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第304話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


キースに『依代の魔導具』を再現する理由を尋ねたアンジェリカ。キースが明かした、イングリットにも伝えていないという理由に驚きを隠せません。ですが、その目標達成に協力すべく、自分の目指す先を決めました。そして月日はさらに流れます。


□ □ □


「本日は以上で終了といたします。皆さんから出していただいた提案を精査した後、一度回覧いたしますので、もしこちらの解釈が趣旨と違う、などがあれば教えてください。では解散いたしましょう」


そこで言葉を切ると、すぐ傍に座っていた男性、国務長官に向けて一つ頷く。


その意を受けた国務長官は立ち上がり、気を付けの姿勢を取ると、一度呼吸を整える。


「女王陛下、王配殿下、アンジェリカ王女殿下、ご退室!一同、起立!」


その、部屋の空気を切り裂くかの様な号令を受け、出席者が一斉に立ち上がる。その音は僅かなズレも無く、完全に一つに聞こえた程だ。


「女王陛下、王配殿下、アンジェリカ王女殿下に対し、礼っ!」


今度は右膝を床に着け、右の拳を左胸に付けながら姿勢で跪く。目線は床だ。


皆の礼に笑顔で一つ頷くと、女王は王配のエスコートを受け扉へと進んで行く。3人の姿が廊下へと消えると扉は閉じられた。


「ご退室されました。皆さんご起立ください」


出席者達は国務長官に促されて立ち上がると、大きく息を吐いた。大抵の者は改めて腰を降ろし、背もたれに深々と寄りかかったり、目を閉じて脱力したりしている。緊張が解け、知らぬうちに疲れがずっしりとのしかかっていたのを自覚したのだ。


彼らはいわゆる国務大臣と、それに付随する関連部署の責任者達だ。


国という組織の中での立ち位置としては、頂点の3人から、たった一段、二段下にいるだけであり、この様な会議だって何度も経験している。


そんな彼らであっても、女王と王配、次期王位継承者である王女が揃って出席する会議というのは緊張する。


女王とその家族達、いわゆる『王族』は独裁者でも無いし、無体な事ばかり強いる事も無い。にも関わらず、会議ひとつで彼らがそこまで気を張っている理由は『畏れ』と『敬愛』だ。


国務大臣や官僚達は、彼らのすぐ下にいるからこそよく分かる。


この3人が、国を運営する為に必要な能力を、非常に高いレベルで身につけている事に。


例えば、計画や時間、手順の管理、情報の収集、相手を心から納得させる説得力、他人に合わせる協調性(王族という最高権力者であるというのに!)、慎重でありながらもスパッと決める決断力、どれも普通では無い。


位としては一段、二段下であるだけなのに、そこには生まれ以外の、永遠に埋まらない絶対的な差があるのだ。


女王は唯一の王位継承者として、未成年の頃から執務に携わり、30年以上に渡り最前線で国を切り回してきた。


公私共に女王を支える王配も、ある意味女王を超える傑物(怪人物?)だった。周囲とはまた違った視点で意見を述べ、提案し、その独特な感性で多くの気付きを与えてきた。そして、若い頃からその卓越した魔法に関する技術で、国の発展の先頭に立ってきた。


その余りの勢いに、『首根っこを引っ掴んで驀進してきた』と言い換える人もいるだろう。


今や、彼が一般市民出身の冒険者なんて事は誰も気にしていない。その圧倒的な実績と能力の前では、そんな指摘など何の意味もなさない。


そんな2人に育てられた王女も、また特別だった。14歳にして堂々と、『次の王位を目指す』と宣言し、両親や国務長官、補佐官らに習い励んできた。なんなら、今すぐにでも後を継げる程に至っている。


それに、彼らには人として『品』がある。まさに『人品骨柄卑しからず』を地でいく存在なのだ。


最高権力者であるのだからただ命じれば良いのに、彼らはそうはしない。如何に話せば相手が気持ちよく仕事に望めるか、そこをきちんと理解、把握し実践している。


真に貴顕なる存在は一々偉そうな態度などとらない。そういう存在になりたがる、少し社会的地位が高い者こそが偉そうに威張り散らすものだ。


出席者にしてみれば、そんな、権力と能力、為人まで備えた人達が揃っている会議で、下手を打つ訳にはいかない。その場で指摘される事は無いかもしれないが、内心ダメ出しされ、『あいつは交代も考えないと』と、見限られてしまうかもしれないのだから。


そう、この場にいる者達は、全員が王族の事を心から敬い、その身を案じ、この人達に褒められたい、認められたい、喜んで欲しいと思っている。それ故に、失敗できない、したくないと会議の度に(もちろん通常業務でもだ)気を張っているのだ。


