第13話
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テント内の仕切り壁の向こう側で横になっていたアリステアは、ふと目を覚ました。
まだ外は暗い。日の出は5の鐘過ぎのはずだ。
(それより前という事は4の鐘ぐらいかな?)
と考えていたら、まさに4の鐘が鳴った。
この「時を知らせる鐘」も当然魔導具である。
音が「5の鐘 ゴーン」と「1の鐘 カーン」の2種類あり、「11の鐘」であれば、「5の鐘2回・1の鐘1回 ゴーン・ゴーン・カーン」と組み合わせて鳴る。
他に特徴としては「国中のどこにいても聞こえる」「鐘楼の近くにいても遠くで鳴っている様に聞こえる」「意識のない者には聞こえない」というものだ。
なので、夜中も起きて仕事をしている人間の為に昼夜問わず鳴っている。
でも寝ていれば聞こえないので問題ない。まさに「The 魔導具」であった。
枕元に置いた水を少し飲み、身なりを整えてテントの外にでる。変わらず篝火が焚かれ、周囲は明るい。
警戒にあたっている冒険者達は、夜明け前とキツい時間帯ではあると思うが、比較的元気な様だ。
鐘2つごとに休憩も入るし、食料も水も十分ある。
場所が川の中州という事で、近づいてくる者がいればすぐに分かる。そこまで集中していなくても充分に警戒できる。
周囲には見知った顔も多く、新規ダンジョンに関わるなんて早々ある事でもない。士気は高いようだ。
アリステアは、自分とギルドマスターが到着した時に、デスモンドが「< 探 査 >したら遺跡の周辺の森に人間の反応があった」という話を思い出していた。
(あの時感知した人はどうなったのだろう・・・)
川を渡るのは目立つし無防備だ。こちらの人数が増え警戒も厳しくなった。
ターブルロンド側に戻るに戻れなくなり、まだ遺跡周辺で監視を続けている可能性もあるのではないか?
アリステアはギルドマスターを探し、自分の考えを伝える。
「確かに、その可能性はあり得るな。よし、ちょっと一回りしてきてもらってもいいか?」
「一人で休ませてもらったからね。元気いっぱいだよ!」
「複数人いる可能性もある。何かあれば音とか光とか出せ。すぐ応援に行く」
「閃光弾があるから、かち合ったりしてバレたらそれを使うよ」
「おう、よろしく頼むぜ」
アリステアは中洲の上流側から渡る事にした。
ダンジョンの入口は下流寄りにできている。
もし、遺跡側の森からこちらを見るなら、下流側にいた方が監視しやすい。
であるならば、上流側から川を渡れば目につきにくいだろう。
川を渡り河原を素早く横切る。土手を登って森に入れば少し安心だ。
一息ついて、そのまま少し森の中に分け入る。
森の中から川を監視するなら、土手と森の境い目ギリギリ辺りに伏せる必要がある。
そうでないと単純に見えないからだ。
ということは、少し森の内側を進めば、監視に集中している相手の後ろが取れるかもしれない。
姿勢を低くし、土や植物以外の匂い(食べ物や汗、肌や服についている香料とかだ)・布が擦れる音等、本来森には存在しない変化を感じ取るべくゆっくり歩く。
「パキッ」
左手前方、枝の折れる音だ。一旦右手に大回りし後ろへ回り込む。
後ろへ回ったところで、ちょうど登りやすい木があった。上に登って確認してみる。
やはりいた。
どうやら、男が3人。格好は・・・戦士風が2名、もう一人は魔術師だろうか。
正直、それ程強くは無い様だ。
それに、デズモンドが感知したのが彼らのうちの誰かなら、昨日の夜からずっと監視しているという事になる。
睡眠もとれていないだろうし、肉体的にも精神的にも疲れて集中できていないだろう。
それもあって先程も音を立てたのだ。
(完全に気が抜けているし、これは私だけでもイケそうだな・・・)
アリステアは、そのまま近くの木に飛び移りながら進み、3人組の後方5m程のところまできた。
ベルトのポーチに手をやり小袋を取り出す。この中にはいわゆる「しびれ薬」が入っている。
以前、複数の魔物に追いかけられ、撒くのに苦労したことから用意したものだった。
袋の口を開け、後方の樹上と、最高の位置から少しずつ撒いていく。
そのうち、茂みに分け入った時の様な「ガサガサッ」っという音が聞こえた。
一応もう少し撒いて、さらに50数える。
静かに近づくと、先程の3人が、下生えに頭を突っ込んだ不自然な格好で転がっていた。
(効くな、これ・・・また買っておこっと)
キャンプに戻って説明するより、こちらに来てもらった方が楽だ。
非力な自分では成人男性3人も運ぶことはできない。
松明に火を付けぐるぐると円を描く様に動かす。「集合」を意味する、明かりを使った合図だ。
冒険者ギルドに新規登録をした時に教えられる、共通の合図である。
(まさか実際に使う事があるなんて・・・)
魔導具と比べるとかなりアナログだが、知っていれば役に立つ事もある。
迎えに来たパーティが3人を縛り、装備品や魔導具を回収する。
痺れが治るのを待った後、中洲のキャンプへ連行し尋問を開始する。
結論からするとやはりターブルロンド側の見張りだった。
光の柱を見てダンジョンの入口を確認、その事をギルドに報告したところ、まとまった人数が揃うまで監視して欲しい、と頼まれたそうだ。
アリステアと彼ら行動を合わせると以下の様になる
光の柱が立つ
↓
アリステア現場確認。王都へ向かう。
↓
3人組現場確認。1名が最寄りの街のギルドに報告に行く。
↓
アリステア王都着。冒険者達出発。
↓
ギルドから1名戻り。ギルドの依頼を受け現場監視開始。※遺跡側から監視
↓
王都から冒険者到着。警戒開始。デズモンドが3人のうち1名を魔法で感知。
↓
1名が、エストリア側の冒険者が到着した事をギルドに報告に行く。
↓
ギルドマスター・アリステア到着。
↓
ギルドから1名戻り。3名で監視継続。
↓
3人組捕まる
3人はとりあえず縛っておき、国軍が到着したら引き渡しという事になった。
誰かを害したという事でも無いので、罪は密入国、強制労働6ヶ月、といったところか。
ターブルロンド側は、エストリア王国側が多数の冒険者を出し、入口を押さえている事までは知っている。
当然、国軍が後から来る事も予想しているだろう。
個々でも高い戦闘力を持つ冒険者の集団、後からどれだけくるか判らない国軍、この状況を覆すにはかなりの大部隊を展開する必要がある。もはや戦争である。
(これはどうやらこちらの勝ちのようだ)
まだ誰も口には出さないが、そう考える。
この場にいる誰もが、疲れを感じながらも達成感と充実感に包まれていた。
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