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第129話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


転移の魔法陣の試運転を終えた後、各種魔法陣の売却と提供の契約をしました。イングリットも国務長官も大喜びです。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それでは皆様方、本日はお時間いただきましてありがとうございました。魔術契約をお願いするという不躾な申し出にも応えていただき、感謝に堪えません」


「礼を言うのはこちらの方だ。『転移』はもちろん、様々な魔法陣は、間違いなく業務の効率化と質的向上に繋がる。仕事が楽になれば、身体にも心にも余裕が出るからの」


「先生、ありがとうございました。お譲りいただいた魔法陣を上手く活用して頑張ります!いつか自分でも作ってみたいです!」


「殿下でしたら、きっと成し遂げられます。疑問点などございましたら、いつでもご連絡ください」


「できれば直接ご指導をいただきたいのですが、現状、全く余裕がありません。先生の魔法陣に癒してもらいます……」


イングリットは眉を八の字にしながら嘆いた。


「キース、今後の行動予定はもう決まっているのか?報奨の授与式も予定されている。あまり遠くには行ってほしくないのだが」


「これは、まだ私が一人で考えているだけなのですが……ある程度の期間、ダンジョンの整備現場に留まろうかと考えております」


キースは大人3人組を見る。



「理由は幾つかございまして……1.情勢が安定していない事。2.各種施設も完成しておらず稼働に至っていない事。3.一息入れつつ腰を入れて研究、整理したい事、となります」


「1については、現状アーレルジ側からの返答も届いておりません。こちらが示した条件で受けるのか、それとも無理にでも奪いにくるのか、全く不明でございます。この様な状況では離れる事はできません」


「2についても、あのダンジョンの奥深くには、ほとんど人が立ち入っていない状況です。深層域はもちろん、下層域ですら未知の世界です。潜ってみたらとんでもない大物がいた、などとなったら大変な被害が出てしまいます。両親か私共のどちらか、又は合同で一度潜る必要があると考えております」


「3については……私が冒険者となり2ヶ月と少々が経過致しました」


(たったの2ヶ月でこの成果というのが、全く信じられないがな)


キース以外の全員が心の中でそう考える。


「それ以降、途切れる事なく、かなり目まぐるしい日々を過ごして参りました。先に挙げた項目の事もございますので、ここで一旦落ち着き、ここまでに知り得た知識や経験をまとめ、頭の中を整理したいと考えました。それを怠ると、また新たに知見を得た際に混乱し、存分に活かすことができないのではないかと」


この後にはエレジーアと話をするのだ。あの部屋の本も全て読んだ訳では無い。本と本人(ぬいぐるみだが)からどれだけの未知の知識と技術を得られる事か。新たに得たものを整理し自分の物にする為には、ここまでの事も整理しておく必要がある。


「皆さん、それで良いでしょうか? 後出しになってしまって申し訳ないです」


「いや、良いと思うぞ。私達も言おうと思っていたんだ。『少しゆっくりしよう』とな」


「せっかく久しぶりに両親に会えたのですから、学院での事とか、色々聞かせてあげないと。ライアルさん達は、4年間会えなかった事をとても気にしてらっしゃるから」


「ダンジョン関連の事が全て片付いて落ち着くまでは、まだもう暫くかかるのは間違いない。ここまで全速力だったからな、じっくりいけば良いのだ」


「皆さん、ご理解ありがとうございます」


キースは笑顔で礼を言った。




「よし、では、通常時は『物質転送の魔法陣』で連絡を取り合う、という事で良いな?」


「はい、毎日の報告はいかが致しましょう?昼に一度、その他何かあれば適宜ご連絡、という事でよろしいでしょうか?」


「うむ、それでかまわんよ。メルクスに伝えてくれ」


「かしこまりました。お伝え致します」


最後に改めて面会のお礼の口上を述べ、アルトゥール以下の退室を見届けた後、4人は『碧玉の間』を後にした。




『北国境のダンジョン』でベルナルに馬車を返し、面会の詳細を説明する。


「あの方々なら無体な事にはならないとは思っていましたが、良い結果に終わって何よりです。それにしても、北西国境のダンジョンと王城が繋がるなんて……いや~凄い。凄い以外の言葉が出てきません」


「緊急用ですので、使う機会が無ければ良いのですが……」


「それは確かにそうですね……あ、一つ思いついたのですが」


「はい、何でしょう?」


「『転移の魔法陣』が使えるとなると、今日お会いした方々は、ダンジョンの整備が全て終わったら、『現地視察したい』と仰られるのではないかなと……」


「……それは十分考えられますね。供用開始記念式典とかも考えられます」


「ええ、陛下は『功があった方を皆で讃える』というのがお好きな方ですし、ちょっと頭の中に入れておいた方が良いかもしれません」


「はい、ありがとうございます。メルクス閣下にもお伝えします」




ベルナルに挨拶をして遺跡にあるエレジーアの部屋へ入る。


「お、戻って来たね。用は済んだのかい?」


「はい、無事に終わりました。ではさっそk」


「キース、エレジーア、お話を始める前に、二人に幾つか約束して欲しい事があります」


フランが真面目な顔で二人(片方は熊だが)を見る。


キースも何事かと居住まいを正す。


「キースの事は解っていますが、エレジーア、あなたは研究を始めると時間を気にせず、睡眠も食事も摂らなくなる方とお見受けしましたが、如何でしょうか?」


「……そうだね。まぁ、たまにそういう事もあったね」


(たまに?ほんとか?)

