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第233話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となりますが、仕事の都合で若干遅れています。気長にお待ちください。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


素材、魔導具、書籍等を扱う店主達を集めて、現状と今後についての説明をし、協力を求めました。昔のアリステアの行いについての暴露トークもありましたが、最後に『仲間の紹介がまだだ』という声が出ました。


□ □ □


キースが(良いですか?)と視線を送ると、3人は(OK)と頷き返してきた。


「分かりました。それではですね、<探査>を使ってもらえますか?範囲は部屋の中だけで十分です」


「……?あ、ああ、分かった」


店主達は不思議そうに答えると、それぞれ魔法を発動させてゆく。


(これも正体を明かす時の定番になりつつあるな)


アリステアはその様子を眺めながら、先日イングリットに明かした時の事を思い出した。


<探査>の魔法は魔術師は当然だが、それ以外にも使える者が多い。魔力操作の基本中の基本であり消費魔力も少ない為、独学でも習得しやすいのだ。


店主達は、持ち込まれた物の魔力の強さを感じる為に使用する。もちろん数字で現れるわけではないが感じ方でその強弱が十分に判る為、だいたいの当たりをつけるのには十分だ。


「んんっ!?」

「なん……だと……」

「いやいやいや、ちょっと待て」

「なんだいこれは!?どういう事だい!」

「……?」


<探査>を発動し、アリステア達の反応を感じた店主達が一斉に騒ぎ出した。


「おいキース!こりゃ一体どういう事だ!?」


ウォードンも血相を変えている。


「皆さんが感じた通りです。先ほどお話しした『依代の魔導具』、これが現時点で確認できている最終型です」


「マジかよ……」

「なん……だと……」

「これが魔導具だってのか!?人にしか見えんぞ!」

「それな」

「……?」


「現時点では、初期段階の作成手順しか判明していませんので、まずはそれを再現してみます。知識と技術力を向上させつつ、資料を探し出し次の段階、さらにその先、と進んでいけたらなと」


「……さっきの説明を聞いた時にも凄いとは思ったけど、やはり目の当たりにすると、何と言うか、こう、凄いね」


よく喋るデボラも語彙が飛んでしまったのか、『凄い』しか出てこない。


「だがよ、そうすると……中に入っている人、というのがいるのだよな?」


「そうなりますね。では、誰が入っているのか、ちょっと皆さんで考えてみてください」


唐突に始まったクイズコーナーに、店主達の間に戸惑いの空気が流れた。


その表情からは『急にそんなこと言われても……』と考えているのが伝わってくる。


「……考えれば分かるという事は、私達が知っている人物だと言うことだな」


「お、テイタムさん鋭い。プラス1点です」


テイタムの言葉に皆の眉間の皺が1段階深くなるが、その時2人の人物が席を立った。


小柄なフロドと店主達の中では最年長のカイラスだ。


歩き出した2人に対しキースが声をかける。


「……お2人共どちらへ?」


「……トイレだ」


「もう少しだけ我慢してください。すぐに終わりますので」


笑顔のキースが押し留める。2人はお互いに視線をチラリと交わすと、ため息をついて席に戻った。


一瞬だったが、キースは2人が『あっ』と言う表情を見せたのを見逃さなかった。


そう、この2人はテイタムの言葉で魔導具の中にいるのが誰なのかに、いち早く気が付いたのである。そして、先程の暴露トークのことを思い出し脱出を図ったのだ。


「真ん中のあなた……海の神様の神官だね?その聖印を見せてもらっても良いかい?」


「はい、構いませんよ。どうぞ」


(そうよね。デボラなら気が付くと思っていたわ)


フランはこの後の展開を察しつつ、首から下げていた聖印を外してデボラに手渡す。


それをそっと受け取り、一度額に押しいただくとじっと見つめながら撫でる。その目はどこか懐かしい物を見るかの様だ。


(他の神官が持っている聖印は六角形なのに、角が取れた丸みのあるフォルム、そしてこの金属とも陶器とも言えない不思議な素材。こんな聖印を持っているのはあの子しかいない)


「あなた……キャロルだね」


はっきり指摘されたフランは一度キースの方を見た後、デボラに向き直り頷いた。


「ええ、そうよ。久しぶりねデボラ。元気そうで良かったわ」


「あなたもねキャロル……だけど、この聖印を見せていたら私にはすぐに分かってしまうと思わなかったのかい?なぜそのままにしていたんだい?」


「まあ、その為にわざわざ外すのもね。隠そうとしている訳じゃないから、ヒントには丁度良いかなって」


デボラから聖印を返してもらい首に掛ける。


海の神ウェイブルトから直接授けられた、この世で唯一、フランだけが持つ聖印。


あの当時、孤児院で一緒に暮らしていた子供達は神の奇跡に驚き、聖遺物とも言える聖印を手に、ためつすがめつ眺めたものだった。


(この2人が60歳なんだものな……月日が過ぎるのは本当に早い)


