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第180回

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


近衛騎士団と色々調整しています。若者らしくちょっと悩んだりしましたが、『転移の魔法陣』の設置を完了しました。ですが、ミーティア副団長にはまだ内緒です。


□ □ □


「そういえばキース、今回の様な報奨を授与されたり大規模案件を達成した後は、仲間内でお祝いをすると聞いた事があるぞ?祝賀会の準備などはしているのか?」


ボブの言葉にキースは考え込む。


「いえ、誰からもそういう話は聞いておりません。ニバリ、何か知っていますか?」


「いや、特には聞いてない。確かに、親しい仲間が開いてくれたりという事は、これまでもあったな」


王都に頻繁に訪れているのは自分達ばかりで、ライアルやデヘント達は来ていない。祝賀会の手配などできるはずも無い。しかも、授与式は明後日なのだ。今からでは場所を押さえるのも難しいだろう。


「確かに、王都に居なければ準備もできんか。もしやもすると、ギルドで準備しているかもしれんぞ」


「それは有り得そうですね。祝われるのがエストリア筆頭と謳われるキースの両親のパーティと、あのデヘントのパーティですし」


「……副団長はデヘントさんと面識がおありですか?」


「ああ、詳しい事は今も言えんのだが、ある作戦で一緒に行動した事がある。こう、何と言うか……ライアルとはまた違った意味で凄い男だった。あの男だけは敵に回したくない」


おどけた感じで言っているが、目は笑っていない。本気でそう思っている様だ。


(騎士団でも相当な強者にここまで言わせるなんて……今度デヘントさんに訊いてみよ)


「そんな著名なパーティと、冒険者になってあっという間に銅級に認定されたお前さん達のお祝いだ。しかも、4年半振りの王都帰還という事もある。ギルドと冒険者総出で、派手にやるのではないか?」


そう言って、マテウスが、冷たいお茶のお代わりを注ぐ。しかも、自分の分だけでなく全員の分だ。この男は大貴族の生まれであるのに、側仕えや格下の者が行うような雑事も、手の届く範囲であれば自分でやってしまう。


(大貴族出身の騎士団長ではあるけど、戦場に出る騎士として培われた部分なんだろうな。『命のやり取りしに来ているのに、人にやってもらうのなんて一々待っていられるか!』みたいな)


そんな事を考えながらお礼を言い、お代わりを一口飲む。


「それは十分に考えられますね。後程確認致します。気づかせていただきありがとうございます」


□ □ □


近衛騎士団の管理事務所を出たキースとニバリは、今度は魔術学院の理事長の執務室に来ていた。


「ニバリ、4年半もの遠征お疲れ様でした。これ以上ない成果でしたね!しかも『呪文』まで習得して……おめでとう!」


マリアンヌがニバリと再開の挨拶をし、その功績を褒め称える。


「とんでもございません。これもひとえに理事長先生の教えの賜物でございます」


テンションの高いマリアンヌとは対照的に、ニバリはいつも通り静かだ。


「ふふふ、今や世界で2番目の魔術師にそう言われるのはくすぐったいですね。少しゆっくりして、これからも頑張ってください」


「それでですね先生、『呪文』の指導についてなのですが」


お土産に持ってきた焼き菓子を一つ摘み、キースとニバリで考えた計画と、『転移の魔法陣』の設置についてマリアンヌに説明する。


「分かりました。魔法陣については部屋を用意しますね。二人とも、本当にありがとう」


王城の敷地内でも無いし、元々魔術学院の卒業生は正門の鍵を自分で開けて入る事ができる。『転移の魔法陣は不可』とする理由は無い。


『呪文』の指導も、予定通り当面の間は4日に1度、5年生のみと決まった。指導官が増えてくれば4年生以下にも拡充してゆく予定だ。


マリアンヌはメモに何やら書きつけると、席を立ち『物質転送の魔法陣』でどこかに送る。学院の建物の管理担当に空き部屋の用意を依頼した様だった。


「授与式、遂に明後日ですね。教え子が同時に3人も表彰されるなんて……楽しみです」


マリアンヌは嬉しそうに顔をほころばせる。キース、ニバリに加えデヘントのパーティのラトゥールもいる。それは嬉しいし誇らしいだろう。


「授与式の後は昼食会が行われるそうなのですが、そうなると終わるのは3の鐘程でしょうか? 」


「そうね、今回は表彰される人数が多いから授与式自体が少し長くなりそうよね。そうすると、やはりそれぐらいじゃないかしら?」


「なるほど……」


「何かあるのかしら?」


「騎士団長からお話があったのですが、おそらく祝賀会を行う事になるのかなと思いまして」


キースは先程マテウスが話した事をマリアンヌに伝える。


「確かにそうね……手配するにしても、まずはディックに話をしてからの方が良いわね。既に手配済みかもしれないし、参加人数が分からなければ場所の手配もできないもの。そもそも、王都で登録されている冒険者って何人ぐらいいるのかしら?5、600人ぐらい?もしほとんどの冒険者が参加するとなったら、余程大きな建物でも入り切らないわよね」


