表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/341

第109話

【更新について】


本日2話目となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


フルーネウェーフェン子爵は、まともな野心家なので、失敗した原因を知り、次回に活かしたいと調査中。キース抜きで集まり、3人の正体をはっきりさせました。『祖母アリステア=白銀級冒険者のアリステア』をキースに伝えるのかどうかを皆で考えます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「だいたい、なんでそういう話になったの?普通に言えば良かったのに」


引き続き、シリルがど真ん中ストレートに尋ねる。


「お、おいシリル!」


「なんで?だって原因はそこでしょ?理由が知りたい」


またライアルが声を掛けたが、先程同様、この場にいる全員が腹の中では(そうだそうだ!)と思っている。


アリステアは(特にキースが絡むと)ポンコツな面もあるが、この国の冒険者達にとっては、雲の上の存在だ。


エストリア王国650年間で、国王に認定された唯一の白銀級冒険者。


そして重要なのは、全ての冒険者(もしかしたら国民も)が「あの人こそ白銀級に相応しい」と心から思っている事だ。


・『未知の魔導具や資料、研究書、魔法陣の発見と国への提供』


・『新規ダンジョンの発見と確保』


・『新人冒険者への支援制度の立ち上げ』


王都ではほとんど知られていないが、バーソルトの街への支援も続けられている。


ざっと、彼女の偉業を挙げただけでも、これだけあるのだ。冒険者として活動してみると、これがどれだけ凄い事なのかよく解る。


こんな人相手に、気軽にツッコミ混じりの質問など、恐れ多くて無理である。


しかし、シリルはこの国出身では無い。


子供の頃から、白銀級冒険者アリステアの昔話に慣れ親しんでいる訳でも無いし、支援制度のお世話になった事も無い。初めてアリステアに会った時には、既にキース大好きおばちゃんだったのも大きい。


種族も違うし、性格的なものもあり、疑問に思った事は遠慮無しにどんどん尋ねる。


「まぁ・・・何と言うか・・・言葉のあやというか・・・タイミング?」


アリステアは、今でもはっきり憶えている、小さいキースとのやり取りを思い出す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その日も、ソファーに並んで座り、お茶とおやつを楽しみながら、冒険者が活躍する昔話をしていたのだ。


「・・・デズモンドは無事王都に戻り、王様からたくさんのご褒美を貰い、皆もすごいすごいとほめてくれました。めでたしめでたし。はい、おしまい」


「はぁ、ありがとうございました、おばあさま。やはりデズモンドはかっこいいですね!僕も彼みたいな魔術師になりたいです!」


「どういたしまして。そうね、キースならきっとなれますよ。私が保証します」


お茶を一口飲み喉を潤す。


「おばあさま・・・訊いてもいいですか?」


「ええ、なあに?」


キースの頭を撫でながら促す。


「白銀級冒険者のアリステアは、おばあさまなのですか?」


「えっ!?あっ!?ち、違うけど・・・」


余りにも予想外な質問に不意を突かれ、思わず「違う」と言ってしまった。


「あ、違うのですね。そうですか・・・」


キースは少し残念そうにした。


「な、なぜそう思ったのかしら?」


「だって、お名前も同じですし、お歳も同じぐらいですよね?それに・・・」


キースは隣に座っているアリステアの左脚をさする。


「・・・そうね。でも、あの人と私は違う人よ。私はただのギルドの職員だから。歳が近いから仲良くはしていたけどね。この足も生まれつきですしね」


「そうなのですね。分かりました!ありがとうございます。あ、クッキーもう少し食べても良いですか?」


「ええ、どうぞ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それが理由?はぁ・・・しょうもない」


投手シリルのビーンボールが打者アリステアを襲い直撃した。


「お、おいシリル!」


「なんで?しょうもないでしょ。みんなだってそう思っている癖に」


三度ライアルが声を掛けたが、先程同様、この場にいる全員が腹の中では(しょうもない)と思っている。


だが、(自分達を巻き込むのはやめろ)とも思っている。


「そうなのよ、一瞬タイミングが悪かっただけなのよね。しょうもない事なの」


ちょっと寂しそうな顔でアリステアが認める。


「あの時、『そうですよキース、私が白銀級冒険者アリステアなのです』と言って、冒険者証や下賜された短剣を見せていれば、きっとキースからキラキラの眼差しで見つめられて、『おばあさますごい!ぼくそんけいします!』 なんて言われていたのだろうな、なんて考えると、その機会を失った事が残念で・・・」


