__ 立ち寄った関で刃を交え
音無・盾は蒼き峻峰を臨む小さいが要塞のようにしっかりした街で育った。国境沿いに立っていたその街は国の防衛の拠点として、すぐれた戦士や道場、兵器などが集められ、人口は少ないながらに栄えていた。
音無の家も街にいくつかあった道場の一つで、無明一刀流と名乗っていた。楯や鎧を用いず、その名の通り一本の刀のみで戦いぬく術を追求する流派で、それほど人気はなかったが名声は国中に広がっていた。ジュンとトウヤが生まれた頃は門下生は五人いたようだった。道場主の子供が流派を継ぐ決まりはなかったが、代々音無の苗字を持つ者が継いできたし、ジュンも流派を継ぐ者として幼いころから期待されていた。
道場主である父親は厳しくも大らかな精神を持った人格者で、多くの人から信頼されていた。母親はおっとりした性格だったが、刀を握るとどの門下生よりも強かったようだった。――母親が戦うところはあまり見たことはないのだが。――兄弟仲は良かった。共によく剣術の稽古をした。双子として生まれたので容姿はほとんど同じだったが、性格の違いは確かに存在し、意見がすれ違うこともあったが、父の大らかなところを多く受け継いだ兄のジュンは、弟と意見をぶつけるより、適当にかわしながら弟の好きにさせることが多く、そのため喧嘩することは極端に少なかった。
欲求が少なく、騒ぐこともない。ジュンはあまり子供らしくない子供だった。
そんな兄を、純粋に子供らしいトウヤは良く慕っていた。我がままを言うとき以外はよく兄の言うことに従い、遊ぶときは必ず共にいた。しかし、しばしばジュンを困惑させたのは彼の乱暴さ――それを通り越した凶暴さと残虐さをうかがわせるトウヤの言動。それさえも子供の持つ一面のようにも思えたが、ジュンはいつも心のどこかに不安を抱えていた。父親と掛け合って、トウヤの言動が過ぎるようなことがあれば厳しく戒めることにしていた。
平和ではあるが、決して凪ぐことのない日々だった。
そんな日々を、突然起きた嵐がすべてを薙ぎ倒していった。
…………。
「どうしたの? ジュン、もっと聞かせてよ」
「――関所が見えたぞ」
前回、山間の村を通過してからも、一行はずっと山道を歩いていた。街道には沿っていたし、その道も平坦だったので特に苦労もなかったが、前の村から一週間近く歩いているとさすがのジュンでさえも疲労が強くなってきていた。他の三人は木造だが大きく堅牢そうな関門を見ると、隠すことなく満面に安堵の表情を浮かべた。
「ね、今日はあそこに泊るんだよね?」
目前の関所の中には、ジュンの情報では小さいながら集落めいたものが存在している。
「あぁ、俺は関所にある教会に用があるしな」
「用さえなければさっさと通りすぎてぇって感じだな」
「そのとおりだ。俺は宿泊する必要がない」
ソウジの軽口は恐ろしい言葉を引き出した。
カミエとジルコニアの鋭い非難の視線が彼に集まる。ソウジは頭をさげた。
「どうか休ませてください」
「ふん……。次の町までは馬車で行きたいから、その準備に一晩かかるだろう。どのみち泊らないとならないんだ」
ソウジは胸を撫で下ろした。
関所に近づくと、静かだった山道に急に人の気配が感じられた。休めるとなると一番年少のジルコニアなどは狂喜している。
「あれ? それでさっきの話の続きは?」
「また今度な」
関所の中はジュンが得ていた情報のとおり、宿屋(というか宿舎)、食堂、銭湯や服屋など、最低限生活に必要そうな施設がそろっていた。
本来ならば関というのは地域同士の交流で賑わうもので、関所とはいわず付近に市場を開く集落が展開していてもよさそうなものだが、実はこの山道を通らなくても平野を行く大きな街も通る街道があり、そちらを使う人が圧倒的に多くこの関所はそれほど賑わわないのであった。けれどもこの道からだと港が近く、先を急ぐ人のために馬や車の用意が整っているということもあって、ジュンはこの道を選んだのだった。
むろん、ジルコニアなどは平野の道の方がいいと主張したがこれは棄却されていた。
