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第321話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


『石力機構』の施設の中で、石力炉の不具合解消の為に皆で奮闘中です。初めて見る巨大な施設が相手ですが、果たして結果や如何に……


□ □ □


弁を開け石力炉の中の石力を流した後、キース達は休憩を取りつつ状況を見守る為、一角にあった部屋へと入った。


そこは石力炉に面した壁がガラス張りになっており、

それ以外の壁際には、小さい照明が幾つも付いた操作盤の様な設備があった。


その設備には、炉内にある石力の量だけでなく、石力水が水槽から注入されている量、炉で精製された石力が貯蔵施設に流れ込んでいる量が表示されていた。


明らかに、石力炉の監視を行う為の部屋と分かる。


「それではおばあ様、今のうちに状況を説明してきます。良くならなかったらさらに対応をしなければなりませんからね」


「ああ、分かった。その時になってから言うより、予め伝えておけば慌てずに済むしな」


キースはアリステアの返事に一つ頷くと、床に『転移の魔法陣』を広げ転移した。


□ □ □


キースが執務室に入ると、イングリットとアンジェリカ、補佐官達は、ちょうど午後のお茶休憩をしているところだった。


入ってきたキースに気が付き立ち上がるが、固い表情に気付き、軽く目を見張ったり、眉間に皺を寄せたりと様々な反応をみせる。


「おかえりなさいませ、キースさん……どうされました?」


「うん、ちょっと待ち時間ができたから途中経過の報告にね」


「父様、国務長官も呼んだ方がよろしいのでは?この後面会の予定になっている様ですから、今ならお部屋にいるかと」


アンジェリカは手に持った紙に目を落としている。国務長官の今日の予定表だ。


「あ~、そうだね。来られるならぜひ」


キースの言葉に、アンジェリカの友人であり腹心(兼護衛兼補佐官)のアネミエクが『通話の魔導具』へと歩み寄り、受話器を取った。


キースが腰を下ろすと同時に、レーニアがキースの前にお茶を置く。一々言わなくとも全てが整っていくのが女王の側仕えである。


国務長官であるベルナルは、キースがお茶を2口、焼き菓子を1つ摘む間にやってきた。いくら隣の隣の部屋とはいえ、さすがに早い。


「お待たせしました。おかえりなさい、キース」


「いや、全然待ってないし……急で悪いね。では、良い事、あまり良くない事、色々盛りだくさんだから手短にいくよ」


皆が改めて席に着き、キースが説明を始めた。


□ □ □


・街はやはりセクレタリアス王国の王都であった。

・街には特に大きな発見は無かった。

・王城の最深部、国王の執務室と私室に転移の魔法陣が隠されており、執務室から石力機構の施設に転移した。

・施設には大量の石力水が貯蔵されており、石力炉の内部には精製された石力が溜まっていた。

・石力炉に絡む異常が発生した為、できる対処を行い、不具合が改善するか様子をみている。

・現時点までで魔物の姿は見ていない。


□ □ □


「という状況になります」


「凄いですね父様!大発見ではございませんか!」


アンジェリカが胸の前で両手を合わせ、アネミエクと頷き合う。


「ですが、その不具合は気になるところだ。何とか解消してくれれば良いが……」


「ええ、せっかく見つけたのですから、存分に調べて欲しいですもの。それにしても、転移の魔法陣までも作っていただなんて……さすがは、石力機構を生み出した一族、といったところでしょうか」


イングリットはお茶を一口飲むと、カップをローテーブルに戻し小さく溜息を吐いた。


その時、再び続きになっている部屋の扉が開いた。皆の視線を受けながら姿を現したのは、フランとその肩に載ったサンフォードである。


それを見たキースの眉間に皺が寄る。部屋で待っている2人がわざわざこちらに来たのだ。良い話であるはずが無い。


「フランおば様!サンフォード先生!」


「お疲れ様イーリー、皆さん。話は聞いたと思うけど、あまり良い状況ではありません。そしてもう一つ、良くない知らせが増えました」


「キース、例の警報なんだがな、消えんのだ」


「それは…」


「炉に流れ込んでいる石力水はゼロだし、炉内に溜まっていた石力も流れていった。それは操作盤の示す数値にも現れているから間違い無いだろう」


サンフォードがフランの肩から飛び降り、室内を横切る。そしてそのままキースの肩に飛び乗った。


「石力炉の機能は停止していると言っても良い状態だが、なぜか警報が消えん。理由は分からん」


警告の内容は、『石力炉内の、石力の値が安全基準を超えている』というものだ。材料の補充がされていないから新たに作られる事は無いし、作られた石力は炉から無くなった。この状況でなぜ解消されないのか。


