第103話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
デヘントに案内されて駐屯地に入ったアリステア一行。ですが、ライアル達は使者の護衛任務で不在でした。アーレルジ側の駐屯地襲撃を感知した為、皆で迎撃に出ます。東側の部隊を無力化し、南側の部隊の対応に向かいます。
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(何だったんだありゃあ・・・)
他の冒険者達と森の中を移動しながら、デヘントは先程見た光景を思い返していた。
東側から寄せてきていた冒険者達が、地面に沈んだ時の事だ。
自分の目でしっかり見たのにも関わらず、未だに信じられない。
奴らの後方に回り込み、わざと声をあげて追い立てた。その後、草原と森の境い目辺りにしゃがんで隠れていたキースが、地面に手をついた。おそらくその時に魔法を発動させたのだろう。
(魔法で地面の状態を変化させ足止めをする、という手法は確かに聞いた事がある)
移動している最中にいきなり地面が緩くなれば、バランスを崩したり足元を気にして、当然移動速度は落ちるだろうし、下手をすれば転倒する。一瞬を争う戦場では大きな隙になるだろう。
(だが、あそこまでのものじゃねぇはずだ)
自分が知っているのは、せいぜい膝ぐらいまでの深さを泥状に変化させる、というものだ。
相手の冒険者達は、お互いが邪魔にならない様に、ある程度の間隔を取りつつ、半円形に展開しようとしていた。幅は端から端までで50mぐらいあっただろう。
それだけの範囲があったのに、全員が一斉に、一瞬で首まで地面に沈んだ。そして、次の瞬間土は元の状態に戻り、そのまま彼らを拘束した。
(あれだけの範囲を深さ1m50cmぐらいまで、一瞬で液状?にまで変化させて、即元の状態に戻す?なんだそれ・・・魔力量も魔力操作も半端じゃねぇ)
(そもそも最初からおかしいんだ。何で500m先の魔力反応が感知できる?そこまで拡げられるものなのか?だいたい、拡げ始めて即500m先に到達する訳じゃねぇだろ。って事は予め拡げていたって事だよな。俺達と普通に会話してたじゃねぇか。何で話しながら魔法が使えるんだ?まさか常に<探 査>を発動しているのか?)
キースの事は、1歳ぐらいから知っている。カルージュの屋敷の庭で一緒に走り回って遊んだし、食事を食べさせたり、本を読みか聞かせたり、風呂に入れたりした事もある。
そういった、ごく普通の子供として接していた記憶もあるだけに、そのあまりのギャップに正直デヘントは恐ろしくなった。
よく知っていると思っていた子供が、自分がこれまで積み重ねてきた知識と経験から、完全に外れている。理解の範囲を超えた未知の存在は、恐怖の対象だ。
(ライアルさん・・・あんたの息子、とんでもねぇぞ・・・)
微かに狼の遠吠えが聞こえる森の中、南側の部隊を率いるのは、当然アレクセイである。だが、本人は先頭にはいない。
曰く、「スカウトやレンジャーでも無いのに、森の中で先頭に立って何が分かるってんだ」と言う。一理ある様な気もするが、前から2、3番目辺りにいればまだしも、一番安全な全体の中段にいたら説得力は無い。
周囲の警戒を続けながら、音を立てずに駐屯地へ近づいてゆく。
「ナーセン達が仕掛けた後、30数えたらこっちも行く」と全員に周知している。ライアルパーティさえいなければ、戦っている側面を突く事で一気に崩せるだろう。
アレクセイは、この作戦を持ちかけられた時の事を思い出していた。
いつも行く酒場へ行き飲み始めた矢先に、情報屋のケニーと一緒にやってきたのがあの男だった。
「アレクセイさん、こちらの旦那が話があるそうなんだけど・・・」
アレクセイはその男をじっとみつめた。
案内されてきた男は、程よく高級感と清潔感のある服装、髪型、物腰をしている。
(センスあるな)
ただ単に似合っている、という意味では無い。
この辺りはあまり治安が良くない。そんな中であまり良い身なりをしていると、浮いてしまい悪目立ちする。そうならない程よいところを守っているという意味だ。
(悪党ではないな。悪党を使う側の人間だ)
「・・・まぁ掛けなよ」
「じゃあ、旦那。私はこれで」
「あぁ、ありがとう」
男はウェイトレスを呼び、自分の分の飲み物と、アレクセイのおかわりを注文した。
「で、話というのは?」
「私はあるお方にお仕えしています。その方の用事の為に冒険者を集めているのですが、ぜひあなたにも参加してもらいたいと思いまして」
男が提示した報酬はかなりの高額だった。半年は遊んでいられるだろう。
「・・・ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」
「正直、胡散臭いなんてもんじゃないぞ」
「ええ、私もそう思います。ですが、これでどうでしょう?」
男は胸元から鎖がついた認識プレートを取り出し、魔力を流し青く光らせる。
