第10話
【更新日時について】
書き溜めが尽きるまでは、毎日5時・11時・16時に更新いたします。
通勤・通学、お昼休みのお供としてぜひどうぞ。
ここからしばらく、アリステアさんの若い頃のお話が続きます。
キース君は宿屋で休憩ですw
【2の鐘・馬車の中】
出発してしばらくは、新しい身体の事や王都に着いてからの対応を話し合っていたが、アリステアの口数が少なくなってきた。
「アーティ、坊ちゃんの事心配ですか?」
「もちろん気にはなるが・・・正直そこまで心配ではないんだ」
(え?)
予想外の返答だった。
キース大好きおばあちゃんの言葉とも思えない。
フランのそんな表情に気が付いたのかアリステアは続ける。
「完全に行方不明なら心配だが、王都にいる事は間違いない。そしてこの後は必ず冒険者ギルドに来る訳だ。あの子は頭が回るし魔法も規格外だ。街中ならほとんどの事は対応できるだろう」
街とダンジョンや遺跡を同じにはできないが、そこまで信用しているのなら、なぜあそこまで冒険者になるのを反対していたのか・・・
(やはり、キースが自分のそばから巣立ってしまうのが寂しかっただけですね・・・気持ちは解りますけど・・・)
全くやれやれなおばあちゃんである。
「今考えていたのはな・・・」
「はい」
「元々この身体だったら、どんな冒険者生活だったのだろうなと考えていたんだ」
「あぁ・・・なるほど・・・」
アリステアは、体格と特性からも正面切って戦うタイプではなかった。
名を馳せたのは、ソロでトレジャーハンター活動を始めてからであり、冒険者になりたての頃は普通にパーティーを組んで活動していた。
「確か盾役の戦士、遊撃担当のアーティ、魔術師というパーティでしたか」
「あぁ、懐かしいな。みんな若かった。あらゆる意味でな・・・」
盾役の戦士が攻撃を受け止め、その隙にアリステアが横や後ろから急所を突く。状況に合わせて魔術師が魔法で援護する。
装備も普通で技術も経験も浅い事もあり、役割をはっきりさせ、シンプルな行動を心掛けた。
彼らは、若さにも勢いづけられ結果を出し続け、注目を浴びていた。
しかし、ダンジョンの上層~中層に入る辺りまでは良かったのだが、そこから降りるに従って様子が変わってきた。
戦士の怪我が増え、一つ一つの傷も深くなってきたのだ。
この辺りまで降りてくれば魔物も強くなってくる。
捌ききれない事も増えてくるのだが、原因の一つとして、アリステアの攻撃力の低さがあった。
隙を突いて刃を突き立てても、硬くなってきた魔物の体表や筋組織に負けてしまい、致命傷どころか、相手の動きに影響が出る程のダメージにならないのだ。
短剣という軽い武器、小柄で筋力が低い身体、特性もそれをフォローする種類のものでは無い。
トドメを常に魔術師が魔法で差す、というのは魔力量や帰りの道中の事を考えれば非現実的だ。
火力担当としてもう一名増やす、依頼達成の報酬を戦士に少し多く渡し、良質な装備を購入
させるなど、色々手段はあったと思うが、どうにも意見が合わなかった。
本来最優先で解決しなければならない問題であったのに、話しだすと結局言い争いになってしまう為、皆この話題を避けてしまう様になった。
次第にパーティの雰囲気は重苦しくなる。口数は減ったのに口論は増えた。
3人とも「このままではまずい」と頭では解っているのだが、皆まだ20歳そこそこの若者だ。
こういった問題を素直に話し合い、解決できる程の人生経験は無かった。
結局、それから程なくパーティは解散した。
大きな怪我人や死者が出ないうちであったのは幸いだった。
これ以降、アリステアはダンジョンよりも、古代王国期の遺跡をメインに一人で活動する様になった。
遺跡は、魔物や遺跡特有の自動人形(守護者「ガーディアン」と呼ばれていた)がいたとしても、誰かが一度倒してしまえばそれで終わりである。
希少な魔導具や特殊な付与がされた装備品、魔導書やアクセサリー等をメインに探す、「トレジャーハンター」として活動を始めたのだ。
「どうせ倒せないなら戦わなければ良い」と開き直った。
このスタイルは、アリステアの「身軽・素早い・手先が器用・第六感」という特性とピッタリ噛み合った。
魔物や守護者がこちらを見つける前にその気配を察知し、物陰に潜み隠れやりすごす。様々な罠を見つけ出し、解除して進むのだ。
他のパーティは、魔物や守護者が出てきたら戦うしかない。
敵が強ければその分消耗も激しくなり、探索は思うように進まなくなる。
だが、どうせ戦わないアリステアには関係ない。構わず奥へ奥へと進んで行く。
遺跡の攻略以外の事に気を煩わせずにすむ。はっきり言って気楽だった。
他の冒険者達が苦労するなか、1人で遺跡に潜り、遺跡の罠を乗り越え様々なお宝を持ち帰る、非力で小柄な女トレジャーハンター。
アリステアの名声は一気に高まった。
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