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第258話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


魔術学院での講義とその振り返りを終え、翌日は朝からカルージュの村へ移動を開始しました。キース達が馬車で向かい『転移の魔法陣』を設置、イングリットらはそれを屋敷で待ちます。


□ □ □


「そういえば、色々お話が漏れてしまって大変だと聞いたのだけど、その辺りはもう解決したの?」


食後のお茶の入ったカップを片手に、マクリーンが尋ねる。フランが用意しておいた茶葉を、イングリット付きの側仕え兼護衛である、レーニアが淹れたものだ。


「はい、一昨日の夜キースさんからご連絡いただいて、昨日の昼前に解決してきました。やはり仕事の予定がないと、すぐに対応できて良いですね!視察や面会が入っていると、中々こうはいきませんから」


(それは喜ぶ事なのかしら……)


と、マクリーンは考えたが、彼女が何か言う前に隣の席に座る夫が切り出した。


「解決してきた……という事は自分で直接話したのか?休み中だろうに……」


「そうなのですが、放っておいて落ち着かないよりは片付けてしまった方が良いかと思いまして……こちらの都合でわざわざ足を運ばせて、さらに黙っていてもらう訳ですから、きちんと自分で説明すべきと考えました。本当はこちらから出向きたかったのですが……」


「それはやめた方が良いわね。商会の人達もびっくりしてしまうもの」


「そうだな。仕事にならなくなってしまう。それに秘密を守ってもらう話をしに行くのに、イーリーが直接行ってしまったら、全く秘密にならん」


先程の、馬車で移動するかどうか、と同じ事だ。彼女が動けば立場の分目立ってしまう。


「それにしても、ゲインズボロー商会、でしたっけ?びっくりしたでしょうね」


「ああ。まず、役所に呼びつけられる、という時点でもうな……」


「恐る恐る行ってみたら、出てきたのは王女様なんだから……私だったら腰抜かしちゃうわ」


(お母様が腰抜かすなんて、天地が逆さになったとしても無さそうだけど)


イングリットはお茶のお代わりを受け取りながら、昨日のやり取りを思い返していた。


□ □ □


【昨日の昼前】


「ペーター、これってやっぱりあの話絡みよね?」


「そうですね、私を指名するぐらいですから、やはりその可能性が高いかと」


ここは国務省内にある応接室である。目の前のローテーブルにはお茶とお菓子が整えられ、室内に芳醇な香りを振りまいている。


小声でやり取りしているのは、ゲインズボロー商会のオーナー、シェイラと番頭の1人であるペーターだ。それぞれ腕を組んでいるが、心情的には机に突っ伏して頭を抱えたいところだろう。


「あの子がどこかで言いふらして広まったのが、巡り巡ってここまで届いた、とかかしら……あなたもよりによって何でユーコに……」


「申し訳ありません。思慮不足でした。まさかこの様な事になるとは」


謝るのはこれで通算三度目であるが、ペーターもこれに関しては完全に自分が悪い事を自覚している為、素直に謝罪した。ちょうど店の前で学院から帰ってきたユーコと行きあい、おやつに付き合いながら、話のネタにしてしまったのだ。


ユーコの父でシェイラの夫は、ユーコがまだ小さいうちに亡くなっている。その事もあり、店の従業員達は皆でユーコお嬢さんを可愛がっていた。特に、番頭たちにとっては、年齢的にも自分の娘や孫みたいなものである為、可愛くて仕方がない。


鐘2つ程前、今日の営業を開始して程なく、国務省からの遣いがやってきて、一通の封筒を渡されたのだ。


封筒は少し厚手の、しっかりした上質の紙で作られており、国務省の封蝋で閉じられている。さらに、裏面の右下には花押が押されていた。


国務省の封蝋だけなら珍しくは無い。領収書やら申請書の控えなどが入った封筒によく押されている為、国を相手に商売しているとよく受け取るのだ。だが、個人を表す花押まで押してあるとなると話が変わってくる。


