第248話
GWですが絶賛仕事中です。でも、暇な方が色々捗って助かりますw
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
近衛騎士団でニバリによる講義です。イングリットは体調一息。魔術学院の理事長マリアンヌに誘われ、学院へやってきました。ニバリの講義内容を振り返り、どうやら本題らしいリリアの話に移ります。
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「それでねキース、報奨の授与式の後にリリアに会った?」
「いえ、ここのところは顔を合わせていませんが……ここで『呪文』の展示をした日にお店で会ったのが最後です」
「そう……というのもね、最近授業に集中できていないみたいなのよ。もし会っていたら変わった様子なかったか教えてもらおうと思って」
「……」
複数の指導官から報告を受けたマリアンヌは、授業中に廊下からそっとリリアの様子を窺ってみた。確かに報告の通りだった。指導書とノートを広げ、筆記用具を手に持ってはいた。だがそれだけだ。
説明をしている指導官の方を見ることもなく、ただ机をじっと見つめている。見てはいるがその目には何も映ってはいないだろう。完全に、心ここにあらずというやつである。
「僕もちょっとリリアとご家族に話があるんです。とりあえずご家族にと思って、この後お昼がてらお邪魔しようと思っているのですが……様子がおかしいならやめた方が良いかな」
「リリアだけじゃなくてご家族にも?……どんな話しか訊いても良い?」
「例の地上げの件が解決した後に、朝から夕方まで2人で出掛けたんですが……」
「私のところに挨拶に来てくれた時?」
「はい、その日です。それでですね、その時に『将来についての約束』を1つしたんです」
「ええっ!?本当に?」
「ですが、殿下と結婚する事で、その約束は果たせなくなります。ですので、その断りを入れなければなりません。正直、その話をしたのはその時だけですし、リリアともたまにしか顔を合わせないのですっかり忘れていたのですが、昨日の夜思い出しまして。あれは、とてもそのままにできませんから」
「そんなに大事な事なのね………………」
「……では、その出掛けた日の出来事を、順を追って説明しますね」
マリアンヌの語尾と視線から『良ければもうちょっと具体的に』という意図を察したキースは、お茶を一口飲み口を湿らすと説明を始めた。
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先程も言いましたが、これは、諸々解決して先生のところに報告しに行った日の出来事になります。
学院を出た後、僕の行きつけのお店に寄ってお茶をしたりしたのですが、僕の拙いエスコートのせいもあって、お互いに意識し過ぎてギクシャクした空気になってしまいました。
折角出掛けているのにこれでは良くない、という事で「リリアに対して特別な気持ちがあるのかどうかよく解らない。とりあえず、仲の良い友人として過ごそう」と提案して、リリアもそれに賛成してくれました。
その後お昼ご飯を食べたり色々なお店を覗いて歩き、公園で一休みしました。その時に「学院を卒業して、キースの目から見てこれなら大丈夫と思ったら、パーティに入れてほしい」と言われました。
それに対して、僕は「分かりました。でも、僕の基準は厳しいですよ!」と答えました。あの時点では断る理由もありませんでしたから。
その後、リリアをお店まで送って解散となりました。
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「……ええと、それで終わり……かしら?では、『将来の約束』というのは、パーティに入れるか入れないかの見極めをする、という事なのね?」
マリアンヌは首を傾げながら目を瞬かせる。明らかに拍子抜けした様子だ。
「もっとこう、男女の色々的な事は……」
「先生……初めて一緒に出掛けたのに、そんな話になる訳無いでしょう。自分で言うのも情けない気もしますが……」
拗ねと呆れ、半々の気持ちを込め反論する。
「それに、『特別な気持ちがあるのかどうかよく解らない』と言ってる訳ですから。歩いているとき手を繋ぎはしましたが」
「そ、そうよね。ごめんなさいね。それで、この話はアリステアさん達もご存知なのよね?なんて仰ってたかしら?」
「はい、祖母達も先生と同じ反応です。『約束としてはそこまでのものでは無い』と。ですが……」
「ちょっと腑に落ちないかしら?ではもうちょっと詳しくみてみましょうか」
マリアンヌは一度ソファーから腰を浮かして座り直すと、冷め始めたお茶で喉を湿らせた。
「『約束としては弱い』といえる点は3つあるの。1つ目は『特別な気持ちがあるのかどうかよく解らない。友人同士として過ごそう』とはっきり伝えている事。これは大きいわね。2つ目は『リリアの方からパーティに入れて欲しいと言ってきた』事。誘った側から『やっぱり無しで』というのはお行儀が悪いですが、言い出したのはリリアですから。3つ目は『パーティに入れる事に対して確約していない』事。理由は2つ目と似た感じね。冗談の意味合いが強いのでしょうけど、審査が厳しい事も伝えているし。以上が理由になるわ」
「確かにそうですね……」
マリアンヌの説明に頷いてはいるが、どうも歯切れが悪い。道理を弁えているキースにしては珍しい反応だ
(あ……そうか。そういう事ね!丸っきり勘違いしてた)
その様子を見て、マリアンヌはキースが何に対してモヤモヤしているのか、自分の考え違いに気が付いた。
「キース、ごめんなさい。私やっと気付いたわ。あなたが引っかかっているのは、この約束を反故にする事で、リリアの将来に大きな影響を及ぼしてしまうのではないか、という事ね?だから『きちんと話をしなければ』と思っているのでしょう?」
マリアンヌの言葉に、キースは俯き気味だった顔を挙げた。
そう、第三者からしてみれば、取るに足らない口約束でしかなかったが、少なくともあの時点では、当事者の2人には先々へ向けての大事なやり取りだった。
だが、アリステアやマリアンヌは、この約束の事を、キースとイングリットが結婚するにあたっての『妨げ』としか捉えていなかった。だから結論が食い違ったのである。
「……はい、その通りです。それに、自分で言うのも何ですが、リリアは僕と一緒に活動する事を目標に頑張っていると思うんです。それが完全に失われる訳ですから……」
キースと共に活動する未来が無くなる事で、魔術師として到達できたはずの位置に辿り着けなかったり、もっと酷ければ、ショックの余り学院で学ぶ事自体をやめてしまう可能性だってある。
「ですので、リリアとご家族にきちんと説明してきます。先にご家族に話して、リリアが落ち込んだ時に備えてもらおうかと」
「なるほどね、解ったわ。そうすると、早い方が良いのでしょうけど、今のリリアに話して良いのかどうかがまた難しいわね……リリアが何に対して悩んでいるのかが分かれば良いのだけど……」
「その辺も一緒にお話してきます。学院でその様子なら、家でも変化はあるでしょうから」
「出来れば私も一緒に行きたいのだけど……」
「……いきなり理事長先生が登場してしまうと、流石にご両親もびっくりしてしまうと思うので、ここはどうか僕にお任せを」
「そうよね……理事長というのは色々好きに決められて良いのだけど、ちょっと肩書が重すぎるのよね。こういう時、もっとすっすと軽く動きたいわ」
そう言いながら肩を回す。
「ふふ、でも軽く動ける肩書では何も決められませんから。では、話が終わり次第ご連絡しますので」
「はい、よろしくお願いしますね」
2人は別れの挨拶を交わし、キースは『転移の魔法陣』を設置した部屋へと向かった。
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