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第324話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


大講堂に人々を集め、現状と対応手順を説明し、担当する役割を割り振りました。『縦穴を掘ってそこに石力炉を転送、爆発させる』という案に、皆口あんぐりです。


□ □ □


キースと『ナインティズ』は、セクレタリアス王国王都跡地であるクレーターの、中心に集合していた。


移動については、最寄りの街に送り付けた『転移の魔法陣』をクレーターの中心部に設置してもらい、王城から直接転移した。何と言っても王都から南西に約2000kmだ。転移以外での移動は考えられない。


「ハリーは各班の掘削範囲に合わせて範囲指定の魔導具を設置してください。マシューズはそれに合わせて班分けを。整ったらどんどん開始してください。僕はその間に製図局に行ってきますから」


そう言って、少し離れた地面に『物質転送の魔法陣』を広げる。


「製図局で受け取った魔法陣をここに送ります。穴ができあがるまで使いませんから、そのままにしておいて下さい」


「承知しました」

「かしこまりました」


返事をする2人に向けて一つ頷くと、キースは王城へと戻って行った。


□ □ □


最終的に、キースは縦穴の縦横を60mと定めた。外殻の縦横は約30m程である為、かなり余裕がある。


これは、穴を大きくし満たす水の量を増やす事で、より衝撃や爆風を吸収させ軽減させるのが狙いだ。いくら無人の荒野とはいえ、影響は少しでも減らしたい。


マシューズとハリーは、60m×60mの範囲を3等分し、それに合わせて『ナインティズ』81名も3班に分けた。


よって、各班27名がそれぞれ<地形変化>の魔法を使い、 20m×60mの担当範囲を深さ200mまで掘り下げるのだ。


「マシューズ、設置完了だ。何時でも良いぞ」


「承知した。それでは各班、始めてくれ!」


ハリーの報告を受けてマシューズが指示を出すと、それぞれの班の最初の1名が位置につき、土属性の呪文の詠唱を始めた。


<地形変化>の魔法の発動を受けて、地面に差した範囲指定の魔導具が薄青い魔力光を放つ。

魔術師達は、交代しながら繰り返し魔法を発動させ、時には魔力回復のポーションを飲みつつ、縦穴を掘り進めていった。


□ □ □


国務省製図局に赴いたキースは、建物前の広場で責任者である局長と合流した。


「お疲れ様です。ちょうど今できあがったところです」


局長の足下には何やら長細い物が2本置いてある。


それは巻かれた状態の布であった。布の生地や絨毯を扱っている商会でよく見掛ける、立て掛けてあるアレだ。


キースは、製図局に石力炉を転送する為の大きな『物質転送の魔法陣』の作成を指示したのだ。


部屋などに設置してある『物質転送の魔法陣』なら送り先を指定できるが、屋外でその場から送る時は、『転移の魔法陣』同様、今も2枚1組での運用である。その為2枚作らせたのだ。


「外で広げると伺いましたので、念の為布は破れにくい麻を用いました。繊維が長く丈夫ですので」


「……自分で頼んでおいてなんですが、よくこの短時間で作り上げましたね。特にこんな大きな布なんて、どこで見つけてきたのですか?」


「友人の実家である、服飾を扱う商会に駆け込みました。王配殿下もご存知の、ユーコのボントレガー商会です」


「ああ、なるほど。あそこなら間違いない」


ボントレガー商会は、服飾関連では王都でもトップの商会だ。かつては、離れた3番手という位置づけだったが、省庁の制服など、国との取引を重ねここ数年で頂点にたった。


「魔法陣の動作確認はこちらでもいたしましたが……どうされます?」


局長はそう言ったが、そもそも、『転写の魔法陣』でサイズを拡大して張り付けて作るのだ。手描きでは無いのだから、間違いがあろうはずが無い。


「君が作って確認してくれたんでしょう?なら大丈夫」


笑顔を見せたキースに局長も笑顔になるが、その笑顔はどこか残念そうだ。局長はそっと辺りを見回し、周囲に誰もいない事を確認する。


「……話聞いたよ。せっかく見つかったのに残念だったね」


「うん……みんなの手前聞き分けの良い事言ったけど、正直、今もめちゃくちゃ惜しいとは思ってる」


「やっぱり。そんな顔してるもの。でも、そりゃそうだよね、30年探していたものを自分で壊さないといけないのだもの。よく決めたよ」


「まあ、爆発した時どこまで影響あるか分からないし、王都をあのクレーターみたいにする訳にもいかないから。ついてなかったとしか言いようが無いね」


2人同時に、大きな溜息を吐く。思わず顔を見合わせ笑顔をみせた。


「よし、時間もあまり無いからやっちゃおう」


キースは地面に『物質転送の魔法陣』を広げると、そのまま布を転がし魔法陣に載せ転送した。さらに、別の『物質転送の魔法陣』を取り出し、もう一本も同様に転送する。


「よし、それじゃ行ってくるよ。急な対応ありがとう、リリア」


「うううん、こちらこそ……キースなら大丈夫だと思うけど、本当に気を付けて」


「ありがとう。ほら、別の石力機構を見つけに行かなきゃいけないから。こんなところで止まっていられないんですよ」


キースはおどけながらそう言い残し転移して行った。だが、姿が消えた後もリリアはしばらくその場から動けなかった。


(何がどうだという訳では無いのだけど……)


