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第232話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となりますが、今回は間が開きました。しばらくこんな感じになってしまいそうです……


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


『依代の魔導具』制作に向けてある程度の目処が立ちました。素材を求めて王都の一角にある、魔法関連の素材や書籍、魔導具を扱う店が固まっている区画へ。組合長のウォードンが各店の店主を集めました。


□ □ □


「よし、それじゃ始めるぞ!まずは、キース、卒業やら昇級やら色々あるが、全部ひっくるめておめでとう!」


「おめでとう!」

「まったく大したもんだ!」

「凄いねぇ!おめでとう!」

「……」


ウォードンの言葉に皆が拍手をしながら声を掛ける。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


キースは立ち上がり、お礼を言いながら右へ左へと礼をする。


「あんまり来ないからお祝いが溜まってしまったよ!帰る時に馬車に積むからね!」


「はい、デボラさん。ありがたくいただきます」


「それにしても銀級はまだしも金も飛ばして白銀級とはな……」


「ああ、全く。そもそも飛び級自体聞いた事無いぞ。史上初だろ」


「級ももちろんなんだがよ、やはり『転移の魔法陣』だろ。転移って転移だぞ?空間を移動しちまうんだぞ?」


「んな事分かってるよ!……まさか作り上げるやつがいるなんてなぁ」


「それな」


「ざっくりとは聞いているが、『呪文』?みたいに表題だけ聞いても意味が分からんものもあってな。キース、その辺の詳細は教えてくれるのか?」


「はい!説明書きがありますので、そちらをお配りますね。お隣の人に回してください。みんな読み終わったら質問コーナーにしましょう」


そう言いながら紙の束をウォードンに渡す。


授与式列席者に配られたものを基本に、専門家向けに追記し注釈をつけたものだ。元は1枚だが、追記と注釈の方が文量が多い為5枚1組になっている。


「おっ、さすが準備が良いな。どれどれ……」


店主達はめいめい読み始めた。


□ □ □


(みんな顔を上げたな。読み終わったかな?)


キースが店主達の様子を窺うが、彼らは明らかに先程より疲れた顔をしていた。余りの内容に読むだけで気疲れしてしまった様である。


内容はどれも過去に無い事ばかりだ。熟練の魔術師達でも、というより、魔法に関して深く修めてきたからこそ、受ける衝撃は大きい。


「……これは確かに白銀級だ。金級では足りん」


読み終わって顔を上げたフロドの言葉に、皆顔を見合わせ頷く。


「世の中の仕組みが大きく変わるな」


「ああ……このセクレタリアス王国の滅んだ仕組みとか、魔導具も凄いな。とても考えられん。これを再現しようと言うのがまたキースらしいな」


「当時の魔術師の部屋がそのまま残っているというのも大変な事だ」


皆感じた事を思い思いに話す。


「それにしてもキース、お前あの3人を相手に家出とは、また随分思い切ったな」


「それな」


「ヒギンズとキャロルはまだしも、アリステアさんは無理だ。恐ろし過ぎる」


「俺達じゃとても考えられん」


「うむ。最近はお会いしていないが、あの人の前に出るのは幾つになっても緊張するからな……」


店主達は腕を組んで唸る。


彼ら程の年代は、指導された先輩冒険者から、『こんなに待遇が良いのもアリステアのお陰。感謝する様に』と、繰り返し言われながら活動してきた。


その為、アリステアへの感謝が脳細胞に刷り込まれており、この歳になっても彼女と話す時は常に気をつけの姿勢を取り、口から出る言葉は、「はい」「承知しました」「ありがとうございます」がほとんどなのだ。


「だがよ、先輩達から聞いた話じゃ、意外と可愛い話も多くてな」


「ああ、言葉はちょっとアレだが、ポンコツと言うか」


「へぇ!そうなんですか!?」


「新しくオープンした飲食店には好みでなくとも必ず1度は行く、とかな」


「行かずに評価する事は無いらしい。とてもフェアとも言えるな」


「ははぁ……その様子が目に浮かびますね」


「だろ?アリステアさんは美味しいもの大好きだからな。あの探究心は凄ぇよ。さすが白銀級だ」


キースは(それ関係ある?)と思ったが、すぐに他の店主が会話を引き継ぐ。


「俺が聞いたのはこうだ。アリステアさんの夫、キースのおじいさんのアーサーさんはギルドの鑑定士だっただろう?アリステアさんはアーサーさんの窓口にしか行かなかったというのは知ってるか?」


「はい、聞いた事あります。他の窓口が空いていても頑として動かなかったって」


「そうだ。ある意味アーサーさんの窓口に行く為に遺跡に行っていた様なものだったと言うが、いくらアリステアさんとはいえ、常にある程度の遺物を見つけられる訳じゃ無かった。だが、そういう時の達に遺物をいくつかストックしておいて、必ず窓口に行けるように準備していたらしい」


(くそっ!誰だペラペラ喋った奴は!どれも事実だから文句も言えん!)