「アホくさ」


今度は打者シリルのバットが、投手アリステアに向けて投げつけられた。ここまできたら乱闘である。


ライアルも今度は声を掛けない。


「シリル!あなたには、キースから尊敬の眼差しで見つめられる事が、どれだけ大変でどれだけ重要な事か分かっていないのです!長い事生きているのでしょうに、まだまだ人生経験が足りていない様ね!」


「そんなのわからないし興味無い。私は尊敬されるより友達でいたいから」


その言葉を聞いたアリステアは、寂しそうに笑う。


「私は、祖母だから友人としては接してもらえないし、孤児で学も無いから、魔術師のキース相手では尊敬してもらえないもの・・・正直、尊敬されて目標だって言われたライアルが羨ましい」


(何だ、このしんみりした様な微妙な空気は・・・どうしてこうなった?俺は悪くないよな?)


しかし、母の気持ちも(何となく)解るし、ここは俺がとライアルが口を開こうとした時、意外な人物が一歩前に出た。


無口で生真面目なニバリだった。


「何を言っているのですか、アーティ。あなたはキースに十分尊敬されているではありませんか」


そう言われたアリステアは、ニバリから話し掛けられた意外さもあって、キョトンとしている。


「そ、そうなのかしら・・・」


「キースはいつも言っておりましたよ。『おばあ様の編み物は凄い。あれだけの作品は、王都の高級衣料品店にしか売ってない。同じ様な作品はどれも大変な値段が付いている。しかも、それをもの凄い速さで編む。人の技とも思えない』と」


(あ、そっちなんだ)


皆心の中で突っ込んだ。アリステアの編み物の腕前は、プロレベルという話は有名だ。


「今、『編み物か』と思われましたね?それはそうですよ。『自分が白銀級冒険者のアリステアだ』と言っていないのですから。冒険者として尊敬される事はありません。ですが・・・」


「キースの友達はたくさんおりますが、『キースの祖母』という立場は、アーティ、あなただけなのですよ?この世で唯一、あなただけが『キースの祖母』を名乗れるのです。まさかそこに気づいていらっしゃらないのですか?」


『キースの祖母はこの世で唯一自分だけ』


この言葉がアリステアの中で消化されるにつれ、アリステアの顔はキョトンとした顔から、徐々に笑みに変わってゆく。


「そ、そうよね。キースの祖母は私だけなのですものね・・・」


「そうです。何を引け目を感じる事があるのですか!さあアーティ、顔を上げて胸を張りましょう!キースの祖母として、堂々と生きてゆくのです!」


「ええっ!そうね!ありがとうニバリ!」


「いえいえ、とんでもありません!お気になさらず」


「あ、もういい?で、キースに白銀級冒険者アリステアは祖母だ、と伝えるという事でいいのね?それはいつ誰が言うの?」


シリルがおかしな空気をあっさりと元に戻す。


「うん、それは私が話をしよう。改めて告げるというより、普通に話の流れの中で『お前知らなかったのか?』ぐらいの感じで言ってみる事にする。明日中にはいけるだろう。結果は皆にも伝える様にするから」


少々疲れた感じでライアルが言う。


「悪いわね。よろしくお願いね」


息子に対してはあっさりである。遠慮も無い。


「では、お母さん、後は何かありますか?キース抜きで集まれるのはそう多くないでしょうから、何かあれば今のうちですよ?」


「3人の中身がカルージュの3人だ、というのは言わないの?」


またもシリルが尋ねる。


「それは言わない。キースと一緒に一生旅をする訳では無いから。エストリアを一周し終わった頃には別れる事になると思う。もし言うとしたらそのタイミングだろうけど、その時も言うつもりは無いわ」


アリステアが、先程までのウジウジした態度などまるで感じさせない、きっぱりとした口調で答えた。


(本当に、お母さんはキースが絡むと・・・はぁ)


ライアルは小さくため息を吐いた。

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