表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/341

第132回

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ


【前回まで】


ドゥーゼール子爵に色々ネタばらしをしつつ、ダンジョンの帰属問題は無事決着しました。整備も進みますが、あの人達を返さないといけません。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「キース、フルーネウェーフェン子爵達はどうやって返すんだ?」


「はい、ダンジョンで行方不明になった人達ですので、他の場所で見つかると色々と都合が悪いです。なので、ダンジョンに戻そうかと思います」


「装備も道具も無いけど、30人いれば問題無いわね。魔術師もいるし」


「はい、置き場所も最上層にしようと思います。今更死なれてしまってもですし。で、良さげな場所に『転移の魔法陣』を置きに行きたいので、お付き合いお願いします」


「分かった。一緒に行こう」


ライアルに伝えて、4人でダンジョンに入る。幸い、フロアの変化は発生しておらず、上層域は「森林』のままだった。


「これは都合が良いですね!『眠りの魔法陣』を置いた、池のほとりに置きましょう」


道中で見掛けた魔物については倒してゆく。いくら特性もあり、普段から鍛えている冒険者とはいえ、最初のパーティは既に一ヶ月以上寝ている。それだけ日数が経っていれば、起きたばかりでは身体がうまく動かない。事故の可能性は下げておきたい。


『転移の魔法陣』を設置しダンジョンを出た後は、馬車で駐屯地の倉庫に向かう。手の空いていた、デヘントのパーティの、ラトゥールとローハンにも一緒に来てもらえた。力仕事には、大人の男手があった方が助かる。


「では、最初に……」


まずは、床に書かれた『眠りの魔法陣』を無効化しなければならない。


キースが鞄から小瓶を取り出し、中身の液体を魔法陣の一部に垂らす。すぐに液体が掛かった部分が滲みだし、そこを布で拭き取る。


一部が崩れた為、薄青く光っていた魔法陣は効力を失い光を失った。


冒険者達を『転移の魔法陣』の上に動かし数人まとめて転移させてゆく。


「寝かせる姿勢なのですが、いかにも『誰かが並べました』みたいな感じでは無く、できるだけ自然な感じでお願いします」


「確かにそうね。分ったわ!」


うつ伏せ、仰向け、横向きなど、色々な格好をとらせる。



「こんな感じでどうだ?」


全員を寝かせ終わったアリステアが手を叩いて埃を払う。


「はい、ありがとうございます。では、『結界の魔法陣』を置いて……起動と」


キースは、草むらの中に魔法陣を設置する。


「それは寝ている間に襲われない様にだな?」


「はい、後は自然と目が覚めますが、無防備な時間を減らすために時限式のものを置いておきます。では帰りましょう。アーティ、僕とクライブは倉庫に戻って馬車で戻りますので、ここの魔法陣の回収をお願いします。皆さん、お疲れ様でした!ありがとうございました!」


そう言ってキースとクライブは倉庫へと転移した。


「よし、魔法陣も持ったし、私達も帰ろう」


アリステアは歩き出してから振り返り、池のほとりで眠っている、フルーネウェーフェン子爵と冒険者達を見てほくそ笑む。


(さて、目が覚めてどういう反応をする事やら。近くで見られないのが残念だ)


そんな事を考えながら、ダンジョンを後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


地面に寝かされている集団の中で、最初に目を覚ましたのは、やはりフルーネウェーフェン子爵だった。


(ここは……どこだ……?これは、地面、か?)


身体を動かそうとしても、何やら上手く動かない。自分の身体では無いというか、錆び付いてしまった金属部品の様な感じだ。


無理に動かさず、もう一度目を閉じる。


(そうだ、冒険者達を救出にダンジョンに入ったのだ。中層域から魔物が妙に興奮していた……数も多く……)


(だが……そうだ、救援が来たのだ。大柄な戦士、女神官、双剣使いの女、魔術師の小柄な少年……)


(戦士の背に背負われたまでは覚えている。だが、この魔素の濃い空気……なぜまだダンジョンにいるのだ。彼らはどこに……)


フルーネウェーフェン子爵は目を開け、起き上がる為に身体を動かしてみる事にした。


うつ伏せの状態から、ゆっくりと肘を曲げ、肘を付いた腕立て伏せの様な姿勢をとる。


そこからさらに膝を曲げて四つん這いになった。


(3分ぐらい掛かったな……)


そこから足を動かし胡座をかく。気が付いてみれば、装備品はもちろん、服すら着ておらず下着姿である。


(なんだこれは……どういう状況なのだ?)