その圧倒的な能力と実績、人間的魅力から、ほぼ全ての国民に畏敬の念を抱かれ、敬愛を捧げられる存在。


それが、女王イングリットと、その王配であるキース、次期王位継承者である王女アンジェリカ、それに続く王子達という存在であった。


□ □ □


会議室を退室し、イングリット、キース、アンジェリカは、そのままイングリットの私室に入った。


「……お疲れ様でした。とりあえず一息入れましょうか」


イングリットに促され、それぞれ席に着く。


リビング風の応接セットに掛けるのとほぼ同時に、お茶とお茶菓子が並べられる。いくらベテラン揃いの側仕えしかいないとはいえ、このタイミングはさすがにタネがあった。


王城内で警戒している全ての騎士、魔術師、一般兵士らには、相互通話が可能な『通話の魔導具』が配布されており、王族の私室がある区画の入口に配置している騎士達から『女王陛下(王配でも王女でも王子でも良い)通過』という連絡が入るのだ。


そこに加え、王城内に限り、王族達が身に付けている装身具に付けられた魔石を感知する事で、位置情報をモニターしている。


それらにより、部屋側で待機している側仕えらは、会議の終了から移動時間を逆算し、最適なタイミングでお茶を淹れられる様に準備を整える事ができるのだ。


「失礼いたします。国務長官がお着きになりました。ご案内いたします」


お茶とお茶菓子だけでなく、アンジェリカの利き茶も楽しんでいるところにマルシェの声が響く。すぐにレーニアに先導された国務長官が姿を現した。


「お寛ぎのところお邪魔いたします。皆さん、先程はお疲れ様でした」


「国務長官こそお疲れ様でした。どうぞゆっくりしてください」


「はい、失礼します」


1人掛けのソファーに腰を降ろすと、やはり即お茶が出てくる。基本的に、国務長官は会議の後に女王や王配の所にやって来る。その為、全ては来訪を想定して整えられているのだ。


「……ターブルロンドのウェイティスの茶葉ですね」


「お、さすが国務長官!お気付きになると思っていました。……ウェイティスの茶葉で淹れたお茶を飲むと、いつもあの時の事を思い出すんですよ」


「ふふ、私もです。懐かしいですね」


キースと国務長官は笑顔を見合わせる。


「今日もそのお話をされましたね。キースさんも国務長官も、ウェイティスのお茶を飲むと必ずその話をするのですから」


「本当に。……でも母様、そういう昔馴染みというか、若い頃から知っている人がそばに居てくれるのは心強いですよね。私もアニーの事は頼りにしていますし」


アンジェリカ言うアニーとは、アネミエク・ウル・リンデンタールの事だ。リンデンタール侯爵家の当主の次女として生まれ、アンジェリカの1歳年上の26歳。10代半ば、アンジェリカが『王位を目指す』と決める前からの友人である。


リンデンタール侯爵家といえば、かつて、アルトゥールの姉であるクローディアが嫁いでいった武門の家だ。アネミエクもその家名にたがわぬ腕の持ち主だが、彼女は頭も兼ね備えている。その為、執務室では補佐官として仕事をしつつ護衛も任されているという、文武両道の女傑だ。


「あの時王配殿下には、」


「おっと、今は会議中ではありませんよ?いつも通りでお願いします、ベルナル」


「……これは失礼。あの時は、キース達に本当に助けられましたからね。少しでも遅かったらどうなっていた事か。今でも夢に見る事がある程です」


そう、現在の国務長官は、ベルナル・ウル・ヴァンガーデレン侯爵が務めている。


『北国境のダンジョン』の管理官を務めた後、国務省転移局に異動となったベルナルは、『転移の魔法陣』の運用に絡む計画を立案し、各街の代官との折衝と『転移所』の設置に伴う現地指揮を担った。その後も転移局局長、国務省次官と順調に実績を積み、ティモンド伯爵の後を受け国務長官に就任した。


だが、この人選は若干物議を醸した。


『国務長官という国の中枢の一角を担う役職を、中2人で再びヴァンガーデレン家の人間が務めるのはアリなのか?』という意見が出たのだ。


エストリアは長い間『四派閥』が事前調整を行った上で推薦する事で、特定の家、派閥ばかりが有力な役職を占めない様にバランスを取ってきた。その点からすると、この意見はもっともではある。


だが、街の代官程度(それでも一つの街の最高責任者なのだから、決して軽いものでは無いが)ならまだしも、国務長官である。政治的立場では女王と王配に次ぐ存在だ。能力、人格、家格、全てが備わっていると皆が認める人物でないと、務めを果たすのは難しい。皆で公平に回しましょう、なんて言える役職では無いのだ。


実際には、ベルナルが上記を全て満たしている事と、イングリットとキースの推薦もあり、それらの意見はすぐに聞こえなくなった。結局のところイングリットらが希望すれば、それが最優先である。


より近い距離で仕事をする様になったキースとベルナルは、これ迄以上に友誼を深め、他人の目が無い場所では、お互い呼び捨てで呼び合う様になった。


そして、エストリア王国は今、大きな転換点を迎えていた。


それは、後の世では『大連合』と呼ばれる。


キース48歳、イングリット46歳、アンジェリカ25歳、ベルナル54歳の時であった。

家庭内コロナ陽性患者発生に伴い、更新に遅れが生じておりましたが、無事復帰いたしました。


皆さんもどうかお気をつけてお過ごしください。


お話は時代も進み最終段階に入りつつあります。どうかこれからもご愛顧よろしくお願いいたします。

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