第121話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
※コピペミスで、中途半端な状態で投稿されていました。既に読んでいただいた方には、意味が通じず大変失礼しました。訂正致しましたので、改めてよろしくお願いいたします。
【前回まで】
アーレルジ側を懐柔する為、ダンジョンからの利益に関してこちらから譲歩を提案する事に。しかし、さすがに国王陛下の許可無しで、という訳にはいきません。アリステア達が王都へ移動します。
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「皆さん、準備は大丈夫ですか?そんなに長くは掛からないとは思いますが……」
メルクス伯爵の執務室を出て、部屋へ向かいながらキースが尋ねる。
「行くのは王都だからな。特には無いぞ」
アリステアが答えフランとクライブも頷く。
「分かりました。ではすぐに行きましょう」
キースは部屋に入ると、書類筒からエレジーアの部屋の魔法陣と対になっている魔法陣を取り出し、床に置く。
「皆さん乗りましたね?ではいきます」
キースが魔法陣を起動させる。部屋の中に青白い光を残し、4人の姿は消えた。
エレジーアの部屋の隅に姿を現したアリステア達は、そのまま直ぐに部屋を出た。扉に魔法で鍵を掛け遺跡の通路を足早に歩いてゆく。
(……やれやれ、魔力に反応して起動した時にはもういないとは、随分と慌ただしいね。まぁ私には時間は幾らでもある。戻ってきた時に捕まえられる事を祈ろうか)
遺跡から森を抜け、広場を横切ってダンジョンの管理事務所前に到着した。
扉を開けようと手を伸ばした時、横から声が掛かる。
「皆さん!?なぜここに……?」
声を掛けてきたのはアンリだった。
「アンリさんお疲れ様です。ちょっとベルナル様にお願いがありまして……ご都合いかがでしょうか?」
「今日は特にお約束もございませんから、問題無いかと。それに、皆さんが会いたいと言えば、どんなに忙しくても時間を取りますよ。さあ、中へどうぞ」
アンリの後ろに付いて、事務所の一番奥にあるベルナルの執務室に向かう。
アンリが扉をノックするとすぐに「どうぞ」と返ってくる。
(相変わらず<探 査>しているな)
「皆さん、少々お待ち下さい」
一旦扉を閉めるが、直ぐに開いた。
「お待たせしました。どうぞ」
「皆さん、どうされました?北西国境に行かれたのですよね?」
ベルナルは笑顔だが困惑も感じさせる表情で迎えた。ソファーを勧めながら自分も座る。
「はい、両親共会う事ができたのですが、例のダンジョンについて、王都、というか……王城へ行く必要が出てきまして」
「……王城、ですか?」
ベルナルもアンリも訝しげに首を傾げる。
キースは掻い摘んで流れを説明した。
「それはまた凄い話ですね!あそこは4年も話が進まなかったのに……その魔法語の呪文というのも興味深いです」
「はい、呪文についてはまたゆっくりとお話いたしますね。ダンジョンを完全に確保できれば、目標にしているおばあ様の業績に一つ並べます。もちろん、まだまだ足元にも及びませんが」
その言葉を聞いて、ベルナルとアンリはキースの横に座るアリステア達にチラリと視線を向ける。
3人は笑顔で僅かに頷いた。
(そこに触れても、もう問題無い様ですね)
「で、国王陛下にお会いするのに、母上とおばあ様の助力を……確かに、二人からの面会依頼であれば、陛下も可能な限り早くお会いしてくれそうです」
「ただ、お二人のご都合を全く考えていませんので、ご迷惑になってしまわないか心配です」
「あ~そこは気にしないで大丈夫ですよ。問題ありません。私が保証します」
「そう……ですか?ベルナル様の保証なら心強いです」
キースはちょっと不思議そうな顔をしたが、笑顔を見せた。
「あぁ、皆さんお急ぎなのに私と話をしていたのでは駄目ですね。アンリ、馬車の用意をお願いします」
「かしこまりました。では皆さん、先に行って準備して参りますので、用意が整ったら建物裏にお越しください」
アンリがそう言って執務室を出る。
「ベルナル様、急な訪問でしたのに、ありがとうございました。このお礼はまた必ずいたします」
「何を言っているのですか!ヴァンガーデレンが受けた恩に比べたら、この程度何でもありません!陛下にうまくお会いできる様に祈ってます」
「はい、行って参ります」
4人が部屋を後にし、自室に一人になると、ベルナルは大きく息を吐いた。
(今度は国王陛下に直接会いに行くとは……凄いですね)
国王には、ベルナルもまだ会った事は無い。母からヴァンガーデレン家を継いで、その報告の時が最初になるだろう。
(キースさんが急にやって来た時の、母上たちの反応が見られないのが残念です)
ベルナルはその光景を容易に思い浮かべる事ができ、一人で笑うのだった。
いつもの様に、馬に<身体強化>の加護を与え、軽量化と衝撃吸収用の反発の魔法陣、空気抵抗削減の壁と、馬車に魔改造(?)を施し、北街道を疾走する。
クライブの必死の操縦もあり、王都の北門まで鐘一つ分で到着し、貴族街にあるヴァンガーデレン家の屋敷に向かった。
屋敷の警備をしている衛兵に各自が認識プレートを提示し、馬車寄せに向かう。今頃、奥棟の受付を担当するエリーは、大急ぎであの二人に連絡をしている事だろう。
馬車寄せに着くと、待機していた担当者が駆け寄ってくる。
(確かエンリケさんだったな)
「エンリケさん、お疲れ様です。よろしくお願いします」
「はい、お任せください」
エンリケは、ヴァンガーデレン家の家紋が入った馬車から、キース達しか降りてこない事、キースに名前と顔を覚えられていた事に驚きつつも、そつなく返事を返した。