アリステアは笑顔で話をする2人を見つめながら、当時の事を思い浮かべた。


□ □ □


デボラは、アリステアやフランと同じく、バーソルトの街の共同神殿が運営する孤児院の出身だった。


アリステアが訓練校に入ってから孤児院に来た為、小さい頃はアリステアが孤児院に来た時に遊んでもらう程度で、そこまでの付き合いでは無かった。


だが、デボラに魔術師向きの特性が現れ始めた事で状況が変わる。


魔術学院は王都にしかない為、バーソルトに住むデボラは寮に入る事になった。


学院の寮生活にかかるあらゆる費用は無料、指導書やノート等の筆記用具も全て国から支給される。


これは、実家の貧富が子供の勉強に影響しない様に、との措置である。魔術師は存在自体が貴重なのだ。国は『金で解決できるのであれば安い』と考えている。


だが、休日に着る服代や、その他私物を買う金、友人らと出掛けた際の外食費など、いわゆる『小遣い』までは出ない。


子供1人であればそこまで大きな金額では無いしアリステアからの寄進もある事から、神殿側でも工面は可能であった。


だが孤児院出身の子供達は、基本自分の為にお金を使うという考えが無いし、その為のお金も無い。他人と生きてゆく上で、お金を使う場面というのは避けられないのだが、孤児院の運営資金がカツカツなのはこの年齢になれば当然知っている。工面して持たせる事でデボラが負担に感じてしまう恐れがある。


さてどうすると皆で頭を悩ませていた時、それを聞いたアリステアはあっさり『あたしが出す』と言った。


各派の司教達はさすがに断った。


ただでさえ毎月多くの寄進してもらっているのに、そこまで出させる訳にはいかないと考えたのだが、アリステアは、デボラを呼び出して『あたしが出すから金の事は気にするな』と告げてしまった。


デボラ自身も最初は断ったが、『デボラ、あなた小さい頃からどれだけ私が寄進してきた物を食べてきたか解ってる?今更それが少し増えたぐらいなんだというの』


と言われ、返す言葉が見つからなかった。


さらにアリステアの気遣いはそれだけに留まらなかった。2、3ヶ月に一度程の間隔で、デボラの様子を見に行ったのだ。


授業が終わる時間に合わせて学院に向かい、門の外で合流すると連れ立ってカフェなどに向かう。その姿をわざと他の生徒の目に留まる様にしたのである。


デボラは13歳の時点で180cm後半程と、とにかく背が高かった。特性に拠らずにここまで大きくなるのはやはり珍しい。それに加え出身は孤児院だ。年齢に見合わない高身長と出身。これらを理由にからかれたり、後ろ指を指されてしまうのでは?とアリステアは考えたのだ。


周囲は『あのアリステアと出身が同じで、今も親しくしている』というだけで一目置かざるを得ないし、一般市民出身の学生は卒業後冒険者になる者も多い。冒険者になる前から目を付けられる訳にはいかない。


共同神殿側は恐縮しきりだったが、自分の周りを走り回っていた小さい子(背は大きかったが)の成長を感じるのは単純に嬉しかったし、王都で暮らしているアリステアにしてみれば、特に負担な訳でも無い。


美味しいお茶とお菓子を前に、学院での勉強や出来事を聞いたり、発動できる様になった魔法を見ながら過ごす時間は、アリステア自身の良い気分転換にもなっていた。


□ □ □


若い神官がキャロルと判明した事で、店主達は席を立ち3人の方へとやってきた。昔馴染みの周りを囲み口々に声を掛ける。


「まさかキャロルとはな……という事は、隣の兄さんはやはり……」


「『海の神の娘』に並び立つのは、その娘を護る為に遣わされた『盾』しかいないだろう。なあヒンギス」


「フフッ、まあ、そういう事だ」


短く笑ってニヤリとすると、改めて顔見知りの店主達に挨拶をする。


思いがけない同年代の2人との再会に室内の空気は温かくなったが、フロド、カイラスはもちろん、さらに幾人かの店主達の周りの空気は冷え切っていた。彼らの顔色も良くない。


「おい、おい、ウォードン、ちょっと」


そんな状況でも、フロドがウォードンの気を引こうと袖を引く。最後の1人がアリステアである(と思われる)事を伝えようとしているのだ。


「んん?何だよフロド?……どうしたんだよ、顔色悪いぞ。具合悪いのか?」


「いや、そうじゃなくて、まあ、悪いといえば悪いのだが、あのな」


「なんだよ、おかしな奴だな。あ、お前もキャロルとヒギンズと話したいのか!付き合いはかなり長いものな!ほら前に出ろよ。おい、ちょっとフロドも入れてやってくれ」


「いや、俺は良いから!そうではないのだ!ちょっと」


アリステアの方を気にしながらの為、歯切れは悪いし意図もよく伝わらない。ウォードンに押されると、一際小柄な身体では抵抗できず簡単に前に出てしまった。とても顔を上げていられず俯いてしまう。


「さて、最後の1人だが……」


ウォードンの言葉に、皆の視線がアリステアに集まった。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)


ウマ娘新シナリオ楽しいです。

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