第143話
【更新について】
本日2話目となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
※本日2話目の更新です。
【前回まで】
ダンジョンの深層域にあった建物は、セクレタリアス王国期の施設でした。水槽の中に入っていた謎の液体を回収し、さらに下に降りる階段を探し探索を続けます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
結果として、魔物もいなかったし、下に降りる階段見つからなかった。
諦めの悪いある人物の要望で、フロア内の建物と屋外をもう一周したが、それでも見つからない。
「そういう事もある。またの機会を願うしかない。よし、これで最終確認を終了とする!」
ある人物は著しく凹んだが無いものは仕方がない。それもダンジョンである。
最後に、例の水槽があった建物を正面から見た図と、入口の門の図を書いておく。
(街中が魔力で満たされ、一般市民でさえ魔導具に囲まれていた生活……どんな感じだったのだろう。いつかそういう日が訪れるのだろうか)
キースはそんな事を考えつつ、下層域への階段を登りながら最後にもう一度振り返り、その建物を目に焼き付けた。
『転移の魔法陣』を回収し、魔物を避けながら地上へ向けて戻ってゆく。
ライアル達だけでも『転移の魔法陣』で戻る事もできたが、ライアルの「このメンバーでダンジョンに入るなんて、最初で最後の可能性が高い。せっかくだから一緒に行こう」という意見で、皆で歩く事になった。
(そうか……報奨の授与式が終わったら、もうお父さんやデヘントさん達とはお別れだものな。後で、この後どうするのか訊いてみよう)
地上に出る階段のすぐ裏に『結界の魔法陣』を設置し、横に『北西国境ダンジョン管理事務所・冒険者ギルド支部管理。触れないでください』という貼り紙をする。
『層の構成が変わっても、魔法陣がそのまま残るのかどうか』の実験だ。
そのまま残るのであれば、地上から直接中層域、下層域、深層域に行く事ができ、ダンジョンの探索は大幅な効率アップが見込める。
地上に出てた後、ライアルが改めて解散を宣言し、ライアルとキースはそのままメルクス伯爵に報告へ向かう。
「ドラゴンがいて皆で倒したとは聞いたが……無事帰ってきてくれて何よりだ」
「ありがとうございます。私共もさすがに驚きましたが、何とかなりまして」
「デヘントに見せてもらったが、凄い魔石であったな!あれ程の大きさのものは初めて見たわ」
約15kgの魔石にメルクス伯爵も興奮気味だ。
「それで、下層域以降の様子なのですが……」
ライアルがざっと説明する。
「なるほど、古代王国期の遺跡が構成されていたと……その様な事もあるのだな」
「はい、誠に不思議なものでございます」
「だが、時期が来ればまた構成は変わるのであろう?とりあえず、そのままで良いのではないかと思うが」
「はい、私共も同じ結論でございます」
「うむ、では『運用に支障無し』という報告と共に、お伝えしておくとしよう。知っておけば何かの役に立つ事があるかもしれん。それで、報奨の授与式なのだが……」
「7日後の11の鐘から行いたいという事だが、都合はどうであろうな?」
「はい、問題ございません。格好は……これでよろしいのでしょうか?」
「皆冒険者なのだからそれが正装であろう?問題無い」
(おばあ様は髪を結って特注のかんざしとドレスで着飾って、縁のある貴族家で行儀作法まで習って、バッチバチに仕上げたという話だけど、それが特別だったんだろうな)
「承知致しました。では皆に3日後という事で周知します」
「うむ、よろしく頼む」
「ダンジョンの運用開始は授与式後、でございますね?」
「うむ、そうなる。でだ、運用開始後、冒険者が多数訪れる事が予想される。少し落ち着くまでこのまま居てもらう事はできるか?」
ライアルとキースは顔を見合わせ頷きあう。
「かしこまりました。確かに、皆が不慣れでございますから、混乱も考えられますね」
特に宿泊施設などは、ダンジョンに初めて導入される施設だ。従業員も冒険者も慣れていない。勝手な振る舞いをする不届き者や、今の段階では想像もつかない事が起きるかもしれない。
何かトラブルがあっても、仲裁に出てきたのが銀級のプレートを持ったライアルであれば、力づくで無理矢理という事は無いだろう。
「うむ、皆が居てくれると非常に心強い。それにしても、管理官は誰になるのか……早く引き継ぎたいのだがな」
「……お察し致します」
メルクス伯爵はあくまでも『交渉担当者』であって、管理の責任者では無い。誰もいないからそのまま仕事をしているだけなのだ。
(ダンジョンを確保して既に3ヶ月近く。さすがに遅すぎるよな。王都から半月掛かる訳だし。貴族間の駆け引きとか派閥の力関係とか、色々あるのかな?)