「そうか、そこも考えないといけないのですね……せっかくお祝いしに来てくれたのに入れない何てあんまりです」


その後も、ニバリやラトゥールはもちろん、ミーティア副団長が学院生だった頃の話や、ギルドマスターであるディックの若い頃の話など、周囲にいる魔術師達の話に花を咲かせる。盛り上がっていたところに、『物質転送の魔法陣』が起動した。


マリアンヌが送られてきたメモを手に取り目を落とす。


「部屋の準備ができたそうです。行きましょう」


部屋は理事長の執務室の隣の隣の部屋だった。


「指導官の人数が揃ったら、ここを控室にすれば良いわね。机や椅子、ソファーなども用意しておきましょう」


「ああ、それは良いですね!では早速……」


これまでと同様に、『転移の魔法陣』を取り出しドラゴンの牙で床に固定してゆく。固定が終わったら動作確認をして終了だ。


「では先生、初回は、えーと……6日後になりまして、担当は私、4の鐘に合わせて参ります。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく。楽しみにしていますよ」


「はい!ご期待に添えるよう頑張ります!」


□ □ □


キースとニバリは魔術学院を出ると、今度は冒険者ギルドに向かった。間もなく夕方という人混みの中、できるだけ速く(キースの技術ではほとんど変わらないが)馬車を進ませる。


(もうすぐ5の鐘だな……早く用事を済ませないとギルドが忙しくなってしまう)


「キース、私は通用口の前で待機するから中から開けてもらえるか?何年も戻っていない人間が現れると騒ぎになる可能性がある」


「確かに!みんな一緒なら大丈夫でしょうけど、ニバリ一人ではおかしいですものね」


「うむ」


4人パーティのうち1人だけ先に王都に戻ってきた、なんていう状況は流石に不自然過ぎる。


ちなみに、冒険者ギルドの通用口を外から開けることができるのは、魔力登録をされているギルド職員のみである。


「ではちょっと待っててください」


そう言い残してキースはギルドの建物に入って行く。建物内は、どの窓口も空いており人影もまばらだ。あと鐘一つ分も経てば忙しくなるだろう。


(さて、ディックさんは……お、いたいた)


ディックはカウンターの中で、書類を片手に男性職員と何やら話をしている。


(話し中か……ちょっと待合室で待とう)


そう思って移動しようとした時、カウンター内から女性職員が出てきて、キースに声を掛けてきた。


「いらっしゃいキースさん……もしかしてギルドマスターにご用ですか?」


(ハリーのお姉さんの……そうだ。確かマーガレットさんだ)


ハリーは、魔術学院でキースの一学年下の後輩だ。一般市民クラスの5年生で、トップ3の1人という中々の素質の持ち主である。


「お疲れ様ですマーガレットさん。マスターにちょっとお尋ねしたい事がありまして」


「分かりました。お伝えしてくるのでちょっと待っててくださいね」


「え、あ、お話中みたいですし、終わってからで大丈夫ですよ!?」


思わぬ言葉に、慌ててマーガレットを止める。


「『キースが来て俺に用があると言ったら、来客中以外はすぐに声を掛けろ』と言われているの。だから大丈夫よ」


マーガレットはうふふと笑い、カウンター内に入りディックに声を掛ける。3人がキースの方に向き、ディックが手招きをした。


カウンターの中に入り、ディックを先頭にそのまま執務室に向かう。


「ディックさん、裏にもう一人いるので通用口から入れたいのですが」


「……分かった。入れたら執務室に来てくれ」


「承知しました」


突き当たりにある通用口の扉を開け、ニバリと合流し執務室に入る。


執務机の前に置かれたソファーに掛けると、ディックが神妙な顔で切り出した。


「ニバリ、まずは行かせっ放しで一度も戻せなかった事を謝罪する。すまなかった。俺ではどうにも力不足だった。そして、依頼達成おめでとう。無事戻ってきてくれて嬉しいぞ」


「ありがとうございます。状況的に戻れないのは皆承知していました。お気になさらず」


そう言って差し出された手を握る。

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お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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