第106話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
援軍の中にまさかのキースで、ライアル達はびっくり仰天。マクリーンさんの感情が爆発しました。学院を卒業してからの色々を説明していきます。
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「キース、あの3人を出し抜いて家出したの?中々やるね」
「いや、今思うとちょっとやり過ぎたかなとも思います。あれっきりになってしまってますし・・・」
「あの3人なら大丈夫。図太いから。気にしなくてもいい」
シリルは大人3人組をちらりと見る。
「女の子と二人で一日街へ!?キースちゃん、女の子とデートしたのですか!?」
マクリーンは、リリアとの話に食いついてきた。
「え、あ、いや、まぁ・・・そうですね」
「まぁまぁまぁ!今度王都に行ったら紹介してもらわなくては!女の子も欲しかったのです!しかも相手も魔術師なんて!戻った時の楽しみが増えました!」
「キースは個別指導もしていましたからな」
「っ!ちょっ、クライブ!何を」
「あら!あらあらあら!女の子に個別指導なんて・・・キースあなた・・・」
「いやいや、魔法の指導ですから!クライブ!紛らわしい事言わないでください!」
「はっはっはっ」
それを横目にアリステアとフランは苦い顔だ。
「宙に浮きながら別の魔法を・・・?」
シャバネルは、魔物暴走で溢れた魔物を倒した時の、同時に複数の魔法を使った事に反応した。
「最初に< 浮 遊 >で宙に浮きまして、それを維持したまま< 氷 の 嵐 >を発動させました」
「・・・どうやって?」
「いや、だから、< 浮 遊 >を維持したまま、< 氷 の 嵐 >を発動させるんです」
「・・・?」
さっぱり解らない様子だ。きっと明日の朝まで考えても解らないだろう。
「ヴァンガーデレン家と縁ができたのか・・・認識プレートまで貰ったとは・・・」
「はい、お館様も大奥様も、そのご子息も良い方達でした」
「別に専属的な立場では無いのだよな?」
「はい、そこまでは・・・貴族絡みで面倒があれば自分達に押し付けろ、と」
「確かに貴族の事は一般市民ではどうしようも無い事が多い。貴族でないと分からない色々な事もある。ヴァンガーデレン程の大家の助力であれば、いざという時の切り札になるだろう。それにしても・・・」
「ここまでの話は全て冒険者になってから起きた出来事なんだよな?まだ1ヶ月も経っていないんだぞ?何かに祟られているのかな?マクリーン、神殿に行けばお祓いとかやってくれるのか?」
「お布施をすればしてくれるとは思いますが・・・とにかく無事で何よりです」
「キース、凄いけど色々おかしい。自覚した方が良い」
「・・・?」
「あ~、キース、私も一つ訊きたいのだが良いか?」
ラトゥールが手を挙げる。
「今俺達と普通に会話をしている訳だが、< 探 査 >は発動しているのか?」
「はい、基本的に起きている時は常にしています」
「さっきは500m先だったが、もっと広くできるのか?」
「1kmぐらいまででしたら。他の事はできなくなりますが・・・」
「そうか・・・ありがとう」
(人としての仕組みが違うとしか思えんな・・・)
ラトゥールの目が遠くを見ている。
「そういえば、王都から馬車で6日で来たって言ってたよな?1500kmあるんだぞ?その馬車はどういう仕組みなんだ?」
今度はデヘントが尋ねる。
キースは、馬への神聖魔法のバフの付与、空気の壁を利用した空気抵抗の軽減、軽量化の魔法陣での全体の軽量化、反発の魔法陣による衝撃吸収について説明した。
「何と言うか・・・何と言ったら良いんだ・・・?」
「・・・?」
「キース、作った魔法陣見せて」
シリルは各種魔法陣にも興味を持った様だ。
「ええ、いいですよ。では、まずはこれから・・・」
キースは鞄から書類筒を取り出すと、影のうさぎ、音楽、お話が浮かび上がる魔法陣を起動させた。
それを見つめるシリルの目が輝きだす。彼女の感情は、表情より目を見た方が解る。
「かわいい。曲もいいね」
さらに転写の魔法陣の実演だ。
「で、もう一度起動させると・・・はい、できました!」
同じ内容の2枚の紙をそれぞれ掲げる。
「凄い・・・同じ」
シリルは目をぱちくりさせる。
「後、魔法陣関係だと・・・あ、僕の魔力でしか動かせませんが、転移の魔法陣もありますよ」
完全に静かになってしまった。
「それは、えー・・・人が転移するんだよな?」
ライアルが恐る恐る尋ねる。
「もちろんですよお父さん!じゃあちょっとやってみますね!」
キースは鞄から転移の魔法陣を一枚取り出し、会議室の中に置く。
「ではエレジーアの部屋に行って本を持ってきますね。一緒に行きたい人はいますか?シャバネル、ラトゥールさん、あのエレジーアの私室ですよ?見たくありませんか?ほら行きましょう!あ、お母さん行きます?シリルも?どうぞどうぞ。はい、ここに立って・・・ちょっとそちら詰めてください。行きますよ?起動!・・・はい、如何でしょう?」
キース達の姿は消え、本棚から本を一冊取って戻ってきた。
転移した後、一緒に行った4人は、部屋の壁を埋め尽くす本棚に驚き、窓から外のトゥーネ川を眺めたりした。
皆もう言葉も無い。完全に処理能力を超えてしまった様だ。
その様子を、アリステア達は労いの気持ちを込めて眺めている。
(一つ一つでも大変なのに、全部一度にはキツいだろう・・・)
しかし、自分達には何もできない。心の中で「頑張れ」と応援するぐらいだ。
そんな3人をシリルが静かに見つめていた。
「順番が逆になってしまったが、キース、お前がお世話になっている仲間を紹介してくれ」
キースはアリステアから順番に紹介した。
(これは・・・何と言うか・・・そうなのか?)
(海の神の啓示を受けた方なんて、ここ100年でキャロルさん以外いたかしら?神気も強いし)
(・・・やっぱり。そうだと思った)
(・・・?)
皆の顔が微妙な表情になる。
全員が、心の中でカルージュに住むあの3人の顔を思い浮かべていた。
(だいたい、母さんが俺達の留守にキースの事を他人に任せるとは思えんしな。だが、もしそうだとしても、見た目が全く違うのはどういう仕組みなんだ?何かの魔導具か?)
ライアルは後で確認する事を心に誓った。
大人3人組も、彼らの戸惑いには気が付いているが、この場では無視だ。
その時、会議室の扉が叩かれノックの音が響いた。
一番近かったローハンが扉を開けると、伯爵の側仕えが立っている。
「ライアルさん、デヘントさん、伯爵様がお呼びです」
「承知しました。すぐに伺います」
「お父さん、僕たちはどうしましょう?今日の事を説明する以上、いた方が良いですよね?」
「そうだな・・・とりあえず一緒に行って、控え室で待機していてくれ。こちらから声を掛けるから」
「はい、分かりました」
二人が連れ立って歩き出すのを見て、デヘントがアリステアに囁く。
「で、ライアルさん達にはいつ説明するのですか?」
「とりあえずキースがいない状況で、出来るだけ早くだな。夜になればイケるのではないかと思っているが・・・デヘント、機会があればキース抜きで話がある事を伝えておいてくれないか?」
「承知しました。先程紹介した時の様子からは、既になんか変だなとは思っている様ですね」
「ああ、そんな感じだったな。皆さすがだ」
(そういうこっちゃ無ぇと思うんだが・・・まぁいいや。俺がそこまで心配する事でも無いし)
デヘントは早々に諦め、ライアル達に追いつくべく足を早めた。
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