第104話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
東側の部隊を退け南側の部隊の対応へ向かいます。デヘントは、小さい頃から知っているキースの余りの力に戦慄しました。南側の部隊は森に住む狼との戦闘に。被害を出しながらも狼を倒しますが・・・
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その声は、アレクセイの左後方から聞こえた。耳に息がかかるぐらいの距離だ。
(いつの間に!?)
「おっと、もちろん動いちゃいけねぇよ。脇腹から肺までのトンネルが開通するぜ」
アレクセイが慌てて振り向こうとするところに、デヘントが制止の声を掛ける。
ふざけた言葉だが、その声にはアレクセイだけではなく、部隊全員の動きを抑える威圧感が込められていた。
「全員ゆっくりと両手を上に上げろ。魔術師は歌を歌え。曲は何でもいい」
魔術師に歌を歌わせるのは拘束する時の定番だ。歌っていれば集中も魔力操作もできず、発動語も言えない為魔法は使えない。
デヘントは、小柄で細身、髪型もよくある短髪で、髪色も瞳も茶色と、特に珍しいものでは無い。その見た目と人当たりの良さそうな笑顔、巧みな話術と砕けた口調から、接しやすそうな雰囲気を醸し出している。
だがそれは、本来の彼の半分でしかない。
「話術」「注意力」「第六感」という特性を持つ彼は、冒険者としての彼は「暗殺もできる諜報員」であった。
その身に纏う雰囲気で何処へでもスルスルと入り込み、いつの間にか違和感無く溶け込む。
そして「様々な事」を成す。
正面から当たるのが、いわゆる「王道」であるライアル達のパーティ、裏から事を運ぶのがデヘント達のパーティだ。
「頭だけ動かしてゆっくり周りを見てみろ」
そう言われアレクセイが周囲を見渡す。
エストリア側の冒険者達が、怪我の治療をしようとひとかたまりになっていた仲間を、取り囲む様に展開している。
剣と盾を持ち今にも飛びかかって来そうな者、弓を構え木の陰で半身になり、矢をつがえている者、その後ろに杖を持った魔術師もいる。
狼との戦闘による多数のけが人、後ろから半包囲されている状況。
(これは・・・勝負ありか。しかし・・・)
アレクセイは考える。
(コイツらがここにいるという事は、駐屯地ががら空きという事だ)
(敵の人数は、ライアル達を除けば15人前後。ここにいるのも同じぐらいに見える。全員で当たった方が被害も少なくできるし、制圧の可能性も高くなるのだから、ここにいるのがコイツらの全戦力だろう)
(俺達がここで拘束されたら、駐屯地に連行されるだろう。だが、駐屯地は無人なのだからナーセン達が確保している。アイツらが不意を突いて動けば、俺達にもまだチャンスはある)
アレクセイ達はそのまま武装解除された後、猿轡をされ、後ろ手に縛られ、更に数珠繋ぎにされた。これで一人だけ逃げる事もできない。
「あ、一応教えておくが・・・東側から来ていたもう一つの部隊な、そちらも既に対処済みだ。まだイけるなんて思わん方がいいぞ」
(人手を分けて両方に対応していたのか?しかし、それではこちらに来た人数が多過ぎる。数が合わん)
「後、狼と一生懸命戦っていたが、あれもお前達の進路とぶつかる様に、こちらで誘導した結果だ。小路に肉の入った袋が置いてあっただろう?お前達はわざわざ密入国したのに、森で狼に齧られただけって事だ。ご苦労さん」
(コイツら一体・・・何でこちらが攻めてきているのが分かったんだ・・・)
「何で自分達の位置がバレていたのか不思議なんだろう?それは残念だが教えられねぇ。一生懸命考えてくれ」
(まぁ、いくら考えても正解には辿り着けないけどな)
アレクセイ達を駐屯地の倉庫に転がした後、今度は東側で地面に埋まっている、ナーセン達の部隊を掘り出しに向かう。熊には齧られなかった様だ。
拘束しやすい様に、少人数ずつ地面を変化させ、引っ張り出し縛ってゆく。
少々反抗的な態度の者もいたが、アレクセイ達も拘束された事を教えると、心が折れたのか大人しくなった。
同じ倉庫に入れると悪企みをする可能性がある事から、アレクセイ達とは別の倉庫に入れられた。
皆で会議室に集まり、今後の対応について話し合う。
「とりあえず、ビアンケの街の衛兵に引き渡すしかないな」
「最終的にはそうなるでしょうが、その前に色々話を聞いてみたいですね。誰かの指示でここを襲いに来たのでしょうから」
「そうだな・・・確認するのは、指示をした者、目的、他の計画の有無、そんなところか?」
「そうですね。尋問も両方の部隊のリーダーだけで十分でしょう。見た感じ下っ端ですから、あまり込み入った話は知らないでしょうし」
「よし、じゃあ1人ずつ連れてきて聞いてみるか」
