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第331話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


屋敷の研究室で、『守護者』や『遺跡』の成り立ちについて、エレジーアやサンフォードと話しました。イングリットの心が不安定な事は心配ですが、女王と王配の最後の儀式である、『譲位の儀』は予定通り行われます。ですが、その前に何かある様で……


□ □ □


『譲位の儀』当日の朝、儀式参列者達は予定の時間より早く集まっていた。


2日前にイングリットから『10の鐘に集合して欲しい』という連絡が回ったのだ。


『譲位の儀』は11の鐘から開始とされていた為、大半の者は『儀式のリハーサルか?』と考えていたが、よくよく考えてみるとそれはおかしい。


参列者のほとんどは見ているだけである為、リハーサルに参加する必要が無いのだ。イングリットとアンジェリカ、そこに立会人役が1人いれば問題無く練習できる。


不思議に思ったキースも尋ねたが、『秘密です』と返され教えてもらえなかった。なので、これから何が行われるのか知っているのは、イングリット、アンジェリカ、国務長官のベルナルだけだ。


出席者である貴族、冒険者関係者、各会派の司教達は、それぞれの礼装に身を包みその始まりを待っていたが、イングリット、アンジェリカ、ベルナルが前に進み出て、高くなっている演壇に上がった。イングリットが演台に付き2人は左右の後方に控える。


皆の視線を集めながらイングリットが口を開いた。


□ □ □


【謎の儀式・イングリットの話】


皆さん、おはようございます。


私達は、遂にこの日を、『譲位の儀』を迎える事ができました。


本当に、漸く、といった感じでございますね。


そもそも、アンジェリカが25歳になったら、と考えておりましたのに、『大連合』騒動が起こり、2年先延ばしになりました。


先日も、あと少しと思いきや、北国境のダンジョンの件がありました。そちらも色々とございましたが、皆の尽力もあり、全て無事に解決できました。


これでようやく、心おきなく、アンジェリカに引き継ぐことができます。


おじい様から王位を引き継いで30年、本当に様々な事がございました。


この場で一つ一つ挙げたりは致しませんが、エストリアは対外的には周辺国の中心となり、人口は増え、国民の生活水準は金銭面も含めて向上しました。


これは貴族や一般市民、立場など関係無く、皆さんが力を発揮してくれた結果です。


この場にいない方々の分も含めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


……ですが、皆さんおかげと言いつつも、やはり、この方の活躍に言及しない訳にはいきません。


王配殿、私の前にお願いします。


まずは、30年という長きに渡り、王配という立場を務めて、いえ、もしかしたら『勤めて』というお気持ちでいらしたかもしれませんが、とにかく、私と共に励んでいただき、ありがとうございました……


……?あ、え、はい、どうぞ


□ □ □


女王陛下のお話を途中で遮るなどもっての他ではございますが、私としては看過できないお考え違いがございましたので、失礼させていただきます。


さて陛下、国王という立場は、私が今更言うまでもありませんが、国の支配者です。


エストリア国内にある物、人は陛下の所有物であり、やろうと思えばその全てを自分の自由に、好きにできる。


一見すると誰もが羨む立場です。よく『一国一城の主』などと言われますが、実際この立場を望む者は多い。


ですが、それは上辺だけで、実際にはそこまで良いものではありませんよね?


毎日毎日朝から晩まで、様々な予定と執務に縛られ、突発的な出来事が起きれば瞬時に判断を下し、指示を出さなければなりません。


見た目や能力、発言を常に評価され、陰口を叩かれながら生きてゆく。誰が好き好んでこんな人生を歩みたいと思うのでしょうか。


ですが、自分が惚れた女性が、そんな茨の道である事を承知で、この先数十年に渡りその道を歩むというのです。


さらに、本人から直々に請われ、自分にはそれを手助けできる力もある。


男であれば、それを意気に感じない者はおりますまい。


そもそも、冒険者である私が常に貴方のそばにいる為には、この王配という立場が必要です。ですから、貴方への気持ちを自覚した時点で、私にはお受けする以外の選択肢はなかったのです。