「まあ、ボヤいても仕方がないから仕事はするがの。では、授与式とその後の滞在の件、よろしく頼む」
「はい、かしこまりました!」
管理事務所を出ると、そのまま食堂に向かう。先に行っていた皆と合流し、食事をしつつ伯爵の話を伝える。
「人が増えれば、その分色々な人がやってきます。最初が肝心ですね」
「……まさにそういった輩があそこにいるのだが」
アリステアがちらりと視線を向ける。
視線の先では、4人組の冒険者が食事と酒を楽しみながら、大きな声で話をしている。もうそれなりに酔っ払ってきている様だ。周囲の白い目など全く気にする様子も無い。
ダンジョンの「間もなく運用開始」の話を聞きつけて、待っているのだろう。露出している魔石は、当然最初に入った方が回収できる見込みは高い。
「それにしてもよ、こんな国境沿いのド田舎なのに、何なんだこの店!何頼んでもやたらうめぇな!」
「あぁ!酒も良いし、これで稼げるダンジョンなら、ずっと居ても良いな!おい姉ちゃん!これおかわりだ!」
ウェイトレスに向かってジョッキを掲げる。王都の店舗からやってきた人間にとって、この客層はキツいだろう。ウェイトレスの笑顔は引きつっている。
「宿泊施設があるってのも助かる。新米の頃を思い出すのがちとアレだが」
パッと見からは、戦士、戦士、スカウト、魔術師の様だ。いずれも30歳手前ぐらい、魔術師は20歳そこそこだろう。
その魔術師だけは一人黙々と食べている。
「あぁ?おい、何見てんだ?なんか文句あんのか?」
皆の視線に気が付いた戦士1が、アリステア達のテーブルに近付いてくる。
「もう少し静かにしろ。ここにいるのはお前達だけでは無い」
戦士1の方など見もせずに言い放つ。
それが戦士1を強く刺激する。
「……姉ちゃんよ、おめぇ俺達に難癖つけてタダで済むと思ってんのかよ?」
(す、凄い!典型的なチンピラみたいなセリフ!今どきこういう人いるんだ……)
「おお?何だよこっちは?女だらけじゃねぇか!お前も揉めてねぇで、一緒に楽しくやろうぜ!おい、お前達もこっち来いよ!」
スカウトの男が後ろを向き、もう一人の戦士と魔術師に声を掛ける。
黙々と食事をしていた魔術師が、皿から顔を上げてそちらを見る。見るからに面倒くさそうな表情である。
「……お父さん、そういえば」
「お父さん!?何だ僕ちゃん、パパと一緒に冒険者の、魔術師の真似っこかな?もう夜だからね、危ないでちゅから、早くお家帰って寝んねしな。あ、お姉ちゃんは置いていけよ?」
「僕達が、駐屯地の襲撃を退けた時の事ですが、ちょっと再現してみますね」
戦士1の言葉を無視してライアルに告げる。
奥のテーブルからキース達の方を見ていた魔術師が、何かに気が付いた様にハッとした表情になり腰をあげる。
「おい、キーs」
「おい、やめろ!その少年は」
ライアルと魔術師が声をあげたと同時に、キースが地面を杖でトンと軽く一つ突いた。
次の瞬間、2人の戦士、スカウト、魔術師は頭だけ出した状態で床に埋まっていた。
食堂の床は木、その下は土だ。
(<状態変化>の魔法で、2種類をほぼ同時に変化させ、即元に戻した……のか?だが、椅子やテーブルの下は変化させずにそのまま? 意味不明過ぎる……)
ニバリは心の中で唸った。自分も呪文を詠唱しての魔法が発動できる様にはなったが、キースとの差は全く縮まっていない様だ。
「と、こんな感じで地面の状態を変化させて埋めたんです。そのまま捕縛もできて便利なんですよ」
「な、なるほどな……これは凄いな」
ライアルは、店の床から男達の頭だけが生えているという不思議で不気味な絵面に、ありきたりな反応しか返せなかった。
「でもちょっとうるさ過ぎますね。静かにさせましょう。<沈黙>」
パニックになり喚き散らしている2人の戦士とスカウトの声が聞こえなくなる。
「さて、魔術師のあなた。僕をご存知の様ですが何を言おうとしたのですか?続きをどうぞ?」
ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!
お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)