起き上がった事で、やっと周囲の様子が目に入った。


「なっ、なんだこれは……!?」


冷静沈着な子爵でも、思わず声が出た。そして、大きな声を出したせいで激しくむせた。


それもそのはず、周囲の地面には多数の人間が倒れていたのだから。


「何人いるのだ……30人程か?そもそも生きているのか?」


子爵は、一番近くに寝ている男に近づこうとしたが、立ち上がれずに前転してしてしまった。


あまりの光景に、自分の身体が上手く動かない事すら忘れてしまっていた。


そのまま四つん這いのままで近づき、男の肩を叩きながら大声で呼び掛ける。


「おい、大丈夫か!?おい!おい!」


男の瞼がピクリとし、目が開き始める。


「k、ここh……!? し、子syk様!?え、あ、なんd、k、かrだg」


身体が動かないだけではなく、声をもちゃんと出ない様だ。


「そのまま大きくゆっくり深呼吸をしろ……どうだ?どこか痛む場所は無いか?見たところは怪我も出血も無いが」


数回深呼吸をして、多少頭もはっきりしてきた様だ。


「h、はい、ありがtuござiます。怪gはd丈夫の様ですが、自分の身体では無いkの様に動きません」


「私もだ。まるで寝たきりの病人の様だ……今、お主は私の事を『子爵』と呼んだな?やはり冒険者か?」


「は、はい!コルナゴスの冒険者ギルドに所属しております、魔術師のジャンと申します」


「ふむ……お主は自分達のパーティだけで入ったのか?合同で、救援として入ったのか、どちらだ?」


「わ、私達だけでございますが……」


ジャンは不思議そうに答える。


「そうか、そうなると、お主らが最初に行方不明になったパーティだな。となると、ここで寝ている者達は、後から救援目的でダンジョンに入った冒険者であろう」


ジャンはその言葉を聞き辺りを見渡すと、自分のパーティの仲間を見つけた。


「た、確かに仲間がおります……それに見知った顔も何人か……閣下、その、私達が行方不明というのは……」


フルーネウェーフェン子爵は経緯を説明した。


「では、私達の為に閣下にまでご迷惑を……申し訳ありませんでした」


「いや、そこは良い。自分で行くと決めたのだ。しかし、遭難した者が全員ここにいるというのはどういう事だ?私は救援のパーティと合流したはずなのだが……そうだ」


「ジャンよ、そなた覚えている最後の記憶はダンジョンのどこだ?」


「はい、ここでございます。池がありましたので、降りる前に一息入れようと考えました」


「ふむ……階段を見つけ、近くの水場で休憩して準備を整える。ごく当たり前だな……よし、他の者も起こして話を聞こう。魔法で起こすぞ……<強風>!」


制御された風が、冒険者達の髪と肌を撫でながら通り抜け、吹き続ける。


肌に直接風が当たる刺激で、皆目を覚ましはじめた。皆自分の格好(下着だけだ)や、身体が動かない事に気が付き、呻き声や叫び声が周囲に響き始める。


「皆聞けい!私はダンジョンの管理官、フルーネウェーフェン子爵だ!注目せよ!」


フルーネウェーフェン子爵は何とか立ち上がり、一帯を見下ろしながら声を掛けた。


一瞬で沈黙が訪れ、皆何とか声のした方を見ようとするが、身体が動かない為もぞもぞしている。


「……無理に起きずとも良い、そのまま聞け。ここはダンジョンの中である。周囲にいるのは、先日救援目的でダンジョンに入った仲間達だ。とりあえず安心せよ」


「怪我をしている者、体調が悪い者はおるか?……大丈夫か?とりあえず、ゆっくり身体を動かしてみよ。動ける様になった者は、動けん者を手伝ってやれ」


しばらく待っていると、起き上がれる者が増えてきて、間接の曲げ伸ばしを補助したりと、互いに身体をほぐし始める。


「……よし、そろそろ良いか?各パーティ毎に集まり、自分達が覚えている『ダンジョン内での最後の記憶』を話し合い、私に教えなさい」


話し合いを終えた5人のリーダーから聞いた話は驚くべきものであった。


全てのパーティがこの『池のほとりで休憩した』事までは覚えているが、そこから先の記憶が無いという。


(……どういう事だ。ジャン達も含めて6パーティがここで休み、その後意識を無くしたというのか?)


各パーティのリーダー達も、思わぬ結果に困惑した顔を見合わせている。


「よし、ここに何かおかしな兆候が無いか、皆で周辺を調べよ」


子爵の指示を受け、冒険者達は、まだ動きの鈍い身体で辺りを探り始める。



「閣下、よろしいでしょうか?」


ジャンのパーティのスカウトが手を挙げてフルーネウェーフェン子爵を呼ぶ。それを見てジャンもやってくる。


「これなのですが……これは……何かの記号でしょうか?」


彼がつまみ上げたのは、薄く透明でぴらりとした『༄』だった。


魔術師である子爵とジャンにはすぐに解った。


(魔法陣に使われる記号!)


「地面に魔法陣があるぞ!魔術師以外は地面を荒らさぬ様にそっと離れよ!魔術師は足元を徹底的に調べるのだ!」


子爵と魔術師6人は、一斉に地面に四つん這いになり、重点的に調べ始めた。


『魔法陣がある』と意識し始めたせいか、透明な記号や文字、直線、曲線等の魔法陣を構成する要素がどんどん見つかり始めた。


そして、それぞれが見つかっただいたいの位置に合わせて置いてゆく。魔法陣を再現しようというのだ。


(果たしてどの様な魔法陣だったのか……そしてなぜここに……)


フルーネウェーフェン子爵が並べられた記号類を見つめながら考えていると、子爵の護衛として付いていた中年の魔術師が手を挙げる。


「閣下、私には……この左半分などが『眠りの魔法陣』の様に見えまする。いかがでしょうか?」


「眠りの魔法陣……私も研究書で見た事があるだけだな。誰か他に知っておr」


そこまで口にした時点で一気に閃いた。


(皆この『眠りの魔法陣』の上で休憩したから寝てしまったのか?だから全員ここまでしか記憶が無いという事か?」


(動かない身体……まるで寝たきりの……病人の様な……まさか、身体が動かせなくなるまで寝ていたというのか!?だとしたら一体何日経っているのだ!)


「くっ!急いでダンジョンを出るぞ!我らは半月以上寝ていた可能性がある!着いてこれない者は後から来い!」


(あの状況で半月以上経っていたとしたら、どの様な状況になっていてもおかしくないわ!)


しかし、外は、想像していた以上に酷い状況である事を、彼は知る由もないのであった。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)ポチポチ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