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第18話

【更新日時について】


書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。


通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。



アリステアは、この「新人冒険者支援の計画立案とその計画への出資」を国家的貢献とされ、王城で表彰される事になった。


「いやいやいや、ほんと勘弁してよ・・・なんでそんな話になるの・・・」


アリステアは机に突っ伏して頭を抱えている。



アリステア自身は、自分が最初に苦労したのもあるだろうが、基本的に若い子が死ぬのが嫌だっただけだ。


「すまんな、ダンジョン発見の時に一度断っているから、次こそはと押し切られた。というか、そもそも王命だからな。本来断る事なんかできねぇんだぞ」


ギルドマスターが苦笑いしつつも説得にはいる。


「それに、この計画自体が、若者がきちんと活躍できる場を整え、まともな社会人として育て上げ、それに伴い犯罪率下がり、より多くの魔石を効率よく回収しよう、という話だ。それの成果がきちんと出ているというのであれば、表彰ぐらいされてもおかしくねぇ。諦めろ」


「・・・・はぁ・・・もぅ~~~~わかったよ・・・」


溜息をつきながらも腹をくくった様だ。


「式典っていつあるの?今日明日の話じゃないよね?」


「式典自体は15日後の11の鐘からだ。10の鐘に迎えの馬車が来る。式典の出席者の一部が残って、そのまま昼食会になるそうだ」


「昼食会って、立食形式?一部が出席という事は、テーブルにつく感じかな?」


「人数はそれほど多くはないはずだから、テーブルについての食事になると思う。国王陛下、国務長官、一部の大臣、俺・・・全員でも10人弱だろう」


「なるほどね・・・」


なんとなく目の色が変わって見える。何かを考えている様だ。


「分かった!中途半端じゃ冒険者全体が見くびられるからね!徹底的に仕上げて、その場の度肝を抜いてやるよ!目に物見せてやるんだから・・・」


「お、おぅ・・・よろしく頼むな」


急に気合の入りだしたアリステアに、ギルドマスターは戸惑った。


(こいつは一体何をしに行くつもりなんだ・・・表彰受けて飯食べるだけだぞ)


ギルドマスターは思ったが、せっかく出席する気になっているのだからと、そっとしておく事にした。


それから式典のまでの間、アリステアは王都内であちこちの店に出入りしたり、貴族の別邸から出てこなかったりと、なにやら活発に動き回っていた。


そしてあっという間に式典当日となった。



迎えの馬車に乗り込んだギルドマスターは、馬車に乗る前から、正確にはギルドでアリステアと合流してから、ずっと変な汗を掻いていた。


乗り込んでからも、右に顔を向ける事ができず、基本ずっと正面か左の窓から外を見ている。


しかし、たまに抗しきれずに右隣へチラリと視線を送る。そしてその度に溜息ともなんとも言い難い息をそっと吐く。


(なんなんだこりゃ・・・どうしてこうなった)


原因は、もちろん隣に座ったアリステアである。


(確かに、度肝抜いて目にもの見せてやる!とは言っていたが、まさかこういう意味だったとは)


目を閉じて先日のやり取りを思い出す。


(まぁ・・・いいか。もう着いちまうし今更どうにもならん。はぁ・・・)


王家の紋章が入った馬車は、王城の門でも止められる事はない。


そのまま馬車寄せまで進み止まる。


馬車の扉が開けられ、最初にギルドマスターが降りる。


歩き出そうとしたタイミングでアリステアが馬車の中から声を掛ける。


「マスター」


「お、どうした?」


ギルドマスターが振り返る。


「一人で行かれるのですか?」


「・・・?」


「こういう時は男性がエスコートをするものでしょう」




!?




「お願いします」


さも当然といった風に、すっとアリステアが手を伸ばす。


(くそ・・・徹底してやがる。それならそれで付き合ってやらぁ)


「これは大変失礼した。では改めて・・・」


アリステアの手を取り、馬車から降りるために置かれた踏み台に脚を運ぶのを見守る。


「それでは参りましょう」


一旦手を離し、自然と腕を組み歩き出す。いつもの豪快な二人からは全く想像できない姿だった。




 会議室での各大臣の報告が終わり、式典列席者達が謁見の間に移動してくる。


一番奥の玉座に掛けた国王、その右後方には国務長官が付き、手前左右には各大臣や高位貴族が並ぶ。ギルドマスターも一番末席ながらそこに加わっている。


11の鐘が鳴る。


「皆揃ったな?よし!これより、国家事業に著しい貢献を果たした者に対して表彰を行う!」


国王が宣言し式典が始まった。


「王都冒険者ギルド所属、金級冒険者 アリステア殿!」


国務長官の呼び出しの声が響く。



謁見の間に続く扉が開き、アリステアが室内に入ってくる。


まず、正面からその姿を見た国王が目を剥いた。冷静沈着で鳴らす国務長官も眉を大きく跳ね上げる。


列席している大臣や貴族からは、角度的にアリステアが玉座に近づいてくるまでよく見えない。


(若い女と聞いているが、所詮冒険者であろう。どんなのが出てくるのやら・・・やれやれ)


