第115話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
呪文を詠唱してからの魔法を試した結果、成功はしましたが、その凄まじさに皆呆然でした。アリステアが余計な事を言ってしまい、皆に白い目で見られました。デヘント達から「準備完了」の連絡が届いた為、アリステア達はダンジョンへ向かいます。
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「それでは皆さん、行ってきます!たくさん持って帰ってきますので、よろしくお願いします」
「うむ、気を付けてな!何かあればすぐ言うんだぞ」
「キース、無茶な事はしない様に。皆の言う事をよく聞いて、迷惑掛けてはなりませんよ?」
両親が声を掛けてくる。
「お母さん、そんな子供では無いのですから・・・」
キースが呆れ気味に母親に返す。
だが(マクリーンの気持ちは痛い程解る)と、この場にいる全員がそう思っている。
挨拶を終えると、アリステア達はダンジョンへ向かうべく、会議室を出た。
キース達が出発してから5日後の朝、フルーネウェーフェン子爵は、副官のディエリから報告を受けていた。
「パーティが一組戻っておらんというのか」
「はい。昨日の夕方戻る予定でしたが、今この時間になっても戻っておりません」
「中層までなら特に問題ないメンバーであろうしな・・・下層には降りるな、という指示が徹底されていないのであろうか?」
「冒険者ギルドにも募集の段階で話す様に依頼しておりますし、出発前にも改めて指示し徹底を図っております。実力的にも、下層だから即全滅、というレベルでもございません」
「ふむ・・・」
フルーネウェーフェン子爵は顎に手をやり考える。
(冒険者は自己顕示欲が強い者も多い。そういった輩が指示を無視して降りていったのか? 稀に、特殊な個体が出現したりする事もあるというが、その様な魔物と戦闘になり、戻って来れなくなった可能性もあるか・・・)
「ディエリ、今日これからダンジョンに入るパーティはどうしている?」
「はい。ご指示あるかと出発させずに待機させております」
「よし、では、そのパーティと緊急対応用のパーティを合同で救援に向かわせろ。合同パーティは、捜索と救援を最優先とする。見殺しにはできぬし、下層の魔物がいる可能性もある。だが、捜索期間は3日間だ。それで見つけられなければ、無理せず戻れと指示しろ」
「かしこまりました。本日の報告は以上になります。それでは冒険者達のところへ行ってまいります」
ディエリは執務室から退出すると、冒険者達と合流すべく早足で歩きながら、子爵の指示に感服していた。
(人数を惜しまずに掛ける事で二重遭難の危険性を下げ、一度の対応で済ませようとする辺り、さすがは閣下だ)
(2パーティであれば、上層から中層の魔物と遭遇しても、一気に押しつぶす事ができるし、下層の魔物が居たとしても十分対応できる。時間が惜しいこの状況では、魔物相手に時間は掛けられん。戻って来ていないパーティで怪我人が複数発生していても、2パーティなら護りつつ戦う事もできる)
(それに、魔石の回収を見切り、救援を最優先にする事で、周囲にも『何かあっても助けてもらえる』という印象を与えられる。そうすれば、冒険者達に多少の無理を頼んだとしても、『閣下の為なら』と応じてくれるだろう。これ以上無い対応だ)
やはり、フルーネウェーフェン子爵はデキる人物であった。
しかし、今回ばかりは相手が悪過ぎた。
「また戻って来ないというのか・・・一体何が起きているというのだ・・・」
フルーネウェーフェン子爵は、眉間に皺を寄せ、腕を組む。
ディエリは直立不動で、額に汗をかいている。
(なぜだ・・・閣下の対応は文句無かったはずだ。どうしてこうなった・・・)
救援の為に2組のパーティを送り込んで既に一週間、最初のパーティが戻る期限を過ぎて11日が経っている。
「これで6組だぞ!何なのだ!これまでは何の問題も無く行って帰ってきていたではないか!」
6組
最初に行方不明になった1組。
救援に向かった2組。
救援の救援に向かった3組。
1組どころか誰一人として戻って来ない。
「更に送り込むしかあるまい・・・ディエリ、手配せよ」
(やはりそうきたか・・・)
ディエリは、額以外に背中にも汗をかき、汗は球となって、不愉快な感覚を残しながら流れてゆく。
「閣下、大変申し上げにくいのですが、これ以上あの街で冒険者を手配する事はできませぬ」
「何だと・・・どういう事だ!」
「街に冒険者が殆どおらぬのです」
子爵は彼にしては珍しい事に、ディエリの言葉に完全に不意を突かれた。驚きのあまり目を見張る。
「先日の襲撃で手配した約30名、今回の6パーティ分で25名、これだけの冒険者が行方知れずとなっております。そこに通常の依頼を受けて出ている者がおりますので、ギルドには冒険者の姿がありません」
「もう一点・・・非常に腹立たしい話ではありますが、街では、『あのダンジョンにはとんでもない魔物が住み着いていて、管理官では対応しきれない。冒険者が戻って来ないのがその証拠だ』という噂が流れ始めております」
(これを知った閣下はきっと・・・それだけは何とか避けなければ)
「・・・では私と護衛達で向かう。準備せよ」
(やはり!)
「閣下、それだけはなりませぬ。御身はこの場の最高責任者であり、代わりのきかないお方でございます。指揮官が最前線に出るは負け戦、と申します。何卒思い留まりくださいませ」
フルーネウェーフェン子爵は、部下の諌言を笑顔で受けた。反対意見でもきちんと受け止める辺りも、度量が大きい。
「ディエリ、そなたならきっとそう言うと思ったぞ。だがな、その噂も含め、もう私が行かなければ収まらんだろう。これ以上の被害と悪評は、この先のダンジョン管理にも支障が出る。それにな」
子爵は一度言葉を切る。
「戻って来ない6パーティの誰よりも私の方が強いぞ」
そう、フルーネウェーフェン子爵はかなりの腕達者だった。
現国王の指導担当官であった祖父に、『国王陛下のお役に立てる様に』と、文武ともにみっちりとしごかれ、これまでも魔法メインの魔法剣士、というスタイルで活躍してきたのだ。
(確かに、もう閣下がご自身で行くしかないのかもしれぬが・・・いやしかし・・・)
「ディエリ、明日の夕方、ラフレズ様の遣いとの会食があったな」
「はい、コルナゴスでお会いする予定となっております」
ラフレズ様、というのはイザギレ侯爵家の当主である。ラフレズ・イザギレの事である。
イザギレ侯爵家は王家の遠縁にあたり、当主のラフレズは国王と同い歳で、国王と共に彼の祖父の指導を受けた学友だ。
その縁もあり、父を早くに亡くし、成人と同時にフルーネウェーフェン家を継いだアルベルト少年の、後見人的な存在として支援してくれている。
「それは外せぬからな・・・よし、では、明後日の朝ダンジョンに入る。準備を頼むぞ」
「閣下・・・」
「そんな顔をするなディエリ。心配し過ぎだぞ。そもそも、冒険者達が戻ってくれば行かないのだからな」
フルーネウェーフェン子爵が笑顔でディエリの肩を叩く。
「・・・かしこまりました」
ディエリは折れた。折れてしまった。
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