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第272話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


秋の収穫祭最終日、祝賀会の日となりました。何も知らないまま馬車で運ばれて行くライアルとデヘントのパーティ。アルトゥールは収穫祭最終日恒例の、一年を振り返る講話に臨みます。


□ □ □


《アルトゥールの講話》


おはよう国民諸君。


朝晩だいぶ肌寒くなってきておるな、体調など崩しておらんか?季節の変わり目だからな、くれぐれも気を付けてくれ。ふっ、皆の顔を見ると、一番気を付けるのはお前だよ、と思っていそうだがな。


収穫祭も今日で最終日だが、ここまで楽しめただろうか?今年は最後まで天気にも恵まれ何よりだった。


今年は春以降大きな動きが幾つも、数えると……4つあった。その辺りと、説明しきれていない事について、少し詳しく話していこうと思う。良ければ聞いて行って欲しい。


そうだ、その前にな、この収穫祭が一日延長された事だ。


そもそも、何故急にこんな事になったのか、なのだが、理由は後で話す事にも関わってくるのでな、その時に一緒に話す事にする。出店している者、その調整に動いた職員達、急な話で済まなかった。全員に礼を言う。ありがとう。


では1つ目の話題だが、新しい魔法陣についてだ。


国務省の製図局から、これまでに無い、画期的な魔法陣が発売される事になった。


『転写の魔法陣』と『反発の魔法陣』というのだが……正直、名前だけではピンとこないであろう?今実際にやってみせるのでな、よく見ておれよ。おう、誰か魔導具を動かして手元を映してくれ……少し近いな、うむ、それで良い。


まず、文章が書いてある紙を魔法陣の上に乗せ起動させる、よし。次に、何も書かれていないまっさらな紙を魔法陣の上に乗せ、再び起動すると……どうじゃ、たったこれだけで書類の複製ができた。


凄いであろう?慣れると鐘一つの間に100枚は作成できるという。既に各省庁で使われておるのだが、評判はすこぶる良い。絶賛と言っても良い程だ。


申請書や報告書などな、決まった型式で最初に1枚作ってしまえば、後は作成し放題となるからな、記入漏れなどの確認や管理の負担が減る。書類仕事が多い者は、仕事の効率化に持ってこいじゃ。


続いてもう一つ、こちらは『反発の魔法陣』という。これも変わっておってな。見ての通り上にある魔法陣は浮いておる。これが名称の由来だ。だが、この通り、逆さにしても落ちはしない。反発しつつも魔力で結びついておるのだ。


では、これを一体どう使うのか?色々活用できると思うが、今のところ馬車に用いておる。御者の席や箱部分と骨組みが接する箇所に貼るのだ。そうすると座席や箱部分が宙に浮く事になる。浮いて接しなくなるとどうなる?そう、揺れや突き上げが伝わらなくなるのだ!


今この場にいる者で、馬車に一度も乗ったことがないという者はほとんどおらんと思う。短時間ならまだ良いが、長時間の乗車はどうしても身体のどこかしらが痛くなってくるであろう?そこまでいかなくとも疲れもするしな。


その原因である揺れが全く無くなるのだ!『転写の魔法陣』と同じぐらい、非常に有用な魔法陣と言えよう。王城の馬車には既に付いているが、本当に快適じゃ。ぜひ皆も体験して欲しい。


どちらも間もなく販売開始となる。在庫は大量に用意してあるからの。慌てず騒がず購入に来てくれ。


ちなみに、『転写の魔法陣』が1枚あれば、幾らでも複製が作れるではないかと考えた者がおるかもしれんが、それはやめておけ。


『転写の魔法陣』を使って『転写の魔法陣』と『反発の魔法陣』の転写はできん様になっとる……転写転写と分かりづらいな。


ん?なんだイングリット?……これでやって見せろという事か?よし、皆もよく見ておれよ……ほれ、見たか?2枚とも煙になって消えてしもうた。もう戻せん。せっかく買ったのに、ズルをしようとするとこうなるのだ。手書きでのトレースにも複製対策がしてあるらしい。労力の無駄らしいからな、素直に買った方が早いぞ。


よし、それでは2つ目だ。


国務省内に新しい部署を作った。『転移局』という。


そう、転移だ。瞬間的に人が別の場所に移動するというアレだ。……おいおい、何だその『ジジイ遂にボケたか』みたいな目は。信じられんのも解るが、ワシはまだボケとらんぞ?本当に人が移動するのだ!実際に、『北西国境のダンジョン』の供用前に視察に行ったのだからな!王女と国務長官と一緒に!これも今やってみせるからの。よう見ておけよ?