まずはナーセンが連れて来られた。尋問が始まる。
しかし、ナーセンはから聞けたのは
「俺はアレクセイのせいで巻き込まれただけだ。ライアル達と使者のいない隙にここを襲う、という事以外は知らない。詳しい事はアレクセイに訊け」
という話だけだった。
「まぁ、そんな気はしていました。雰囲気的にも彼が全体のリーダーなのは間違いありませんし」
ナーセンを戻し、その足でアレクセイを連れてくる。
手こずるかと思いきや、アレクセイは素直に喋った。
・酒場で貴族の遣いという男に参加を呼びかけられた。
・報酬として破格の金と、その貴族家の認識プレートを提示された。
・駐屯地にいる冒険者を倒し、駐屯地を焼き払うのが目的だった。
・他の計画があるかは知らない
アレクセイも倉庫に戻される。
(随分と素直に話すな・・・というか、あれは素直と言うよりも・・・)
「何やら・・・投げやりな感じの人ですね。何もかもどうでもいいというか、やるだけはやるけど、ダメならもうそれでいいや、みたいな」
「キースもそう思うか」
「はい、自分の命にすら拘りが無い感じと言うと言い過ぎかな・・・? ちょっと人間味に欠けますね」
「あんなになっちまうなんて、あの男はどういう人生を送ってきたのだろうな・・・いずれにせよ、ろくななもんじゃねぇだろうが」
「で、先程アレクセイが言ってた貴族家、イザギレ家でしたっけ?デヘントさんはご存知ですか?」
「いや、ちょっと聞いた事ないな・・・誰か知っているかな?まぁ、誰も知らなくても閣下なら知っているだろう」
その時会議室の扉が開き、ビアンケ所属の冒険者が入ってきた。
「デヘントさん、閣下とライアルさん達が戻られたそうです」
「やっとか!しかしタイミングぴったりだな・・・計っていたかな?」
「まず間違いありません。駐屯地と冒険者が襲われただけなら惚ける事もできるでしょうが、そこに国の公式な使者が加わっては、話が大きくなってしまいます」
「確かにな・・・どうするキース、外で出迎えるか?」
「そうですね・・・まずは、メルクス伯爵へのご挨拶をしないといけませんよね?」
「挨拶は、閣下の様子を見てからの方が良いかもしれんな・・・じゃあ、とりあえずここに居てくれ。ライアルさん達を連れてくるから。お、そうだ。いい事思いついた」
ニヤリとしたデヘントは、キースに何やら耳打ちをして出て行った。
デヘントが外に出ると、ちょうど道の先の方からメルクス伯爵の馬車と、前後を挟むように二騎ずつ計四騎の騎馬がやってきた。
伯爵の居館の脇の馬車寄せに移動し待機する。
(さて、新任の担当者との話はどうだったかな・・・?)
馬上のライアルとは目だけ合わせて挨拶し、まずは伯爵の対応をする。
デヘントが馬車の箱部分の扉の下に踏み台を置くと、すぐに扉が開いた。デヘント達は伯爵の部下でも無いし、家の者でもないが、気が付いて手が空いていればこれぐらいの事はする。
メルクス伯爵という人は、自然とそういう事をしたくなる人物だった。
「お帰りなさいませ伯爵。今日は特にお疲れになられたのでは?」
伯爵が右の口髭を触る。発言前に一呼吸入れる時の癖だ。
「デヘント・・・そなた知っておったのか?」
「閣下がお出掛けになってから情報が入ってまいりました。事前にお伝えできず申し訳ありません」
「そうか・・・いや、そなたで分からないのであれば、仕方あるまい。気に病む必要は無い」
「ありがとうございます。しかし、お言葉に甘えずより一層努めてまいります」
「うむ、よろしく頼む。こちらは変わりなかったか?」
伯爵としては、自分が出掛けていた為、決まり文句のようなものつもりで言ったのだろうが、今日は違った。
「はい、こちらもつい先程片付いたところでございまして。閣下のご準備が整われましたらお呼びください。ライアルとご報告にあがります」
「・・・分かった。ではまた後ほどな」
そう言い残し伯爵は居館に入っていった。
「直ちにご報告を」と言えば伯爵はそのまま聞いただろうが、相手は完全に無力化し、こちらは被害も無い。夕食に使う肉が無くなったぐらいだ。そこまで急ぐ必要は無い。
デヘントの言葉を聞いて慌てたのは、ライアルパーティの4人だ。
「デヘント、何があったんだ?」
デヘントを取り囲む。
「まぁまぁ、ここじゃなんですので、とりあえず会議室へ行きましょう」
ライアル達が馬を繋ぎに行っている間に、デヘントは厨房の職員にお茶の用意を頼み、先に会議室に入る。
「キース、もうすぐ来るぞ。この衝立の後ろにでも隠れてろ」
「はい、分かりました!」
(お父さんとお母さん、どんな顔をするかな・・・ドキドキするな)
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