破壊を決めてからここまでの計画立案、人員や資材の手配、全て順調であり非の打ち所が無い。


(こんなかつて無い状況だというのに、全てがすんなり進み過ぎの様な気もする)


どうにもその考えが頭から離れず落ち着かない。


地面にそのままになっている魔法陣を拾い丸めながら、再び、今度は1人で大きな溜息を吐いた。


□ □ □


かたや、場所は石力炉が収まっている外殻前。


こちらには男2人、女2人の計4人の姿があった。冒険者と思しき男女と魔術師の男女だ。


赤い警告灯は今も点滅を続けており、周囲の設備を赤く照らしている。同様に、状況確認を促す声も流れ続け壁や天井に響いている。


4人のうち冒険者の男女が小声で話をしている。顔を寄せ合い、かなり親しげな様子だが、距離が近いのは放送がうるさいというのもあるのだろう。


「どうだ、調子は?」


「はい、とても良いですね。それに、こう、何と言うか……」


「気分も上がってくる、か?」


「ええ、まさにそれです。これは癖になりますね」


「そうだろう。みんなそう言うんだ。もちろん私達もそうだった」


アリステアは我が意を得たりとばかりに、ニヤリと笑った。


配管を切る役目を任された2名の冒険者というのは、アリステアとこの男性冒険者だった。


「そういえば、そのグレートソードは初めて見ますが、やはり地下の倉庫にしまってあった物ですか?」


アリステアの肩口から覗く柄を指さす。


「ああ、なんと言っても配管の径が大きいからな。いつもの片手剣より刃渡りが長い方が良いと思ったんだ。両手持ちの大剣なんて、一生出番は無いと思っていたが……」


これだけ大きいとダンジョンや屋内では振り回せない為、屋外で大規模な野戦を行う様な時でなければ、使い所が無い。


アリステアは、紐でたすき掛けに背負っていた大剣を身体の前に回すと、両手で持ち上げ身体から抜き、そのまま男へ渡す。


普通に腰に吊るすと先端が地面に着いてしまう為、背負って持ち運ぶのだ。さらに、腕より剣の方が長い為引き抜く事もできない事から、使う時には鞘を固定している留め金を操作し、パカりと2つに分解するのだ。


男は慣れた手付きで留め金を操作し鞘を外すと、片目をつぶり目の高さで水平にしたり、垂直にして見上げたりと、様々な角度で眺める。


「どうだ?お前のバスタードソードにも劣らないと思うが」


「確かに。素材は黒鋼ですから、いつもの白銀製の片手剣には劣りますけど、これも素晴らしいですね。魔法陣による付与も幾つもされてますし」


鞘を取り付けると、アリステアの後ろに回って大剣を背負わせる。


「時に……あれはどうします?」


男は眉間に皺を寄せながら視線をずらした。その先には、魔術師の格好をした少年が、何やら思い詰めた表情で、壁を背に座り込んでいる。


第二王子であるジェラールだ。


「ふむ、放っておく訳にもいかないか……」


「お、彼女がいってくれるみたいですね」


「正直助かるな。こういうのは身内があれこれ言うより、他人の方が良い場合が多い」


「確かに。同じ魔術師同士ですし、話も早いかもしれません」


「ああ。だが、もし駄目そうなら私もいこう。さすがに、自分の曾孫を任せっぱなしというのも気が引けるからな」


顔を見合わせ頷き合うと、さり気なく親子ほど違う(キースと一歳違いなのだからそりゃそうなのだが)2人の魔術師の様子を窺い始めた。


□ □ □


「殿下、緊張していらっしゃいますか?」


「いえ、何と言うか、緊張とは少し違うと思うのですが……」


ジェラールは、ミューズの声掛けに眉間に皺を寄せつつ笑顔をみせた。中々に器用である。


「なぜ自分なのだろう、とお考えなのですね?」


「……正直言ってその通りです。確かに対象物は大きいですけど、僕なんかでなくとも、もっと上手にできる方はいらっしゃるでしょうに」


目を閉じて大きな溜息を吐く。


(……本当に自己評価が低いわよね。周りの方は何も仰らないのかしら?それとも自分で気付いて自覚して欲しい、という事?)


ミューズは目の色以外キースに瓜二つな横顔を見つめる。


ミューズは、正直、同じ魔術師というだけで赤の他人である自分が、家族も言わない込み入った事を話題にしても良いものか、判断をつけかねていた。


だがそうも言っていられないのだ。


今は国の存亡が掛かったぉ作戦行動中である。特に、自分とジェラールは絶対に失敗できない。


魔法は、集中し、イメージし、正確に『呪文』を唱えなければならない。にも関わらず 、1人は迷って塞ぎ込み、もう1人はそれを気にかけている。こんな精神状態ではできるものもできなくなってしまうだろう。


(仕方がない。時間も無いし上手くいくか分からないけど、やってみましょう)

ブックマークやご評価、いいねいただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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