と思っている者が大半であった。



そして、アリステアが視界に入ってくる。


初めは訝しげな顔をしていた列席者達だったが、この女性こそが表彰を受ける「金級冒険者 アリステア」その人と認識した瞬間、まさに度肝を抜かれ茫然自失に陥った。




そこにいたのは、まさに「絶世の美女」と言っても過言ではない、輝くばかりの女性

だった。



髪型は複雑に編み込まれ、まとめ上げられた後ろ髪は髪飾りで止められている。その髪飾りも、薄い水色の魔石が複数付けられ煌めいている。今日の為に特別に作らせたのだ。


肌は白く磨かれ輝き、化粧も派手すぎず、しかしきっちりと丁寧にされており、顔のバランスを損なう事もない。


爪にも色が載せられ、さらに何やらキラキラと輝いている。爪に塗った色薬に細かく砕いた魔石を混ぜている様だ。


そのドレスは、胸のすぐ下に切り返しがあり、腰の位置を高く見せる事で、小柄なアリステアでも脚が長く、スラッとしたスタイルに見える様にデザインされている。


両肩と背中を大胆に露出してはいるが下品さは全く無い。


髪を上げた事により覗くうなじと相まって、端麗でありながら年頃の大人の女性らしい艶容さも醸し出している。


そして何より歩く姿だ。微笑を浮かべ姿勢良く堂々と顔を上げ、早すぎず遅すぎず進んでくる。


国王の直前までくると、静かに膝をつき下を向く。


その際の所作も優美でありながらキレがあり、文句のつけようもない。やはり日頃から鍛えている人間は違う。


「金級冒険者 アリステア、お召しにより参上致しました」


「う、うむ。よく来てくれた。表をあげよ」


国王のアリステアに対する印象は、以前ギルドで見た時の「元気溌剌ぅ!」というものだ。


しかし、今日はその正反対と言っても良い。


どこに出しても恥ずかしくない、まさに淑女として範たる姿と態度であった。


(まさかここまでとは・・・してやられたわ・・・)


まさに当初の「みんなの度肝抜いてやんよ!」という思惑は達成された。


「アリステアよ、未来ある若者を憂い、社会と国家財政をより良い方向へ進ませる此度の献策、感謝にたえぬ。礼を言うぞ」


「もったいないお言葉をいただき、恐縮でございます。これもひとえに、国王陛下を始め、周囲の皆様方にご指導ご鞭撻いただいた結果でございます」


(応え方もソツがないわ・・・)


「そなたには北国境のダンジョンの際にも世話になった。でだ、この度の報奨をどうするか・・・なのだが」


「恐れながら申し上げます。ダンジョン発見の際に、過分な報奨金をいただいております。一個人にこれ以上の報奨金を下賜される事は、様々な面で影響が大きいかと存じます。わたくしは、この様な場を設けていただいただけで充分でございます」


「国務長官もハインラインも、そなたなら断るだろうと言っておったが・・・ふむ、やはりそうか・・・」


国王は口髭を触りながら思案気な顔だ。口髭を触るのは、考え事をする時の癖の様だ。


「だがな、功あった者をきちんと評す事ができぬというは、一国の王として恥ずべき事よ。一国民の気持ちすら満足させられないのか、とな。そこでだ」


国王は続ける。


「直接的な金などでは無く、少々毛色の変わった物を用意してみた。そなたが望む物かどうかは分からんが、わしらの気持ちだ。受け取ってほしい」


後ろにいる国務長官に合図を出す。


「アリステア、そのままお側に進み表をあげて待ちなさい」


国務長官が指示に従い、一度立ち上がり前に進み再度国王の足元に跪き顔をあげる。


「エストリア王国国王アルトゥール・ロウ・クライスヴァイクは、後進の育成と国家経済に大きく寄与する献策に報い、王都冒険者ギルド所属 金級冒険者アリステアを白銀級冒険者として認定し、特に褒賞を授ける」


脇から国務長官が国王にトレーを差し出す。


国王はトレーに載っていたそれを手に取り、驚き固まっているアリステアの首に冒険者証が付いた鎖を掛ける。


(はっは、驚いたであろう。やられっぱなしでは済まさぬわ!)


表面にはアリステアの名前と出身地が、裏面には王家の紋章と王の名が刻印された、白銀製の冒険者証であった。


この日、王国600年の歴史の中で、初の白銀級冒険者が誕生した。


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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