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第11話

【更新日時について】


書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。


通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。


エストリア王国の北の国境までは、王都から馬車で3時間ほどとかなり近い。


そこにはトゥーネ川という川が流れており、そのまま国境という扱いになっている。


アリステアは、その川岸にある遺跡の探索に来ていた。



しかし今日は碌な物が見つからなかった。


諸経費だけを考えればプラマイゼロぐらいにはなるが、気持ちが満たされなかった分マイナスだ。


(まぁ、いつもお宝が見つかる訳もないからね・・・)


基本、既に人の手が入っているのだ。そんな都合よくほいほい見つかるものでは無い。


(ま、日を改めてまた来ましょ)


繋いでいた馬の下に戻り、まとめた荷物を積み始める。


帰ったら、新しく開店した定食屋さんに行こう。


南方の国の料理屋らしく、辛くて酸っぱいスープが美味しかった。


でも、まだ食べた事のないメニューもたくさんあって迷ってしまう。


安定の美味しさを取るか、新たな別メニューに挑戦するか、その辺りは通い始めたお店の醍醐味だと思っている。


複数人で行けば色々試せるとは思うが、常にソロ活動のアリステアは、私生活においても他人と一緒に行動するのがとても億劫になっていた。


喧嘩別れの様に解散してしまった、最初に組んだパーティの影響なのだろう。


意見が合わずに揉めたり嫌われたりする事を避けていたとも言える。


誰かと一緒にいると、どんな些細な事でも「相手がどう思っているか」を気にしてしまう。


食事・宿の椅子とテーブルのがたつき具合・昼間交わした会話の言葉遣い・馬車の揺れ等々、別にアリステアの責任でも無い事まで、一々考えてしまうのだ。


だったら一人でいる方が気楽、という訳だ。


こればかりは、他人と一緒に行動する機会を増やしていくしかないのだが、現時点では本人がその必要を感じていないため、まだもう少し先になりそうだった。



ご飯の後は、お茶をミルクで割って、中にもちもちした小さいお餅?っぽい物を入れた飲み物を買おう。あれは食感が楽しいのだ。


馬にまたがり出発する。


今からなら6の鐘までには王都に着けるだろう。


馬を少し走らせてから、なぜだかは分からないが、なんとなく遺跡の方が気になった。


一旦止めて振り返る。


(何、あの光は・・・?)


遺跡の奥だろうか、光の柱の様なものが空に向かって伸びているのが目に入った。


(これは・・・行かざるを得ないでしょ)


馬に合図を出し遺跡の方へと戻る。


どうやら、光の柱?は遺跡の向こう側、川の中州から立ち上っている様だ。


遺跡のある森の中に馬をつなぎ、上着を脱いで馬の背にかけておく。


周囲を警戒しながら土手から河原へ降り、そのまま川へ入る。


この辺りはもう河口も近い為流れは緩い。


水深も浅く、小柄なアリステアの膝ぐらいまでしかない。


(これならそのまま中洲まで渡って行けるな)


滑らない様に川底を気にしながら進む。光の柱はまだ立っているが、先程より薄くなっている様だ。


(あの下には何かあるのかな・・・こんなの聞いたことないよ)


遺跡の探索はハズレだったが、思わぬ副産物だ。


アリステアは、古代王国の遺跡を中心に活動する様になってから、過去の遺物や未知の現象等、「自分の知らない事・知らない物」に強く惹かれるようになっていた。


こういった謎現象は大好物である。今日の精神的マイナスを埋めてもまだお釣りがくる。


無事川を渡りきり中洲へ上陸できた。光の柱はほぼ消えている。姿勢を低くしながら近づいていく。


(なんか地面が・・・窪んでいる?というか・・・穴?)


そこには直径10m程の穴が開いていた。穴の縁から中を覗き見る。薄暗く底は見えない。


その時、穴の中から漂ってくる空気が周りと違う事に気がついた。


(この空気の感じ・・・魔素が濃い!?これって・・・)



空気中には「魔素」という、目に見えない成分が含まれている。


魔素はダンジョン内だと濃く、それ以外の場所では薄い。


この事から「ダンジョンは、空気中や地中の魔素が一定以上溜まると開口する」と言われている。(ダンジョンが生成される瞬間を見た者はいないので、仮定の話だが)


ダンジョン内の魔物は、呼吸することで常にこの魔素を体内に取り入れている為、体の中で結晶化している。


その結晶を「魔石」と呼んでいる。


魔石の入手方法としては、魔物を倒し取り出す、ダンジョン内の壁や地面に露出している、結晶化したものを拾う、ダンジョン内に湧いている水(水も魔素を含んでいる)を精製して成分を集め、固める等の入手方法がある。



更にその重要な点として、魔素(魔石)は、魔物の身体的能力(力、素早さ、体力、体表と筋組織の硬さ)を向上させる。


下層の方が魔素が濃い=魔物も下層の方が強い=強い魔物は体内に大きな魔石がある、という訳だ。


パーティを組んでいた頃、アリステアの攻撃が通用しなくなったのもこれが原因だ。


その為、魔石の確保は、戦う事に適した特性を持った冒険者でないと難しい。


魔石は、時刻を自動で知らせる鐘・照明・かまど・冷蔵箱等の、魔導具の動力源として用いられる。


さらに、各種魔法陣に追加すれば効果を強くする事もできるし、魔法を使用する際、魔力が足りない(少ない)時の補助に使う事もできる。


魔力が少ない、魔法が使えない者でも、魔石があれば魔法・魔導具・魔法陣の恩恵を受ける事ができるのだ。


今や魔石は、社会と生活を支えるエネルギー源であった。


冒険者ギルドが国営で、その監督官庁が国務省なのもそれが理由だ。


冒険者を国が支援し、積極的に魔石の確保に努めている。



これがもし深層まであるダンジョンだとしたら、莫大な価値がある。


一刻も早く確保し、正式にエストリア王国のダンジョンとしなければならない。


国によっては、自国内にダンジョンが無い(少ない)という国もある。


魔石が足りなければどんなに高くても輸入するしかない。


ダンジョンの確保と新規開拓、更に内部探索での魔石の回収は、国の経済に大きな影響を及ぼすのだ。


その為、国境近くでダンジョンが見つかると、国同士で紛争になったりするケースもある。


(アリステアの息子であるライアル夫婦が遠征しているのも、ダンジョン発見からの帰属問題が元になっている。話がこじれてしまって進展しない為、戻って来れない。主力パーティである彼らが離れたら、武力制圧される危険性がある)


まずい事に、ここは国境の川の中洲だ。


しかもあの光の柱。あれはもっと遠い場所からも見えただろう。


国境付近で謎の光が見えたら、普通は確認する。


こちらは一人だし、アリステアは直接戦闘に向いていない。


魔術師を含めた複数人で来られたら、その時点で勝負ありだ。


(あたしだけじゃ無理だ!応援を連れてこないと)


そう決めたらアリステアは速かった。


大急ぎで川を渡り、上着を着て馬に飛び乗る。


幸いここから王都は遠くない。馬車でも鐘3つだ。急げば鐘2つで戻れるだろう。


アリステアは、逸る気持ちを押さえながら、王都まで維持できるぎりぎりの速度で馬を走らせ始めた。


ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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