プレートには、アレクセイでも知っている、アーレルジ有数の貴族家の家紋が入っている。
「この作戦がうまく行けば、先ほどの報酬はもちろん、あなたもこの家の認識プレートを貰う事ができます」
認識プレートが貰える=その家の庇護下に入れる、という事だ。
「・・・」
(この男は嘘はついていない)
アレクセイには、特性として「観察力」というものが出現していた。それも特に人に対して強く感じる。
相手を見ていると、自然と様々な変化が目につくのだ。
例えば、人間が嘘をついた時、ほとんどの場合、表情・口調・仕草等に何かしらの反応が現れる。
アレクセイには見ているだけでそれが判る。その時の感情も解るし、さらに、その表情から今何を考えているのかも概ね解る。
スラムに生まれたアレクセイのこれまでの人生は、碌なものでは無かった。
冒険者になる前は、、強盗・恐喝・誘拐・窃盗と人殺し以外何でもやった。
冒険者になり、好き勝手をして、他の冒険者や街の人々に疎まれながらも生きていけているのは、この観察力に基づいて「相手に許されるギリギリのライン」を踏み越えない様、見極めているからだ。
(このまま冒険者を続けていても、先は知れているだろう。それならこの男の提案に乗ってやるか)
「わかった。やろう」
「おお!有り難い。現在参加が決まっているのはこのメンバーです。ここに載っていない名前で、他に参加してくれそうな冒険者に心当たりはありませんか?」
アレクセイはリストに目を通す。
「・・・何人かいるな。こちらから声を掛けてみよう」
「よろしく頼みます。今参加を約束しているのは25人、後15人ぐらいは欲しいのです。用事自体はまだ半月程先になります。5日後の7の鐘に、またここに来て進捗を教えてください」
「承知した」
「それではまた5日後に。依頼などを受けて怪我をされません様に。その間の経費としてこちらを使ってください」
男は、小さな革袋を置いて去っていった。
(稼ぎの無い間の生活費まで補償してくれるのか。流石というかなんというか・・・)
アレクセイは一気に酒盃を干し、他の心当たりのある冒険者を探すべく店を出た。
(そろそろだな・・・)
狼の遠吠えが聞こえる中、アレクセイ達は、駐屯地の手前100m程の所に待機していた。
ナーセン達が接触し、戦いが始まったら自分達も突撃し一気に決める。シンプルだが、人数で勝っているし二方向からの奇襲だ。奇策は必要無い。
また狼の遠吠えが聞こえた。
(やたらと遠吠えが聞こえるな)
他の冒険者達も訝しげに視線を交わす。狼の集団でもいるのだろうか。
「狼に接触して向こうに気付かれても面倒だ。前進するぞ」
アレクセイが指示を出すと、部隊が動き出し茂みを抜けてゆく。
茂みを抜けた先で、横切っている小径の上に何やら置かれているのが目についた。
麻製のズタ袋の様な、少し大きめな袋が3つ置かれている。
「ちょっと確認してきます」
部隊の先頭に立っていた、普段はレンジャーとして活動しているヤコブが周囲を警戒しながら近づいてゆく。
袋の口を開け、そっと中を確認し、またすぐ口を縛り戻ってくる。
「何だった?」
「生肉でした。調理する前の、部位ごとに切り分けられた様な塊のやつです」
「この道を通った商人が、荷車から荷物を落とした、とかでしょうか?」
「・・・」
アレクセイは眉間に皺を寄せる。
(なんだ、何か見逃している様な気がする)
小径の右手、東の方に目をやる。また道の上に何か見える。
「ヤコブ、あれはなんだ?」
「・・・あれもこの袋と同じ様に見えますね」
視力に特性が出ているヤコブは、他の人間より遠目が利く。
その時、また狼の吠え声が聞こえた。
今度は彼らのすぐ右手の木立の中から。
木立の中から狼の集団が次々と飛び出し、アレクセイ達に飛びかかってくる。
アレクセイ達は側面から完全に不意を突かれる形になった。
ヤコブは、そちらを振り向く間もなく首筋に噛みつかれ、引き倒された。首の骨が折れる音が響く。
「くそっ!何で狼がこっちに向かってくるんだ!」
各自武器を抜き応戦するが、完全に浮き足立ってしまい、連携も無くバラバラだ。
特に、接近戦に向いていない魔術師や、いつでも放てる様に弓を持っていたスカウト、レンジャー系の冒険者は厳しい。
杖で直接殴りかかったり、慌てて弓を捨て、接近戦用に持っているショートソードを抜く。
しかし、それでもさすがに冒険者だ。
不意を突かれはしたものの、魔物の狼ならまだしも、野生動物の狼であればそこまで脅威では無い。次第に落ち着きを取り戻し、確実に処理してゆく。
しかし、15匹程の狼を全て倒しきるまでに、死者1名、重傷者2名、軽症者多数という被害が出た。
「おい、駐屯地へも行かなきゃならん。皆すぐに準備しろ!」
そう、まだ何も始まっていないのだ。ポーション等を摂り傷を癒し、態勢を建て直さなければならない。
「いや、ゆっくりしてもらって大丈夫だ」
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