廊下を進んで行き、奥棟の受付への扉をノックし中に入る。何とそこには、笑顔のリーゼロッテとエヴァンゼリンが待っていた。
(キースさん、ご連絡したらここまで出てこられてしまいました。驚かせてごめんなさい)
エリーは心の中で謝った。
「皆さんようこそ。皆さんならいつでも歓迎ですが、北西国境に向かわれたのですよね?今日はどうされたのですか?」
リーゼロッテが尋ねる。当然の疑問である。
「はい、今日はお二人にお願いがございまして」
「分かりました。何をすれば良いのですか?」
いきなりの了承にさすがのキースも無表情で固まった。
「お館様・・・よろしいのですか?」
「私達は、あなたからの頼み事は、国と法に反する事でなければ全て引き受ける、と決めているのです。そしてあなたはそんな事を言ってくる人ではありません。ですので、話を聞かなくても返答は決まっているのです」
「そうですよキース。私達はあなたの役に立ちたいのです。さあ、何をすれば良いのですか?仰ってください」
「お館様、大奥様・・・ありがとうございます。実はですね・・・」
キースは現状を説明する。リーゼロッテもエヴァンゼリンも真剣な顔で耳を傾ける。
「確かに、その状況なら相手にも利を分けませんと、暴発する可能性はありそうですね。私もある程度の譲歩は必要と考えます。陛下もきっとご賛成なさるでしょう」
「キース、あなたは交渉人として、とても良いセンスとバランス感覚をしていますね。その辺が解らずに、ただ利益だけを追求する者もいますが、その先のリスクも考えなければなりません。今回は特にそうです。素晴らしいですよ」
大貴族の当主と、歴史に残る元国務長官に褒められ、さすがにキースは嬉しそうで照れ臭そうだ。
(照れキース可愛すぎ!)
この場にいる、キース以外の6人の心は一つになった。
「早ければ早い方が良いのですよね?すぐに支度を整えますから、馬車寄せで待っていてください」
「陛下のご都合は分かりませんからね、とりあえず王城へ赴き話を通していただいて、向こうで待ちましょう」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
キースは深々と頭を下げた。
ご夫人二人が準備の為に退室し、キース達も馬車寄せに戻るべく席を立つ。大人3人組に続いてキースも退室しようとしたところで、エリーが近づいてくる。
「キースさん、先日はありがとうございました。まさか頭ポンポンまで……もう感激いたしました。大奥様もお元気にお過ごしですし、本当になんとお礼を言ったら良いか……」
「あそこまでやってしまって良かったのか少し悩みましたが、喜んでいただけたなら良かったです。それに今回はお手数お掛けしてしまいますし」
「お二人はキースさんに頼りにされて喜んでいらっしゃいますから、そこはお気になさらずとも大丈夫ですよ」
「そうなら良いのですが……」
「あ、あまり引き留めてもいけませんね。国王陛下にお会いできると良いですね」
「はい、ありがとうございます!行ってきます!」
キースは笑顔で部屋を出て行った。
(奥様方ではありませんが、本当に良い子ですね)
エリーはキースが出て行った扉を見つめていたが、二人の準備を手伝うべく、部屋を出て行った。
ヴァンガーデレン家の家紋が入った馬車が、2両続けて王城へ続く門を通過してゆく。
貴族の家紋が入った馬車は、基本的に一々止められる事は無い。馬車はそのまま王城の馬車寄せに入る。
(ヴァンガーデレンの馬車が2両?珍しいな)
担当者は内心驚きつつも馬車を出迎える。
今日の馬車寄せの担当者は、この道20年を誇る大ベテランのトニーだった。家紋はもちろん、各家の馭者の顔まで覚えているという。
そして、降りてきた人物を見てさらに驚いた。若い者に『貴族の前では顔に心を出さない様に』と指導しているにも関わらず、自分が驚愕の表情を見せるところだった。
(ご当主はまだ解るが、エヴァンゼリン様もご一緒とは……一体何事だ?)
エヴァンゼリンは基本的には引退した身である為、王城へ出向く事はまず無い。前回王城へ来たのは、5年前の国王の誕生祝いの時だ。
そういった催しがある訳でも無いのに、エヴァンゼリンが王城に来るとはただ事では無いと、その姿を見た人々は考えた。まさか『推しに頼まれたから』だなんて誰も思わない。
アリステア達は、リーゼロッテとエヴァンゼリンに先導され、場違いな気持ちを抱えながら歩いてゆく。できるだけキョロキョロしない様に、前だけを見ている。
『謁見の間』の手前にある、受付兼待合室(というにはかなり広いが)で、担当者に国王へ面会希望である事と、面会理由を書いたメモ、そしてメルクス伯爵から預かってきた委任状を渡す。
普段あまり王城に来ない二人と、明らかに冒険者の集団。非常に目立つ組み合わせだ。この場にいる誰もが興味津々で聞き耳を立てているだろう。声に出して理由を言う訳にはいかない。
「……かしこまりました。少々お待ち下さい」
担当者は別の職員に席を任せると、扉を開けて奥へ入って行った。
(確認するのは……ダンジョン関係だから国務長官かしら)
リーゼロッテが考えていると、先程の担当者が戻ってきた。
「お待たせ致しました。冒険者の方達は武器をこちらでお預けください。お部屋は碧玉の間でございます。国務長官もご同席されるとの事でございます」
「……分かりました。手数を掛けました。では参りましょう」
リーゼロッテが促し、皆で付いて行く。
(やはりお母様と一緒に来ると効果ありますね。キースもよく私達を『通行手形』にする事を思いついたものです。さすが私達の推し!)
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