリットとしては、これぐらいは言わせてもらわないとやってられない。


「それにしても、恐れ多くも、可愛らしいお姿ですな!新米冒険者の魔術師、といったところでしょうか?」


「ええ!外見も素敵ですが、私としてはそのローブが大変気になります!どの様なお品なのでしょう?」


マテウスとミーティアによって話題が変わりそうになったが、その時横合いから声がかかる。


「おう、そなたら、久しぶりだの!元気そうでなによりだ!」


3人の動きが止まり表情が固まった。


ブックマークやご評価、いいねいただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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