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第218話

【更新について】


週一回を目標に、 書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


今後の目標について、もう少し詳しく説明しました。アルトゥールは皆に「イングリットを家族として迎えてやって欲しい」と頼みます。マクリーンはイングリットの凝り固まってしまった心を解きほぐしました。


□ □ □


「お、おかあ、さま……に……ですか?」


イングリットは濡れた瞳でマクリーンを見上げる。


「ええ、もちろんです。息子と結婚するという事は、そういう事ですから。陛下、一神官が口を挟む事では無いとお叱りをいただきそうですが、よろしいでしょうか?」


マクリーンの問いにアルトゥールは無言で頷く。


「殿下が小さい頃から、周囲の方々の期待に応えようと努力されてこられた事は、私などよりも皆様の方がよくご存知かと思います。確かにそれは、王族として生まれた以上、義務なのでしょう。ですが、たとえそうであったとしても、まだ歳若い殿下のお心に負担が掛からないはずがありません」


アルトゥールに向けて話している間も、マクリーンの手は、絶えずイングリットの背中や髪を撫でている。


「間もなく陛下から王位を引き継がれ、この細い肩で、これまで以上に大きな重圧を受けなければなりません。それはご自身から次の代へ王位を譲られる時まで、この先何十年と続き、嫌だと言ってやめる事もできません。そこで、殿下に暫く『お休み』をしていただく事をご提案致します」


何を言われるのかと身構えていたアルトゥールにとって、マクリーンの『イングリットに休みをやれ』という提案は予想外だった様だ。


「ふむ……」


と一言だけ漏らし右の口髭を触る。


「キースもおりますが、正式に王配として発表されるまでまだ2年近くございます。それまでは表立ってお手伝いする事はできませんし、魔法に関する事以外は、まだまだ皆様のご指導を仰ぐ立場。そこまで頼りになる訳ではございません。新たなダンジョンも順調、授与式も無事に終わり、望みの相手との婚約も決まりました。ここで大きな区切りを入れ、執務と王位継承に向け英気を養い、心機一転いたしましょう。幸い、国内の情勢も、周辺国との関係も落ち着いており、喫緊の問題もございません。今でしたら、心煩わせる事無くお休みできると考えますが、いかがでしょうか?」


「……ティモンド、明日より2週間、イングリットの予定をキャンセルできるか?執務は儂がやる」


「おじい様!?」


イングリット驚きながら振り返る。身体は離れたが、くっつく程に寄り添ったままだ。離れがたく思っている心の現れだろう。


「……できれば、明後日に予定されている、各国の大使達との昼食会にはご出席いただけたらと。ターブルロンドの大使が交代する為、退任と新任の挨拶を受ける手筈となっております。代わりに陛下がご出席となると、殿下について要らぬ憶測を呼ぶ恐れがございます」


「ふん、さすがに直前過ぎるか。よし、では明明後日から2週間としよう。よろしく頼む」


「かしこまりました」


(びっしり詰まった殿下の予定の調整なんてつけられるもんなのか?それを顔色も変えずに『かしこまりました』って……解っちゃいたがこの人も大概普通じゃねぇぜ)


デヘントは視線だけティモンド伯爵に向け様子を窺うが、その表情は普段とどこも変わらない為、その心の内は分からなかった。


□ □ □


立ったままだったイングリットとマクリーンが席に戻り、改めてイングリットの休みについての調整を行う。


「おじい様、本当によろしいのですか?2週間はさすがに長いのでは?1週間や5日でも……」


「イーリー、休みなどと言うものはな、ある程度日数が経ち『何をして過ごしたら良いか分からん』と感じ始めてからが本当の休みなんじゃ。のうアリステア。一度引っ込んだ事のあるお主なら分かるであろう?」


「はい。私も昔、途方に暮れた記憶がございます。イーリー、最初の数日というのは、趣味や用事にと意外と忙しいものです。休みだからと、逆に張り切ってしまうのですね。陛下の仰った様に、それらが一段落してからが本当に身体と心が休まる期間なのですよ」


(こ、こんな感じでどうかしら。キースを相手にしているつもりで話したけど……それにしても、頭では大丈夫と解っていても緊張するわね)


「なるほど……そういうものなのですね。承知しました。ありがとうございます、おばあ様」


アリステアの言葉にイングリットは何度も頷き、笑顔でアリステアに礼を言う。


(!?……いつも言われているのに、相手が女の子のせいかすごく新鮮で……それに、何というか、こう、グッとくるというの?マクリーンが『お義母様』にこだわった気持ちが解った気がする!)