これも基本二枚一組でな、一枚をワシの足元に置く。もう一枚は端に立っている王女の足元に置いてある。


ではいくぞ?一瞬だからな?瞬き厳禁じゃ……ほれ、どうじゃ!移動したであろう?これが『転移の魔法陣』じゃ!数百年に渡り数多の魔術師が作成に挑んだが誰にも成しえなかった魔法陣である『転移の魔法陣』。人々の長年の夢と言っても過言ではない。それを我らは手に入れる事ができたのだ!


だがの、この魔法陣は運用が非常に難しい。皆もすぐ気が付くと思うが、魔法陣さえ設置してしまえば、勝手に他人の屋敷や敷地に出入りできてしまう。何がしかの犯罪を犯した後、転移で逃げるとかも可能だ。


よって、『転移の魔法陣』については、基本国で管理する事とする。この先、先程の問題が解決すれば民間に委託する事もあるかもしれんが、それまではできん。世の中が混乱するだけだからな。


さらに、運用方法や法律の改正なども行わなければならん。なのでな、先にダンジョンで使おうと考えておる。地上から直接ダンジョンの中層、下層、深層に転移をする。目的の層への移動時間はかからんし、疲れていてもすぐに地上に出られる。より安全に効率良く探索ができる様になるだろう。


行先はダンジョン内のみ、冒険者は冒険者証があるからな、本人確認もしやすい。それで実際運用してみてどんなものか見てみたいと思うておる。実証実験というやつだな。


実際に街と街の間を移動するという様な、日常的に使用できるのは、もう少し年月が掛かるだろう。こういうのは慌てても碌な事にならんからな。もう少し待っていてほしい。


ふう、それでは3つ目だが、今年は農作物以外にも大きな収穫があった。そう、『北西国境のダンジョン』だな。先日、現場で長年対応した者達に対し、報奨を与えた。伯爵であったメルクスが侯爵になったり、数十年振りに金級や白銀級の冒険者が誕生したのは、皆も知っての通りだ。


だが、何故確保までに4年半も掛かってしまったのか、という説明ができておらん。今まではまだ対応中であったのでな、あまり迂闊に話せんかったのだが、もう解決したからの。もう少し詳しく話していこうと思う。


□ □ □


という訳でな、ダンジョンができた飛び地は再び我らの国土と地続きになり、アーレルジ側は『アーレルジとエストリアの国境は、古よりエドゥー川であり、灌漑工事など行われていない』という自分達の主張をもって、こちらの所有権を認めてしまう結果となった。


しかし、自分達のモノだと思っていたのに手に入らないとなると、相手方が暴発する恐れもあるし、遺恨も残る。その為、4年半に掛かった経費と毎年年間3%相当の魔石の売上金を譲ると定めた。もちろん、エストリアに対する敵対行動が確認されたら終了だ。この金で相手の動きを縛り味方にする、という事だな。金が欲しくば大人しくしているしかない。


そうじゃ、この件でもう1件。


現地で対応した冒険者達は、それぞれ報奨を与え級を上げた訳だが、その中の一人を飛び級で白銀級に認定した事だ。


既に知っている者もいるとは思うが、その魔術師、キースはこの春に冒険者になったばかりの18歳で、ダンジョン確保前までは銅級冒険者であった。まあ、18で銅級というのも大概だが……それは今は良い。


両親や仲間達は皆一つ上がっただけであるのに、何故キースだけが飛び級、しかも一気に白銀級になったのか。その説明をする。


こやつはの、ダンジョン確保以外の功績も、全部ひっくるめて表彰されているのだ。


では、その他の功績とはなにか?


察しが付いた者もいるかもしれんな。そう、先程紹介した『転写』『反発』『転移』という、間違い無く、数百年先の未来まで語り継がれ歴史に残るであろう3つの魔法陣、これは全てキース個人が作成したものなのだ!


冒険者の級というのは、社会的、公共的な貢献が高いとされる功績で上がるものだ。もう一人の白銀級冒険者であり、ライアルの母、キースの祖母であるアリステアは、ダンジョンを確保し、新人冒険者の育成制度を立ち上げた。それにより、冒険者へのより適切な教育と社会的地位の向上、人材確保と共に魔石の安定供給に貢献を果たした。


キースは、人々の生活をより向上させる画期的な魔法陣を、複数開発し提供してくれた。どれ一つとっても、世の中の仕組みを大きく変える程のものだ。我らはこれはとても金級では収まらんと考え、白銀級と定めた。今はまだ疑問に思っている者もな、あれらの魔法陣を使えばきっと納得するぞ。間違いない。


そして、ここまできてようやく、最初に言った、収穫祭が一日延長された理由に結びつく。ここまでの余りの話の濃さに、皆このことを忘れておったのではないか?大丈夫か?ワシ?ワシはもちろん憶えておるよ。当たり前であろう!

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お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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