三人を自由行動に送り出してから、ジュンは単独で関所にある祈祷所に立ちよった。
先程の情報に付け加えると、この関所は「教会」の支援があって維持されている場所で、教会に関わる信者達が旅をするときはよく利用されるのだった。教会が管理している場所であるからこそ、ジュンはここで馬車を調達しようと考えたのだ。費用は教会から経費として支払われることになる。
小さな祈祷所の扉は木の摩擦で重く、押し開くとググ……と低い音をたてた。
「自らの試練を認識し救いを求める旅人よ、ようこそ。祈りの時間ではないが祈られて行くか?」
円を十字に切った太陽十字を描いた白い壁を背後に、痩躯で上背の高い老人がジュンを迎えた。この祈祷所自体は小さいが、この男性の位階は通常教会の長となる司教よりも一段上の大司教。大司教といえば本来はこんな小さな祈祷所など担当しないが、ここは単なる祈祷所ではない周辺の教区を束ねる中枢なので、大司教ほどの人間が在沖するのである。
とはいっても、普通の人間ならばこんな小さく不便な場所は担当したがらない。特に飾りも無く、裾も着古した年月を感じさせて少し痛んでいる質素な服装をしている彼は、そこいらの欲の多い人間とは一線を画しているようだった。
「お初にお目にかかります、大司教飯村殿。私は所属なき十字騎士、音無・盾と申します。此度は旅の告解をするために参りました」
ジュンは老人――飯村の前に膝をつき、恭しく言った。
飯村は威厳のある態度でジュンの肩に手を置いた。
「おお……そうですか。それほどの若さで十字騎士とは驚きです。貴公の敬虔さが神に愛され、何よりの力となっていることは間違いありませんね。――告解を求めますか。なら、神の名のもとに戦士音無よ、己の所業をつつみ隠さず申すがいい」
告解とは、この場合においては教会に属する者が旅の報告をすることを指す。ジュンは老人より頭を低くしたまま、はっきりゆっくりこれまでの旅の経過、ソウジとジルコニアと会った時点からの話を始めた。
話の中で、ジュンはソウジとジルコニアに会ってから、カミエも入れた三名の要求に流され続けていることに力を入れて話した。己の不甲斐なさを責めるように、しかし声にはなるべく感情を出さないようにして淡々と語った。
それに応え、飯村は問答を始めた。
「神は厳格であるが、人の子らには憐憫と慈悲を持ち、他者に対して寛大であるように教えられている。そのことについてそなたはどう思うか?」
「はい。私は他者に対して寛大であるようにしております。しかし彼らは信徒ではない故、そのような態度を見せ続けるには不適切であると思うのです」
「神は異教徒、特に偶像崇拝者は滅殺するように教えられることがあった。そなたは異教の民にであったときどのように対応する」
「はい。異教徒とはいえ、蒙昧で我々のいと高き神の偉大さを理解しない憐れな者がいます。そのような者は時がたてばあるいは唯一の神に帰依することも考えられますし、無闇に葬ることはいたしません」
「我々の神は戦を勧め、罪には血をもって報いられる厳しき神だが、預言者や聖者たちはむしろ寛大さと慈愛をもって万民に臨んだ。剣は畑を作らず、水をまくことで種は芽吹く。どうだ?」
「はい。仰るとおりです」
「神は無限の力をもっている。人間の力は卑小だが、それでも心がある。我々の心はヌースだ。これは何だ?」
「神の息吹です」
「そうだ。神に息吹、神の精神。楽園を追われしアダムは神の息吹によって命を得、我々にもその欠片の欠片が伝わっている。すなわち肉体は脆くとも、精神にはそれ以上の可能性があるのだ。――罰は神が命じられた時のみ下し、それ以外のときは慈悲と寛容をもって他人に当たるのが人の生きる道ではないか?」
「はい。しかし彼らが異教徒である点は……」
「そなたは伝道師だ。実感がないようだが、そなたは神の剣となると共に、神の本となり教えを広げる役目もあるのだぞ」
その時、ジュンは「はい」と答えることを忘れた。
