第102話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
駐屯地に着いたアリステア達を出迎えたのは、キースも(もちろんアリステア達も)良く知るライアル達の後輩、デヘントでした。案内されて駐屯地に入ります。
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「ちょっと敷地内をぐるっと見てみるか?」
デヘントの誘いに皆が頷く。
駐屯地は、国の公式な使者が利用しているだけあり、指揮所、会議室、食堂、風呂、トイレ、厩舎、馬車寄せ等の各種設備が整い、非常に立派なものだった。さすがに4年も過ごしているだけの事はある。
さらに個人用の住居等が等間隔に並んでいる。
「とりあえず、会議室に行ってお茶でも飲んで一息入れるか。ライアルさん達は今ちょっと出てていないんだよ」
「国の使者、あぁ、使者はメルクス伯爵という方なんだが、伯爵の護衛でビアンケの街に行っているんだ。珍しく先方から、臨時の会議を開きたいという申し出があってな」
4人は顔を見合わせる。
「デヘントさん、王都を出る前に冒険者ギルドで聞いてきた話なのですが・・・」
「お、なんだ?」
キースは、アーレルジ王国の、魔石の運用・管理を担当している人物が交代した話をする。
「こっちはそんな話聞いてねぇぞ・・・じゃあ今日の会議は顔合わせって事じゃねぇか。行ったら知らねぇ別の担当官がいるのか。予備知識無しじゃキツいな・・・閣下大丈夫かな」
「で、その人物なのですが、現国王が皇太子だった頃の指導担当官の孫だそうで、かなりの切れ者だと評判なのだそうです。前任者は、国王と姻戚関係にある人物だったのですよね?」
「あぁそうだ。王妃の兄の妻の弟、という間柄だったらしい。それを更迭して国王のお師匠の孫を据えたのか・・・かなり肝入の人事なんじゃねぇのか、これ。ますますヤベェな」
「ディックさんも、担当者変更と同時に、アーレルジ側が力押しでくる可能性もあるのでは?と懸念しています」
ギルドマスターのディックの名前が出た途端、デヘントの眉間にシワが寄る。
「はっ!心配するだけなら猿でもできるわ!心配しているって言ったって、応援も交代も寄越しゃしねぇじゃねぇか!」
「皆さんに言伝を預かっていまして、長い事戻せず申し訳ないとの事でした。交代については、何度も国務省に談判に行っているそうなのですが、その許可が出ないという事です」
「許可なんて出ねぇよ!お前の親父さん達は国で一番の冒険者パーティだ。代わりなんていねぇ。もし交代させた後に何かあったら、『誰が交代させたんだ!』って責任のなすりつけあいになるのは間違いねぇからな。実際、あの人達がいたからこそ、アーレルジ側は力押しできなかった、というのは十分あると思うぜ」
キースは目を閉じて大きく息を一つ吐く。
「実際どうでしょう?力押しで仕掛けて来るとして、どれぐらいの戦力ならこちらを制圧できますか?」
「今ここにいる戦力は、冒険者はライアルさん達、俺達、ビアンケの冒険者ギルドに所属している、警戒の支援に入ってもらっているパーティが2つ。後は、メルクス伯爵家の私兵もいるが、これは伯爵個人に付く人達だ、役割がちょっと違うな」
「後は、僕たちですか・・・20人ぐらいかな?こちらの質が高いのは解っているでしょうから、40から50人ぐらいは用意してくるでしょうね。一般兵では、余程の人数がいない限り影響ありませんし・・・」
基本的に、戦闘にも影響が出る特性を持っている冒険者と、そういった特性が無い一般兵では、戦いにすらならない。冒険者側が一方的に倒して終わる。一般兵を冒険者にぶつけるのは命の無駄遣いでしかない。
デヘントが一瞬、何か言いたそうな雰囲気を出したのをアリステアは見逃さなかった。目をギラつかせて口を開く。
「デヘントさん、今キースが戦えるのか?と思いましたね?」
「え、あ、いや、まぁ・・・」
デヘントの目が泳ぐ。しかしそれは仕方がないだろう。
デヘントはキースに会うのも4年振りだ。しかも、前回会った時は、遠征に出発する両親を見送りに来た、今よりもさらに小さな少年だった。
その時の印象がまだうまく上書きできていない。
(まぁいいか。後でキースの『とんでも』っぷりに驚けばいいんだ)
アリステアは内心ほくそ笑んだ。
その時、何かに気が付いた様にキースが顔を上げる。
「デヘントさん、街の衛兵とか、数十人単位でこちらまで来る事は無いですよね?」
「あぁ、ない。どうした?」
「南側と東側、距離は500mぐらいの所に、それぞれ20人ぐらいずつ、人間の魔力反応があります。こりゃ来ましたかね?」
「もう仕掛けてきたってのか!?」
(500m!?そんな先まで感知できるものなのか?)