お話をお受けした事を母に伝えた際、こう言われました。


「今お返事をするとは思わなかったが、受けた事に驚きは無い。あなたはこの話をすぐに断らなかった。それは心の奥底で王配と冒険者を両立する方法を探していたからだ」と。


『勤めて』というのは雇われ働く、という意味でございます。今申し上げた通り、決して雇われた云々という話ではありません。時ここに至って何を仰るのか。


この30年、私は、陛下と共に歩んでこれた事、少しでもお役に立てた事を、誇りに思っております。


どうかお間違い無き様に。


そして、30年の長きに渡るお務め、お疲れ様でございました。


国中の誰もが、ご幼少の頃から励んでこられた陛下の事を称えております。


これからは、どうか心緩やかに、お好きな事をしながら生きて参りましょう。私もお手伝いを、と言いますか、ここからが私の本領でございますので、どうぞお頼りください。


お話中失礼致しました。


□ □ □


(キースの言葉に顔を真っ赤にし、潤んだ目を瞬かせる)


…………そ、そうですね、王配殿、大変失礼で、詮無き事を言いました。謝罪して発言を取り消します。


そうですね、わたくし、自分で言うのもなんではございますが、頑張りましたもの。


おじい様の60数年に比べれば半分以下ではありますけど、子供の頃からずっと。


そして、そんな私が最後まで頑張りきれたのも、王配殿、いえ、キースさん、貴方がいてくれたからです。


あの、影の兎の魔法陣を初めて見た時の衝撃、貴方の魔術学院の卒業式の後、一瞬ではありましたが、横顔を拝見した時のあの胸の高鳴り、面会の部屋に入って貴方が椅子に座っていた時の驚き、白銀級となった後、昼食会で私のドレスを褒めてくださった事、そして結婚の申し込みを受けてくれた時の事、どれも昨日の様に、ハッキリと憶えております。


……私が女王でなくなれば、私の夫であっても王配ではなくなります。


もちろん、『女王イングリットの王配』として歴史には残りますし、貴方の根本は冒険者ですもの。そんな些細な事は気にもなさらないでしょう。


ですが、私としては、それで終わりにしたく無いのです。


まだ女王でいる間に、30年間の貴方の頑張りをはっきりと刻みつけ、未来永劫語り継げる形にしたいのです。


そこで、少し考えてみました。


喜んでいただけるか分かりませんが、とりあえず話を聞いてください。必要無いというのであれば、そう仰って笑ってくださいね。


キースさん、貴方の30年の貢献に応えるべく、公爵位を授与致します。絶えてしまった家名を継ぐのでは無く、新たな家として。


そして、その家名を『エクリプス』と定めます。


よって、本日今この時より、公式の立場としては、キース・ロウ・エクリプス公爵、となります。


合わせて、冒険者としても、その家名をもって『エクリプス級』と定めます。


エクリプス、これが何を意味するか、勿論ご存知ですよね?


そうです、"かの国"のサイード王の肖像画の下に、必ず書かれているあの一文。


『Eclipse first, the rest nowhere』


意味は『唯一抜きん出て並ぶ者なし』


石力機構を世に広め、史上最大級の版図をもつ国を築きあげたサイード王、片や、古の魔法手順を復活させ、これまでに無い数々の魔法陣や魔導具を生み出し、人々の生活を潤したキースさん。


それ以外にも、クライスヴァイクの血を繋ぐ5人の子供達の父として。


私が愛する唯一人の夫として。


全てをひっくるめて、唯一無二の存在として。


まさに貴方にこそ相応しいと思うのです。


いかがでしょう?受けていただけますか?


……ありがとうございます。では、もう少し前へお願いします。


うふふ、キースさんの首に鎖を掛けるのも30年振りですね。あの時みたいにプレートが3枚重なったりはしていませんから大丈夫ですよ?


素材はこれ以上のものが無いので白銀なのですが、お名前や級、出身地、家紋は私が自分で刻みました。


出来はいかがですか?合格点はいただけますでしょうか?


え、きゅ、99点!?


そ、そんな良いのですよ?気を遣わなくても。正直に仰ってください……え、本当に?


……ありがとうございます。安心したら泣けてきてしまいました。


いつの日か100点をいただける様に、これからも努めてまいります。


キースさん、これまで本当にありがとうございました。


明日からの私達は、また新たな人生の幕が上がります。どうかこれからも、お互いに支え合いながら、命尽きるまで共に歩んで参りましょう。


改めて、よろしくお願いいたしますね。

ブックマークやご評価、いいねいただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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