ジュンは特級十字騎士。所属する聖堂を持たず、時に人里離れた地に赴き神に仇なす者達を排除する遠征の戦士。しかし古い言葉フスハー語でいう『カルキスト』とは遠征の騎士を指す音ではなく、教えを広める者。長い年月で教えを広めるという意味から異端を葬り神の名を知らしめる騎士に対して使われるようになっただけであるのだ。
ジュンは自分の中に熱いものがこみ上げるのを感じた。信仰を持つ者だけが持ちうる、独りよがりではない、外的な事象に裏付けられた強い感動だった。
「私は、大司教殿、私は……」
「良い、言葉にする必要はない。言葉は神であるが、不完全ならば言葉を生みだす必要はない。そなたの中で熟した時に、神の名のもとに唱えると良い」
「はい……!」
涙が伝う頬。それは一人の物だけではなかった。
ジュンは感動に震えながら床にひれ伏した。飯村も彼に背を向け、壁に描かれた太陽十字を向いて跪いた。
天窓から差し込む光が、とてもまぶしく感じた。
祈りが始められようとする。しかしそれを遮って、かしわ手の音が響いた。
「兄さん、本当にモナ・ラトレイカになったんだね。教えに感動して涙するなんて、僕には考えられないよ」
「……何しに現れた。ここはお前のような異教徒のくる場所ではない」
「異教徒、ね。少なくとも兄さんの連れてる三人よりは異教徒じゃないよ、僕は。だって、ほら、覚えてる?」
「……あぁ。そういえばお前、俺達が教会に拾われてしばらくしてからいなくなったんだよな。―― 一振りの魔剣と共に!」
「兄さん、怒ってる? でもあの時僅かに教わったことは忘れていないし、剣は今でも使っているんだよ」
「今朝見せてもらったさ」
気配を悟らせずにトウヤは、床にひれ伏していたジュンをあざ笑うように見下ろしていた。彼の立つ場所はちょうど日陰になっており、まるで神の加護の外にあるかのような雰囲気があった。
会話が途切れ、兄弟はしばし沈黙する。
立ち上がり、やおら剣を抜くのはジュン。弟の顔がわずかに強張った。しかし戦闘は止められた。
「伝道師よ、先程言った事を忘れたか? それに男の兄弟を斬ることはあまり褒められたことではないぞ」
「も、申し訳ございません」
ジュンが急いで剣を収めるのを、愉快そうにトウヤは見ていた。
剣をしまい、代わりに剣のように鋭い視線をトウヤに向ける。
「座れ、トウヤ。これからお前に説教してやる」
「や、それは遠慮しておくよ」
と言いつつ、トウヤは祈祷所の片隅に置いてあった椅子を引っ張り出してジュンの前に座った。(祈祷は床に坐して行うものであるから、祈祷所に椅子が常に並べられていることはない)
「それより兄さん、僕から話があるんだけど?」
「……何だ? カミエのことなら取り合わないぞ」
「ところがどっこい、七那瀬さんのことなんだな。――兄さん、もう旅をやめなよ。世界を護りたい気持ちはわかるけど、兄さんには無理だと思う。今までだって、さんざん非道なことしてきましたって顔しているけど、本当は本当の悪人しか兄さんは殺していない。それ以外の、悔いている罪人なら兄さんは必ず更生の道を与えている。その兄さんが、あの穢れを知らないような『黒き月の独り子』を犠牲にできるっていうの? 兄さんは知らないだろうけど、『|混沌渦巻く聖墓〈トウェルヴ・ケイオス〉』はそれはそれは恐ろしい場所だ。そんな場所に、兄さんはあんなに可愛らしい女の子を捨てられるって言うの?」
「くだらない」
ジュンは即答した。
「くだらない」 彼は繰り返す。――「お前が俺の何を見てきたかは知らないが、カミエのことに関して言えば見当違いもいいところだ。あいつは自分の罪を悔いてなどいない。ただ絶望して、死にたがっているだけだ。いや、悔いているかどうかは問題ではない、あいつはただ、もう死にたいんだ。だから俺はあいつを連れていく。どうせ人の規格から離れた『独り子』のこと、その言葉にどれだけ真があるかなんか普通の人間にはわからない。だから、俺は信用しない。ただあいつが死にたがっているという点だけ、俺は確信している。――それに、お前自身がカミエを死なせたくないと思っているわけでは無かろう?」
「まあね。――それにしても、そんなあの子が兄さんは好きなんだね」
