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チャット#2

「見て見てナナお姉ちゃん! この野苺おいしそうだよ!(ジル)」

「本当だね、ジルちゃん。はい、どうぞ(神恵)」

「うー、すっぱい。でもおいしい」

「なかなか味が濃くていいね。ジャムとかにしたいな」

「お姉ちゃん料理得意なの?」

「うん。お母さんと二人暮らしだったから、お母さんがお仕事してる間、私が家事してたからね。レシピはお母さんから教わったの。お料理だけじゃなく、お洗濯も、お裁縫も、何でもできるよ」

「へー、ちょっと意外」

「え? そうかな?」

「お姉ちゃんって、家事全般駄目で生活能力なくて困るキャラの方が似合う感じがするから」

「む……ソウジー! ジルがこんなこと言う!」

「おいおいジルコニア、思ってることを何でも口にするなって言っただろ? まったく、そういうところは子供なんだからよ(奏治)」

「ソウジお兄ちゃん? 言っていいことと悪いことが……」

「おい、逆ギレか?」

「うふふふふふ……今日はサンバでも踊ってもらおうかな?」

「ジルちゃんやめなよ。ソウジが真っ青になってるよ」


「――おい、お前ら。足が遅れてるぞ。騒ぐな、きりきり歩け(盾)」


「「「はーい」」」

「ジュンってスパルタだよな。「教会」で鍛えられたからああなったのか? 教会の奴ってみんなあぁなのか?(奏治)」

「そうかな……? 光樹とかはへらへらした性格だったけど。――ねぇ、ジュン。教会ってどんなとこなの?(神恵)」

「教える必要があるのか?」

「教えて! 教えておしえておしえて、ねぇねぇねぇ、いいじゃない別に――」

「チッ……いいだろう。そろそろ休憩を取るところだったし、ついでに話してやる」


「まず、何が聞きたいんだ?」

「そもそも「教会」って何? 何をするところなの?」


「教会は宗教団体だ。崇める神はデミウルゴスと呼ばれる――(その名に讃えあれ)――しかし信徒はその名を口にすることはなく、普通は『主』や『神』という。神は唯一神で、全知全能だ。他の宗教と区別し、教会の宗教は『モナ・ラトレイ』と呼ばれることもある。単に一神教と呼ぶこともある。世界にあるほとんどの国はモナ・ラトレイを国教として、大きな街にはたいてい教会がある。教会に属することで貧しい者は困窮した時に支援を受けることができ、街は教会騎士によって守護される。教会騎士は信仰を強くすることで神から力を得ることができる。

「教会に所属する者は、信徒と、儀式を行う神官と、戦闘を生業にする騎士とに分けられる。神官は厳格な戒律の中に生き、信者たちに神の教えを説くのが仕事だ。騎士は神官よりはゆるい戒律の中で、信者たちの生活を守り、一神教を脅かす勢力を排除するのが仕事だ。修道院は基本的に『ナグ・ハマディ』の内容には含まれていないが、一神教の中の少数派は修道院を作った。

「信徒は『モナ・ラトレイカ』と呼ばれる。戒律は細かく定められているが、それほど厳守することは求められていない。もちろん、守る戒律が多く、質が高いほど信徒としての格は上がる。神官ならほとんどすべての戒律を守っていることになる。騎士は実力を優先するから戒律を破っても罰せられることはないが、しかし信仰の篤さ、忠義の深さから言って、戒律を守ることはすなわち騎士の力そのものだ。

「重要な聖典は一つ、『ナグ・ハマディ』を理解し暗記することから信徒の道は始まる。司祭などの神官に認められれば正式に信徒となり、どこかの教会の名簿に記され所属することになる。世界には幾つかの言語が存在するが、『ナグ・ハマディ』はフスハー語で記されている。フスハー語は知っているか? フスハー語は『教会』にとっての聖地に近い北方では使われることも多い言葉だが、古い言葉で普通は使わない。多くの言語と異なり、文字は表音文字ではない、というよりは本来の読み方は失われて今の読み方は全く異なるものだとされている。『ナグ・ハマディ』を破いたり、燃やしたり、そのほか損ねる行為は禁じられている。文章にアンダーラインを引いたりすることも禁止だ。またナグ・ハマディを訳すことも禁止され、訳されたものは神に仇なすものとして処分される。

「戒律のことを教えてやろうか? まず、神を崇め、毎日祈りを捧げること。祈りには動作まで定められ、日に五回おこなうことが最も良いとされている。――俺はそこまでやっていないがな。――欲を慎み、他人を尊敬し、弱い者には力を貸してやること。人を殺めることは騎士以外には基本的に禁じられ、殺人罪は重く扱われる。詐称すれば声帯を切り取られ、盗みを働けば腕を落とされる。――ま、一般に罪悪とされていることはやらなければいいことだ。厳しいことを言及すれば、たとえば女とはよくよく距離をとることが求められたり、定期的に絶食をすることが求められる。食事は、騎士でなければ肉類は慎み、生の物は食べないこと。騎士も火で清められた食事をとることが求められる。女との関係は、人目のあるところでは男と女は口を利かず、触れあうこともせず、できれば道を並んで歩くことも禁じられる。女は髪を短くし、できれば布で覆うのが一番いい。それは妻であっても同じことだ。妻は一人である必要はなく、養えるのなら二人以上とることは認められる。特に寡婦などを妾にすることは聖典にも記されている。子供を作ることは奨励される。その子供を戦士として強く育てるのが神の思し召しとされている。

「『ナグ・ハマディ』の他にも、神官なら『トーラー』、魔術師なら『ヘルメス』、騎士は『ピスティス』を読むことが進められる。それぞれの職業に必要な精神を作り上げるための内容になっている」


「まずはこんなところか。何か質問は――――と言いたいところだが、そろそろ時間だ。休憩は終わりだ」


「あー、もっと聞きたかったなー(ジル)」

「そうかな……、私はたくさん聞きすぎて頭が痛くなってきたよ(神恵)」

「てか、話の切り方が一方的だよな。教会の奴はみんなああなのか?(奏治)」

「ソウジ、それ話が元に戻ってるよ(神恵)」

「だってよ、結局「教会」がどういうところか話してないじゃねえか」

「おい、いつまでぐだぐだ話しているんだ(盾)」

「おーお、かりかりしてるぜ。――もしかして、糖分が足りないじゃねぇのか? 教会騎士っていうのは菓子とか食わないみたいだしな」

「余計なお世話だ」

「――そうだ! こんどジュンでも食べられるお菓子を作ってあげるよ。火を通したものなら、クリームなしのシフォンケーキとか、パイとか、スコーンとかが良いよね」

「うわー、おいしそー(奏治)」

「……誰がお前なんかが作ったものを食べるんだ」

「楽しみにしててねっ」

「するかよ」

よく考えたら、マニ教を元にすれば良かったです。

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