アリステアは表面上は澄まし顔だが、言った者を突き止めて(生きていたら)罰を与える事を心に決めた。


「うぅ~ん、おばあ様らしい微笑ましいお話ですね!まだ何かありますか?」


「おう!わしが聞いたのは……」


まさか、言ってるそばから本人に筒抜けになっているとは微塵も思わない。店主達の話はしばらく続いた。


□ □ □


店主達の暴露トークもさすがに尽きたらしく、脇道に逸れていた話が戻ってくる。


「学生達は『呪文』の指導も受けられるのかい!羨ましいねぇ!」


「すぐ学びたいという方は、指導官を引き受けていただければお教えできます。教本もありますので。まだまだ人手が欲しいので、お知り合いやお客さんで、引退や最前線から退く事を考えている方はいらっしゃいませんか?今後のお仕事に良いと思うのですが」


「そうか……そういう仕事なら命の危険も無いものな。ちょっと気にしてみるわ」


「キースはまだ関係ないだろうが、ある程度歳とってくると本当にガクっとくるものなのだよ」


「ああ、皆がみんな店をやれたり貯えがある訳じゃ無いからな、こういう話はありがたい。窓口はギルドで良いのか?」


ウォードンが尋ねる。


「はい。指導官募集の件で僕に聞いてきた、と言っていただければ分かる様にしておきます。あと、『呪文』については不特定多数がいる場所で口に出さないでください。外国には漏らしたくないので」


「分かった。今の段階で指導官は何人ぐらいいるんだ?」


「発動できるのは僕とニバリだけです。デヘントさんのところのラトゥールさんが勉強中で、後は、呪文の暗記はほぼ終わっている、という段階の方がお2人いらっしゃいます」


「ほう!まだ見つかって間も無いのに、そこまでい到達している人もいるのか!……ちなみにその2人は誰なんだ?俺達が知っている人なのか?」


「デズモンドさんとヴァンガーデレンのエヴァンゼリン様です」


「……は?」


「『指揮官(コマンダー)』と元国務長官……?なんだその面子は?お2人とも80半ばぐらいだろ?」


「いや、そりゃ身体を動かす訳じゃないのだからな、年齢は関係ないのかもしれんが……」


「デズモンドさんはまだ分かる。しかし……」


「なぜエヴァンゼリン様なんだ?確かに魔術師だけどよぉ」


「それな」


「そもそも、ぼうz……キースとはどういう間柄なのだ?」


「詳しい事はちょっとアレなのですが、この半年でご縁がございまして……『呪文』については話を聞いて『年寄りは若者の為に働くのが仕事。私もやる』と張り切っておられます」


「そうか……学生もデズモンドさんやエヴァンゼリン様が出てきたらびっくりするだろうな。最初は講義どころでは無いかもしれん」


デズモンドは貴族にも名が通っている銀級冒険者、エヴァンゼリンについては言うまでも無い。講義だと思っていたところに、そんな人達が講師として入ってきたら、それはそれは驚くことだろう。


「マスターも『北西国境のダンジョン』の管理官になったんだよな?皆歳とっても凄いな……」


彼らぐらいの年代が『マスター』と言った時は、ハインラインの事を指す。アリステアもだが、やはり自分が冒険者になった時のギルドマスターは、いつまで経っても『マスター』なのだ。


「まあ、確かにあの人は殺しても死ななそうではあるけどねぇ!」


「違いない」


顔を見合わせクックックと笑う。


「だがよ、なんかこう、尻の下がムズムズするというか、な」


「ああ、皆の話を聞いていると俺達はこのままで良いのか、って気がしてくる」


「店番だけしてたんじゃ、時代遅れの役立たずになってしまうな」


「先程の指導官の話も含めて、今の俺達に何ができるのか、新しく始めるなら何ができるのか、ちっと考えてみるか……」


「それな」


「……」


「あと、そこには書いていないのですが……殿下の王位継承に合わせて結婚する事になりました」


皆黙り込みキースをじっと見つめる。


「結婚……誰が?」


「僕が」


「誰と?」


「イングリット殿下と」


アハハと笑いながら右手を頭にやる。


店主達は訝しげに顔を見合わせる。


『これは何かの冗談なのか?本気にして良いのか?』といった感じだ。


「嘘でも冗談でもありませんよ?まだ世間には公表しませんので、内定という形ではありますが……」


キースはイングリットとの経緯と、結婚した後の活動について説明する。


「何とまあ……今日は色々驚かされたけど、これが一番びっくりしたねぇ!おめでとう!」


「イングリット殿下……随分思い切りの良い方なんだな!初顔合わせで求婚かよ」


「それな」


「転移で行き来しながら王配と冒険者を両立する?なんて事考えるんだ」


「それで良いという国王陛下や殿下もまた……いや、言わんとこう」


「いや〜なんか今日一日で10年分ぐらい時が進んだ気がするな。まさに歴史に残る日だ」


ウォードンの言葉にうんうんと頷き合う。


「とりあえず、魔導具を作成する為の素材と、エミーリアという人物の名義で書かれている資料、書籍、なんでも構いません。見かけたら確保をお願いします」


キースはお茶を一口飲み喉を湿らす。


「分かった。取りまとめて屋敷に届ける様にする。素材は在庫がある店もあるんじゃないか?もしあれば俺が預かっておくから持ってきてくれ」


「承知した」


「確認しておく」


ウォードンの言葉に店主達は頷く。何人かは(あったと思ったがどこに仕舞ったか……)という顔をしている者もいる。


「そういえばキース。お仲間の紹介がまだだぞ?せっかくなのだから教えてくれ」


「そうだねぇ。まあ、あたし達のキースを預けるに足る事は間違いない様だけど、もう少し詳しくとも思うねぇ」


デボラの言葉にアリステアがピクリと眉を上げる。『あたし達のキース』という部分に反応したのだ。


皆の言葉を受け、キースと3人は顔を見合わせる。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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