「――――」
「否定しないんだ」
「否定も肯定もしない」
「でも兄さんは曖昧なところのない人間だから、そういうってことは肯定したも同じだ」
答える言葉はない。
カミエは『黒き月の独り子』の属性として無意識に人の心を揺さぶる。あるいは、元からそういったカリスマを持った少女だったのかもしれない。とにかくジュンはそのことは否定しがたい事実だとして受け入れ、その上で彼女と向き合おうと思っているのだ。
彼女を憎悪すれば、あるいはその影響から逃れられるかもしれない。しかしそうはしない。何故か? それは何度も繰り返された問いであり、それにも関わらず答えは出されていなかった。――憎みきれないと、理性では語れない魂の振動がそのような結論に至っていた。
トウヤはにやりと嗤って言う。
「ま、これもある程度予想の範疇。なら兄さんには七那瀬さんを嫌いになってもらうよ」
「嫌いに……」
その時、野太い雄たけびが外から聞こえた。
ついで警鐘。鳴り響くのは鐘の音だけではなく、人の断末魔の絶叫もだ。
ジュンは電光石火で剣を抜きトウヤに撃ってかかった。
「貴様……何を謀った!」
トウヤはつるりと逃げる魚のような動きで剣をかわした。
「総勢六十人。どれも屈強の戦士、至賢の魔術師ばかり。向こうはここの手の内を知っているから、ここが落ちるのは早いよ。それに火だって何だって使う。――神の力の欠片を持つ人は、否応なしに戦うだろうね」
「くっ…………お前!」
逃げるトウヤを締め上げようとするが捕まえられない。そうこうするうちに彼はドアの外へするりと出て行ってしまった。
聴こえる微かな笑い声。
「あいつは後だ。――飯村殿、すぐに応戦の指揮を」
「分かりました、特級十字騎士殿。神の名のもとに不埒な者達を蹴散らしましょう」
戦力は完全に分断され、地の利も奪われた戦士達は炎渦巻くなかで、追い立てられ、殺され、次々と骸を曝していた。まさしく阿鼻叫喚。煙と共に揺れるのは血と臓物の匂い。戦士達は無残な姿で殺され、曝され、その光景を物見やぐらの上に登ったジュンが歯が砕けるくらいに食いしばって状況を眼と耳で確認した。
戦闘可能な敵の総数は五十。近接戦闘者が三十三に、飛び道具および魔術使用可能な者が十七。衣装に統一性の見られない敵は、どこかの軍隊ではなく傭兵の集まりのようだった。
ソウジとジルコニアは三名の傭兵に足止めされている。二人が本気になれば一瞬で切り抜けられそうなものだが、急襲で混乱しているのかその態勢に入っていない。とは言っても敵もそれなりに強い者らしいことが目に見えた。――もしかしたらこの状況を楽しんでいるだけかもしれない。
そしてカミエがいない。――否。
「ジュン! やっと出てきたね」
物見やぐらの上にいるジュンと、同じ目線にいるカミエ。やぐらの上には登っていない、つまり、空を飛んでいた。
風に舞う極細の金糸のような長髪と、淡い虹色の光でできた両翼。いつ見ても、その姿に目を奪われずにはいられない。
「お前――っ、いや、俺の近くに来ただけならいいか……」
「? 何ぶつぶつ言ってるの、って、何かウザ!」
カミエの両翼で何かが爆ぜた。氷の矢のようなものだったが、世界を滅ぼすとも言われる『光の混沌』の力で作られた両翼の前では火花のようなもので、特にダメージはなかった。しかし攻撃されたことにいら立ったカミエが即座に反撃した。
バシ! と下の方で光が爆発する。叫び声が三人分くらい聴こえた。
「カミエ! お前は余計なことするな!」
「はーい。じゃ、応援してるからさっさと片付けてよ。――とりあえず、半径二十メートルにいる敵さんは十二人だから」
物影に隠れて見えないはずの敵を、カミエは優れた感覚神経で容易く把握していた。
「……まだ生きている味方はどこにいる?」
「ソウジとジルちゃん以外の人達はね、あっちの倉庫の方に逃げて行ったかな。ていうか、倉庫に立てこもった人たち以外は死んじゃった」
数名の人の生死など、もはや何ということはないという態度でカミエは言う。
――いや、俺さえ生きていればいいのか?