「キースさん、この不具合が出たままだと、どの様な事が起きると考えてますか?」


「……はっきりした事は何も言えないのだけど、もし石力炉自体が爆発するなんて事になれば、"かの国"の王都と街が消し飛んだ爆発、あれより大きな被害が出ると思う」


「……え?」


「なんと言ってもダンジョンの深層域だからね。濃い魔素が満ちているから。間違いなく範囲10kmでは済まないかなと。正直見当もつかない。50km、100kmかもしれない」


イングリット達は言葉を失った。


彼女らは、キースが慌てている様子を見せなかった事もあり、『不具合』をそこまで重大なものだと考えていなかった。


キースが一見のんびりしている様に見えるのは、弁を開け閉めし数値が下がるかどうか、それ以外に取れる手段が無いからだ。今更ながらそれに気が付き顔色を悪くする。


「サンフォードさん、もしや……警報が出ている事自体が不具合、という可能性もあるのでは?」


「それは、実のところ、石力炉に異常など何も無い、という事か?」


「はい」


「かもしれんが……その考えに基づいて動くのは怖いぞ。確証も何も無いからな。正直、私は楽観的に過ぎると思う」


「父様、まさか『それなら施設の研究できるし』なんてお考えなのではないでしょうね?」


「ちょ、ちょっとアンジェリカ!いくらキースさんとはいえ、そこまでは……え、大丈夫、ですよね?」


「……もちろん大丈夫です」


「……父様、どこを見ていらっしゃるのですか?あらぬ方を見るのでは無く、こちらを向いて私の目を見てください?」


「キースさん、まさか……」


「やだなぁ2人とも!いくら30年以上探し続けてきたとはいえ、爆発したら皆死んでしまうのですよ?そんな状況では研究も何も無いというもの。さすがの僕もそれぐらいの分別はありますよ!?HAHAHA」


何やらわざとらしい言い訳に、部屋の中は微妙な空気に満たされた。キースを見るアンジェリカの目は針の様に細められ、その視線は頭を針山にできそうな程に突き刺さっている。


「あ、あー、もう良いか?話を戻すぞ?恐らくなんだが……警報が消えないのは、ダンジョンの深層域というのも理由かもしれん」


「ほ、ほほう!?それはまたどういうお話でしょう?」


キースはサンフォードの意見という形の助け舟に飛びついた。さながら、川で溺れそうになっている人に投げられた浮き輪である。


「ほれ、石力炉を覆っている外側ですら、魔力過多で飽和状態になっているだろう?そうなってしまったのは、溜まった石力と濃い魔素、両方の影響を受けたからなのではないだろうか」


「確かに、"かの国"で稼働していた時は、施設はダンジョン内にあった訳では無いでしょうからね。想定外の環境での使用に伴う不具合、という事かな……」


キースは腕を組んで目を閉じた。


「よし、あれはもう諦めましょう」


静かだが力強い宣言に皆が息を呑んだ。


「もちろん惜しいですよ?ですが、不具合の原因が『ダンジョンに存在している事』では、もうどうしようもありません。今この時より、石力機構は爆発する可能性がある危険な建造物とします。処分する方向で対応を開始しましょう」


「父様……」


アンジェリカも言葉が続かない。


つい先程まで詰め寄っていたが、あんなものは予定調和の茶番である。アンジェリカのフリにキースとイングリットが乗っただけで、父親が本気で国と国民の命を、研究との天秤にかけているなどとは思っていない。


「そもそも、自分が生きている間にダンジョンで再構成されたこと自体、とんでもなく幸運だったんだよ。元々は一から全部作り上げるつもりだったのだから。細かいところまで調べる事はできなかったけど、雰囲気は掴めた。間違いなく先に繋がる」


(……そうよね。後に引きづらない為にも、自分に言い聞かせて、思い込ませるのは大事だわ)


フランは少し下がった位置からキースの横顔を見つめる。フランは、キースが気持ちに整理をつけようとしている事を、きちんと把握していた。


「それに、さっきのサンフォードさんの言葉で気が付いたのですが、外側があの状態にまでなっているという事は、内部の石力炉本体はかなりまずいのでは?」


「私達が思っている程余裕は無いかもしれないのですね……ですが、具体的にどういたしましょう?恐ろしく大きいのですよね?」


そう、場所は地面の下であるダンジョンの深層域で、相手は巨大な『ビル』状の建造物と石力炉本体だ。片付けるにしてもどうすれば良いのか。


皆は顔を見合わせ、目を閉じて考えているキースを見つめる。


「……一つ思い付きました。説明しますので、おばあ様達にもこちらに来てもらいましょう」

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お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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