(嘘ですね。『常に』ですね)

(嘘ですな。せいぜい『概ね』だろう)

(……)


「彼もそういう意味ではあなたと同類ですので、あなた方を放置すると、人間らしい生活が営まれません。あなたはもう構わないでしょうが、彼はまだ18歳ですし、希望すればこの国の国王とも面会できる重要人物です。あまり不健康な生活を送って、今後に影響が出ても困るのです。よって、以下を定めさせていただきます」


フランは二人の返事を待たずにどんどん話を進めてゆく。


「1.この部屋と北西国境のダンジョンを結ぶ『物資転送の魔法陣』を設置する事。2.昼食を送りますので、届いた分は全てきちんと食べる事。食べている間は、研究の話をしない事。3.ずっと同じ姿勢を取らずに、少しでも身体を動かす事。4.5の鐘に合わせてメモを送るので、それを帰宅の合図とし、夜はここに泊まらない事。以上です。よろしいですね?」


「は、はい……解りました」


キースはちょっと残念そうな上目遣いでフランを見ながら頷く。


(か、可愛いですがダメなものはダメです!)


「……お前さん、全く信用無いみたいだね」


エレジーアも呆れた感じだ。


(あんたもだぞ!)

(同じ穴の狢というやつです)

(さすがに図太い……)


「で、では一度ダンジョンに戻って、各種魔法陣を設置してきましょう。で、昼食を摂ってからこちらに来ます」


「分かったよ。行っておいで」


(……良い仲間に恵まれているみたいだね。それにしても、若いだろうと思ってはいたけど、まだ18歳とは……末恐ろしいね)




駐屯地の倉庫経由でダンジョンの管理事務所に戻り、両親とデヘントに結果を報告する。


「そうか、無事に話がまとまって何よりだ。まぁ、無茶な事を言う方達では無い印象だったけどな。一度しか会った事は無いが……」


ライアルとデヘントのパーティは、ここに来る直前に催された壮行会で会った事がある


「ええ、ですが、あの方々にとって最優先なのは国の利益ですからね」


「そうだ。無条件に心を許すのはどうかと思うぜ。その辺りは慎重にな」


マクリーンとデヘントは本質的にはほぼ同意見だが、三者三様の返答が面白い。


「では、管理事務所の執務室に『物資転送の魔法陣』を置くのだな?『転移』の方はどうする?」


「モノがモノなので、できれば、閣下の居住スペースのどこかにと思っています」


「緊急用だし、それが良いと思うわ」


「よし、では閣下にご報告に行きましょう。キース達が戻って来たら部屋に来て欲しいと言われているからな」


皆で連れ立ってメルクス伯爵の執務室に向かう。


「皆よく戻った!首尾はどうであった?」


キースが詳細を説明する。


「そうか!では『転移の魔法陣』は、寝室の続きに使っていない部屋がある、そこに置くのがちょうど良いであろう」


「はい、大きい部屋である必要はございません。王城側の部屋も、元々清掃用具を仕舞っていた部屋でございますし。盗難などは心配無いとは思いますが、万が一に備え部屋に固定したいと思いますが、立ち入ってよろしいでしょうか?」


「うむ!よろしく頼む!」


部屋に移動し、王城の魔法陣と同様に、魔力を流したタイランントリザードの牙を四隅に刺してゆく。


「それと閣下……まだ少し先の話ではありますが、アーレルジとの約が成り、各種設備が整った暁には、陛下やイングリット殿下、国務長官が視察を希望されたり、供用開始記念式典などを行う可能性があるのではないかと」


「ううむ……それは十分に考えられるな。なんと言っても、『転移』で来る事ができてしまうのだ。時間も掛からんし危険も無い。考慮しておこう」



メルクス伯爵の前を辞し、皆で食堂で昼食を摂った後は、遂にエレジーアの部屋へと移動する。


馬車で駐屯地の倉庫へ向かい転移、帰りに魔法陣を回収し、明日以降は整備現場から転移する。


「そ、それでは行ってきます!」


キースは興奮を隠せず、緑の瞳をキラッキラに輝かせ、既に頬をピンクに染めている。


「ああ……程々にな」

「ちゃんと物資転送の魔法陣を手元に広げておくのよ?」

「帰りもここで待っているからな。楽しんで来るといい」


「はい!よろしくお願いします!ではまた後ほど!」


キースは自分で掛けた倉庫の扉の鍵を解除し、中へと入って行った。


アリステア達は、再び閉じた扉をしばらく見つめた後、顔を見合わせ、大きく溜息をついた。


「見たかあのピンクのほっぺ!まだ何もしてないのに!」


「目なんかもう緑水晶で作ったのかというぐらいにキラッキラしちゃって!」


「あの部屋を見つけた時と同じぐらい興奮してましたな!」


「楽しい事の前にあまりやかましい事は言いたくないのですが、帰ってこなくなってしまうのが解りきっていますからね……」


「そうなんだよなぁ。集中しちゃうとどうしてもな……」


「それが今迄に無い物を色々と生み出す源なのでしょう。ですが余りにも極端ですからな……程よいバランスが取れる様になると良いのですが」


お互いの意見に頷きながら、アリステア達は馬車に乗り込み、整備現場に戻って行った。

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