漠然と思いつき、どうでもいいことだと頭の外に置きつつジュンはやぐらから下に降りた。
『勇敢なる戦士にして、王達の始祖たるダビデの力、聖なる土地を踏み荒らす悪しき軍勢を蹴散らす力をここに!』
すでに関所の兵たちを追い詰めたと思い、油断していた傭兵の背後からジュンは攻撃を放つ。とっさに振り向いた傭兵だが、為す術なく稲妻の弾丸に撃たれ塵と化した。
剣を地面に叩きつけ小石を飛ばし、それに力を付加して飛ばす技。関所の兵が立て篭もった倉庫まで届き、その前に立つ敵兵を一気に四人ほど蹴散らしていた。
あっけにとられる傭兵の一団。
ジュンは一気に走る速度を上げ、駿馬の如く勢いで敵陣に切りかかった。
まず一人の顔面を割り、還す刃で二人目の喉笛を切り裂く。
「こ、のおぉぉぉおっ!」
背後から鉈のような剣の攻撃。ひらりとかわして、手を叩き斬り、逆袈裟に一閃。
血飛沫を上げる身体が倒れる前に、迫ってきた四人目の心臓に剣を突き立てる。
「――彼の敵の墓標となれ!」
岩でできた槍が降ってきた。
楯で逸らすように防御する。だが態勢を立て直しはじめた魔術師たちがジュンを包囲し、一斉攻撃を始めた。
「流石に……早いな」
防御できるのはあくまでの小さな楯の範囲。ジュンは魔術攻撃をかわしつつ、聖符を取り出す。
『克肖者イエロニム、四大の聖人。彼に従う獅子の牙よ、ここに!』
剣を叩きつける。その一閃から雷撃が地を走り、まず一人を倒す。
敵を食らうように飲みこんだ雷撃は、やがてライオンのような姿に成長した。
傭兵達に動揺が走る。
攻撃の対象が雷のライオンに向かうが、ライオンはまさしく電光石火でそれをかわしつつ翻弄しつつ、次々と敵を襲う。瞬く間に七人が牙にかかり黒骸となって地に伏した。
包囲が乱れた隙にジュンは一人に切り捨てる。
だが敵はまだ半数が倒れたくらいだった。
「ジュン!」
「ちっ――――『神よ、我にラザロの護りを与えよ!』」
先程の五割増しの集中砲火がジュンに降り注ぐ。聖符の防御がそれを弾くが、全方位から密に打ち寄せる攻撃がバリアーの隙間を穿った。
「――ぐ!」
「ジュン!」
「カミエ……くるな! お前は必要ない!」
ジュンを囲む傭兵の背後にカミエはいた。
敵は驚き、そして武器を振り回す。カミエは常人離れした反射能力でそれを易々と回避するが、残っていた傭兵達が瞬く間にカミエを包囲した。
青空と同じターコイズ色のカミエの瞳が変わる。心優しい少女のものから、自身に反逆する命を容赦なく奪う血塗られた天使の瞳に。
「カミエ、やめろ!」
ジュンは駆けだそうとし、しかし負傷のためにすばやく動くことができなかった。さらに彼を阻むように敵が立ちはだかる。
乱暴に剣を振り下ろすが防がれてしまう。その視線の向こうで、幾人かの傭兵がカミエに武器を向けた。
「やめろ!」
その瞬間、光が爆発し世界が白く消滅した。
なんか駄目だめです。つまらなすぎてコメントも無い状況ですし。
書くの止めようかな、……なんて、ありえませんが。さっさと最後まで行って、また書き直したいです。
シナリオには自信があるのですが。