イングリットからの不意を突いた『おばあ様』呼びに、アリステアは平静を装いつつ身悶えた。


「ライアル、そなたらの明日以降の予定というのはどうなっておる?また向こうに戻るのか?」


「はい。緊急事態発生時の対処要員として契約しておりますので」


「ふむ……それは他の冒険者に任せ、戻ってくる事はできんかのう?下層域でドラゴンも倒しておるし、アーレルジは金で縛ってある。素人目には脅威はかなり少ないと思うのじゃが。どうだろうな?」


アルトゥールの提案にライアル、キース、デヘントは顔を見合わせ、頷きあう。アーレルジ王国の脅威は除かれ、余程の事があっても王都から『転移』で駆けつける事ができる。ライアル達が常駐する意義は薄いと言えるだろう。


「かしこまりました。では、ハインライン様とギルドマスターを交え、代役を立てる方向で調整致します」


「うむ、よろしく頼む」


「先生、近衛騎士団と学院での『呪文』の指導は3日後からですね?」


「はい、騎士団、騎士団、学院の順で、私、ニバリ、私の順で行ってまいります」


「分かりました。よろしくお願いします」


「よし、とりあえずこんなところか? 何か言っておきたい事がある者はおるか?」


アルトゥールの言葉にキースが手を挙げる。


「『転移の魔法陣』なのですが、これを改良したいと考えております」


「ほう!?」


「あら!それはまたどの様な?」


「それはですね……」


2人に促されてキースが説明を始めた。


・王城からは、各街はもちろん、国境沿いの砦、ダンジョンの管理事務所に行ける様にするべきである。


・だが、これだけ行先が増えると、現在の2枚1組という形では、部屋の中が魔法陣だらけになってしまう。


・よって、魔法陣は1枚で、転移先を自分で選べる仕組みにしたい。


・魔法陣に魔石を埋め込み、魔石同士を魔力で繋ぐ。転移する時に、対応した魔石を起動させる事で、目的の場所へ転移する。という方法を考えている。


・後は、一度に50人、100人が転移できる様に、魔法陣自体の巨大化させる。


「なるほど……確かに、行先が30あったら魔法陣も30枚になりますものね。それに、確かに巨大化も重要です。気が付きませんでした」


有事の際に国軍や近衛騎士団を送り込む時に、一度に5人づつでは焼け石に水だが、50人ならかなりの戦力になる。


「年寄りには分かりやすい方がありがたいからの。歓迎じゃ。それはもう完成の目処は立っておるのか?」


「まだ手を付けてはいないのですが、そこまで難しくは無いと思います。転移局の皆様にもお伝えください」


「分かりました。この仕様を踏まえて話を進めます。よろしくお願いします」


「よし、他には……大丈夫か?それにしても、よもやの1日であったわ!誠にめでたい!皆にはこれからも力を借りる場面が多々あると思うが、その時はまたよろしく頼む!それでは解散としよう!」


□ □ □


アルトゥールが退室し、イングリットがそれに続こうとしたその時、キースが声を掛けた。


「殿下、『呪文』や魔法陣に関する事で、何かお尋ねになりたい事とか、困った事はございませんか?もしお時間に余裕があれば、ですが……」


「……そうですね。では少しお願いできますか?」


「承知しました。お父さん、おばあ様、先に宿に戻っていてもらえますか?」


「ああ、分かった。また後でな」


キースはイングリットと共に彼女の私室へ、キース以外の冒険者達は馬車寄せへと向かう。


「アーティ、キースも中々やりますね!」


「ああ、午前中とはまるで別人の様だな!」


「王女様への気持ちを自覚したからだと思う」


「キースちゃんったら意外と情熱的ね!先々が楽しみだわ!」


馬車寄せへと向かいながら、女性陣は小声で盛り上がっている。それをライアルは不思議そうな顔で聞いていたが、ある事に気が付き妻に尋ねた。


「……さっきのアレは2人で話をする口実、という事か?」


「ええ!間違いありません!きっと2人で仲良くお茶でもしながら……」


「帰ってきたら尋ねたいが、鬱陶しがられそうだな……1人だけ尋ねて皆に周知する様にするか」


「私が訊く。血が繋がっていない方が答えやすいと思う」


「それはありそうね!ではシリルお願いね!」


「まかせて」


(ほんと、女性はこういう話好きだよな……頑張れよ、キース)


母や妻の言葉にやれやれと思いつつも、自分には何もできないライアルは、心の中で息子にエールを送った。

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お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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