ありふれたプロローグ
初投稿です。拙い作品ですが楽しんでいただけると幸いです。不定期更新です。それでも良ければよろしくお願いします。
ありふれたプロローグ
「ふぅ…」
俺は読んでいた魔導書を閉じ、席を立った。
太陽は“東”の水平線に半分ほど沈んでいて、もう夕方だと一目でわかる。
地球であればまず見ることが無いであろう重厚な扉を開けながら、俺はこの世界———ファンタズマに“飛ばされた”日のことを思い出していた。
あの日は今までにないくらい暑かった。恐らく、35度以上はあっただろう。陽炎が揺らめき太陽がじりじりと照り付けるなか、俺は大学からの帰り道を一人で歩いていた。意識が朦朧とするなかペットボトルの水を飲み干して、信号待ちをしている人たちとともに交差点で立ち止まった。
一台の車が突っ込んできたのはそのときだった。
たぶん100k/ⅿはあったと思う。距離があったことも幸いして全員が避けることができた。
———たった一人を除いて
その少女は交差点の道路沿いにいたのだろう。そして、逃げるときに転んでしまったようだ。迫る車に怯えているらしく、動けないでいる。
「…ッ!」
俺はそこまで理解した瞬間、走り出していた。小、中、高、そして大学でも常に帰宅部だったが、運動神経は良く、運動部の奴らよりも高い記録を出したりしていた。本気で走れば間に合うと思った。
それは———半分だけ正しかった。
というのも、車のスピードが突然上がったのだ。間に合わないと気が付いた俺は、その少女を歩道の方に放り投げた。刹那———
俺の身体は地面と平行に吹き飛ばされされた。
地球での記憶はここで途切れている。