太陽と月
凛導 リンドウ
正義のヒーローのレッド。正義感が強く、誰よりも強い心を持っている、流生とは幼馴染み。
流生 リュウセイ
正義のヒーローのブルー。冷静で周りをよく見て突っ走らない。凛導とは幼馴染みで海生とは兄弟。
ティア
正義のヒーローのピンク。少し強気で人の痛みが分かる優しい異国の少女。 ギーラとは主従関係。
ギーラ
正義のヒーローのグリーン。喧嘩っ早く視野が広く気が利く少年。 ティアの召使い。
海生 カイセイ
先代ブルーで、現取締役。 流生の実の兄。
ミコン
羽を持った謎の生命体。
グレン
闇の王
ノバラ
ゴスロリ少女
ガイル
黒い狼
凛導と流生は外を駆け回る。
朝いつものように1階に行くと手紙がテーブルの上に置いてあった。
「ティアが……帰った?!」
「あぁ。本当に申し訳ないと書いてある、それとギーラもいないんだ」
「手分けして探そう、まだそう遠くには行ってないはず!」
「凛導!」
凛導はすぐに基地を出ていく。
流生は頭を抱える素振りを見せた後その後を追いかけ出ていった。
海生はミコンに着いていくように言う。
「……どうしましょう……思わず出てきてしまいましたが、でも、駄目なのよ」
「ティア?」
「お姉様!」
「どうしたの?!帰ってくるなんて言ってた?」
「……お姉様っ」
ティアは目の前に現れた姉の姿を見ると同時に泣き出してしまう。姉は驚いて駆け寄る。
「どうしたの?ティア、何かあったの?」
「ごめんなさい。お姉様、私にはやはりヒーローなんて無理ですわ……向いていません」
「……そんなことないわ。ねぇ、ティア少しお話をしましょう?私とあなたがいる意味を」
ティアは頷く。姉は優しくティアの頭を撫でてやる。とても優しく暖かい手のひらにティアは心が温まる気がした、気持ちが落ち着いていく。
流生はギーラを探す。
正直面倒だと思いながらも、凛導に言われた通りギーラの行きそうな場所を手当り次第探す。
少しだけ気が生い茂る森に入る、そこだけ空気が綺麗で花も水も美しい。
「ギーラ!いないのか!」
「……何の用だ、流生」
「ここに居たのか、探しただろう。何をふてくされているのかは知らないが、くだらないことで手を煩わせるな。面倒だ」
「別に、ふてくされてないっスけど。わざわざ探してくれてありがとうございます…」
だいぶ高さのある木の上からギーラが降りてくる。流生がため息をつきながら端末を操作する、凛導に連絡しているのだろう。
ギーラは木の根元に座り込む。どことなく元気がない。
「……はぁ、ティアが居なくなったことを知って落ち込んでいるのか?」
「オレのせいだから、仕方がない。いつもティア様を怒らせちまう。ティア様は優しいオレはティア様ほどの優しい人間を見た事がない。まるで……?!」
「な、太陽が!!」
ギーラが見上げた空の太陽は周りからじわじわと黒い闇が侵食している。
ギーラと流生は、急いで森を抜ける。
ミコンは時空の歪みを発見し、凛導と中を伺う。
「あわわ、危ない!リンドウ!」
「でも、この先からティアの気配がするんだろう?!だったら迎えに行かないと!」
「歪みはそちら側の住人じゃないと、迷子になる!だから、人間には無理!」
「あーもう!!ティアーーー!!」
その瞬間、歪みが深くなり咄嗟に手を離す。
歪みから誰かが出てきた、ティアだ。
「ティア!」
「ごめんなさい。私……」
「そんなことどうでもいい!無事で良かった!」
「はい。!!凛導、太陽が!」
凛導とティアが空を見上げる。太陽の輪郭が消え去ろうとしている。
ティアが凛導の手を引き走る。
「太陽が無くなってしまってはいけないんです!」
「ティア…!」
ティアは着ていたローブを脱ぎ、下に着込んでいた戦隊チーム専用の制服になる。
ピンクのラインが入ったピンク専用の制服はやはりティアの髪や姿に似合っていると、後ろを走る凛導は思う。
ティアは、思い出す。姉から言われた言葉を小さな頃から決められていた自分たちの在り方。
「ティア。私たちは"月"と"太陽"こちらの世界を守る、地球の裏側"月"、そして表の世界である地球を支える存在、"太陽"。それがあなたなのよティア。ティアがいないと私は存在出来ない。だって、あなたは誰よりも美しく優しく照らす太陽なのだから」
ティアの在り方は、太陽。太陽が影れば月も消えてしまう。
ティアには分からなかった、でもそれはティア1人だけではないということ、裏側の太陽と表の太陽2つが出会った時、それは宝石のように光り輝く。表の太陽が陰らないように、裏と表は表裏一体。
「あ!あれだ!」
「ギーラ、流生!」
ティアは見つけた。
太陽を見た、燃えるような赤い希望を支える優しさの光としてここに在ると。
全員が揃う。
目の前の敵は黒い管を太陽に向けている。
どす黒い液体がドロドロと太陽に流れていっている。
「太陽は嫌いなの。消えてしまえばいい」
少女が呟く。黒いドレスに黒い傘、全身を闇に染めた少女。顔は見えない、でもその声は冷たく悲しげだ。
次の瞬間、少女の影の中から大きな狼が現れそれは一直線に凛導とティアに噛み付こうと牙を向ける。
「ティア様!」
「凛導!!」
水と大地の波動が、狼の攻撃を防ぐ。
流生とギーラは2人を守るように前に立つ。
少女は狼を従え、去っていく。追いかける間もなく敵が4人に襲いかかってくる。
地面がぐにゃりと歪む、立っているのも難しい。
「近づけさせないつもりか!!」
「一気に決めます!ギーラ!」
「了解!」
凛導と流生が敵を引き付けている間、ティアとギーラは剣を向ける。
力を込める、先代より携わった力。
心愛の優しい光と大地の力強い光が剣に漲る、そしてその光は導となり放たれる。
敵は消滅し、太陽は元通りになる。
「ティア様」
「ギーラ、ごめんなさい。貴方を困らせるつもりはなかったの、本当よ」
「大丈夫です。オレもティア様の言葉ちゃんと分かってなかった。すみません、従者失格ッスね」
ギーラは苦笑いする。そんなギーラにティアはクスリと笑う。
「そんなことないわ!あなたは私の唯一の従者よ、これからも信頼しているわギーラ」
「……はい、ティア様」
凛導と流生は少し離れた場所で、その様子を微笑ましく見ていた。
凛導の影が揺らぐ、背中にチクリとした感覚がして思わず振り返る。
「凛導?」
「あ、いや。なんでもない」
流生が異変に気づき声を掛ける。
凛導は背中を気にしているようだが、すぐに笑顔になり、歩き出した流生の元に駆け寄る。
流生は凛導の瞳に一瞬出来た闇の色に目を疑う、が、次の瞬間にはそれは無くなってしまっていた。
「……なんだ、いまの違和感は……」
凛導は何も感じていないのかティアとギーラと合流し先を歩いている。
その時、流生の数メートル後ろに誰かが立っている気配を感じた。
「闇は光に焦がれる、そして奪うの」
「黙れ」
流生の一言に、声は薄気味悪く笑うだけだった。
それを振り払うように流生は歩き出した。