中の手紙は時節の挨拶から始まり、『内密の話がある。ペーターと共にできるだけ早く来て欲しい』という内容が、程々の回りくどさに包まれ綴られていた。


礼節は守られているが、早い話が出頭命令である。


読み終わるのを待っていた遣いにすぐに行く旨伝え、ペーターを呼び出し簡単に説明すると、それぞれが大慌てで準備を整える。そして、遣いと共に待機していた馬車に飛び乗ったのだ。


そして、到着するなり応接室に通され、今に至る。


「オーナー、あの花押はどなたのものかご存知ですか?」


「……見た事無いのよね。国務省だし国務長官かしら……」


「そうすると、ますますあの話の可能性が高くなりますね……お嬢様が学院で喋り、講師や生徒を経由して国務省まで伝わってしまった、という事でしょうか」


「あぁ!もう早く始めてほしい!適当な話を広めてすいませんでしたって謝って早く帰りたい!」


「本当に、申し訳ありません……」


その時、室内にノックの音が響き、1人の男が入ってきた。50歳前後の、大柄でがっしりした体格の男性だ。


「お疲れ様ですシェイラさん、お待たせしております。お忙しい中わざわざご足労いただき、ありがとうございます」


「いえいえ、とんでもありませんホスキンズ管理官。お疲れ様です」


立ち上がって握手をした後、お互いに腰を下ろす。


このホスキンズという男の『管理官』という肩書は、国務長官、次官に次ぐNo.3であり、省内の各部門の責任者が就く役職である。シェイラとはこれまでも何度も顔を合わせており、気心の知れた間柄だ。


「何事かとお思いでしょうが、皆さんが何かしたとか、咎める為に来ていただいたのではありませんのでご安心ください。どちらかと言いますと、感謝を伝えたいとの事なのです。本来であれば出向くべきところなのですが、そうもいかz」


「失礼致します。間もなくご到着になります。一度お立ちいただきまして、お迎えの準備をお願い致します」


部屋に入ってきた側仕えの女性が、ホスキンズの言葉を食い気味に告げる。その言葉に応えシェイラとペーターは立ち上がった。


自分達が礼を言われる立場である事は認識したシェイラだが、国務長官は公的な立場では国で3番目の存在だ。座ったまま出迎えるというのはさすがに失礼である。


再度扉が叩かれると、先に来た側仕えの女性が扉を開けて押さえる。てっきり国務長官が入ってくると思っていたシェイラとペーターは、実際に入ってきた人物を見て、驚きの余り腰が砕けそうになった。


入ってきたのは、丁寧に結われた赤茶色の髪、二重でぱっちりとした薄い魔石色の瞳、同年代より少し高い身長の若い女性だ。


(……この方って、まさかイングリット殿下!?)


聞き及んでいるイングリットの特徴と同じであるし、ただ歩いているだけなのに、息苦しく感じる程の気配と気品。こんな人物は二人といない。


シェイラもペーターも、イングリットを見た事は一度しかなかった。5年前の、アルトゥール王90歳記念式典のパレードでだ。屋根の無い馬車にアルトゥールと並んで座わり、沿道に向けて手を振る姿可愛らしかった。もう5年前になるが、特徴は同じであるし顔も見間違い様も無い。


(これはやはりあの話なのね……)


震えながらもなぜ呼ばれたのかを考えていると、イングリットと思われる女性が口を開いた。


「ゲインズボロー商会の皆さん、初めまして。イングリットでございます。本日はお越しいただき感謝いたします」


軽く礼をし微笑む。


「ゲインズボロー商会、シェイラとペーター、お召により参上致しました」


相対しただけで胸がいっぱいになってしまい、シェイラの瞳は自然と潤みだしたが、何とかそれを抑えて挨拶を返す。父親からオーナー職を引き継ぎ、様々な場面を潜り抜けてきたが、ここまで圧倒されたのは初めてだ。面と向かっていると、どうにも跪きたくなってしまうのである。


※ちょっと長くなってしまったので、中途半端ですが一旦切ります。また後ほど更新します。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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