同席して話を聞いていたラトゥールは驚く。
「でも、良かったじゃないですか」
キースは笑顔を見せる。
「この状況のどこが良いんだよ?挟撃されるぞ!」
「分かれていれば各個撃破しやすいですもの。東の部隊の方が、魔力反応が少し小さくて、こちらからの距離も近いです。南より倒しやすそうですから、まずは全力でそちらを叩きましょうか」
「キース、南側の部隊はどうする?とりあえず放置か?」
「南側は・・・あ、この反応は・・・なるほど・・・よし、彼らに足止めをしてもらいましょう」
「ビアンケ所属の方達は、1パーティはここの留守を、もう1パーティは南東へ向かってもらって・・・」
ごにょごにょと作戦を伝える。
「それは面白そうだ。さぞ慌てるだろうな」
「全員は倒せないでしょうけど、それだけいれば怪我人は出るでしょうし、何人かは無力化できるかもしれないわね」
「キース、基本的には捕縛するという事で良いのだな?」
「はい、とりあえず捕まえておきましょう。生かしておけば何かに使えるかもしれませんから。まぁ、その辺は各自状況次第で」
「「「了解!」」」
(冒険者になったばかりなのに、随分慣れてる感じがするな・・・)
詳細を詰める4人を見ながらデヘントは思う。
(相手は倍以上いるのに全く慌てていないし、倒す事しか考えていない。キースも含めて、どういう頭の中してるんだ・・・?)
「おい、ナーセン。本当にあのライアル達のパーティはいないんだろうな?」
「またそれかよ・・・俺だっていないから大丈夫、としか言われてねぇよ。使者の護衛でビアンケに行っているってんだから、使者が街にいる限り駐屯地にはいないって事だろ」
東側から進んでくる部隊を率いているナーセンは、アーレルジ王国王都冒険者ギルドに所属する冒険者だ。活動を始めてちょうど7年になる。
このエストリアの駐屯地襲撃部隊には、先輩冒険者であるアレクセイに誘われ加入した。
誘われた、というかアレクセイにより勝手にメンバーに加えられていた。
「エストリアに密入国し、交渉の使節団の駐屯地を襲う」という、このとんでもない作戦に自分達が参加する事を知ったのは、なんと出発2日前だ。
当然文句を言ったが、「人数が減るのは契約違反になるから無理だ。どうしてもというなら自分達で代わりを探してこい」と逆ギレされた。
(これだからあの人とは関わり合いになりたくないんだよな・・・)
アレクセイは、王都冒険者ギルドでは主に悪名で有名だ。
自分勝手で、何でも人任せ、思い通りにならないと、すぐに他人のせいにし怒鳴りつける。持っていない訳でもないのに金を借りに来る。そして返さない。好かれる要素が無い。
自分はなぜか気に入られてしまい、行動を共にする事が多くなってしまった。その分、今までつるんでいた他の冒険者達は、自分の事を避ける様になった。
この作戦は、アレクセイが、あるやんごとない身分の方から直接依頼されたらしい。
(そもそもそこが怪しいんだよな)
まともな人物なら、作戦の取りまとめをアレクセイになんか依頼しない。少し彼の事を調べれば、信用できる人物では無い事なんてすぐに判る。
(本当に大丈夫なんだろうな、これ・・・)
ナーセン達が、森の木々に姿を隠しながら進んでゆくと、ぽっかりと開けた小さな草原に出た。
身を晒して進む事はできない。左右に分かれ草原を避けて進む指示を出した直後、自分達の後方から、鬨の声が上がった。
(後ろから!?なんで?)
木の間から相手の姿がちらちらと覗く。
後ろを取られた挙句に先制されてしまっては、腹を括って戦うしかない。まだ何もしていないのに死ぬ訳にはいかないのだ。
「魔術師や弓を持つ者は草原を横切って向こう側の森に入れ!隠れながら前衛達を援護しろ!前衛達はその前で半円形に囲め!正面から受けるぞ!」
皆慌てながらも指示を受け動き出す。
ナーセンは気が付く事ができなかった。
敵は後ろ取って不意打ちできるのに、なぜ鬨の声を上げて、わざわざナーセン達に気づかせる様な事をしたのか。
そう、広い草原に出て欲しかったのだ。
部隊の皆が草原を横切り、木々の手前まで来たその時、身体が浮いた様な感覚を覚え、顔が草に埋もれた。
「なぁっ!?」
顔の前の草を払おうとするが、手も足も動かない。
(なんだ?何が起こっている?)
顔だけは動かせた。慌てて左右を見ると、仲間の顔が同じ様に草に埋もれているのが見えた。
というか、顔しか見えなかった。首の下はすぐ地面なのだ。
(地面に埋まっている!?今まで普通に歩いていたじゃないか!)
ナーセンがそこまで考えた時、頭の上から声が聞こえてきた。
「あなた達はアーレルジ王国所属の冒険者で、駐屯地を襲おうとしていたという事で間違いありませんね?」
誰も応えない。
キースは溜息をつくと、ナーセンの後頭部を杖でグリグリと押す。
「あなたに訊いているのですよ?指示を出していたという事は、こちらの部隊のリーダーなのでしょう?どうなのですか?」
「そ、そうだ・・・」
「ふむ、まぁ判ってはいましたが、こういうのは本人の口から聞くのが大事ですからね。色々確認したい事もありますが、南側も対応しないといけません。熊や狼に齧られていなければ、また後でお話しましょう」
(南側にいるのもバレている!? しかも熊!?)
「ではそういう事で」
その言葉を最後に声も気配もしなくなった。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
哀れなナーセンは、無理矢理作戦に参加させられた挙句に、何の成果も出せずに捕虜になった。
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