裸押合大祭 2
その日はあっという間にやってきた。
祭りそのものは昼過ぎから始まるが、準備は午前中から始まる。
旅館の一室をそれぞれのグループで貸し切り、そこで食事をしたり、お酒を飲んだり、トイレに行ったりして時を待つ。
ある所ではさながら同窓会のようだったりするが、圭吾たちが参加するのは病院の集まりだ。それでも、複数に分かれているというから、参加人数はどれぐらいになるのだろう。
始まる前からお酒を飲んでいるが、表情は誰もが真剣だ。
お酒を飲むのも身体を温めるためと、気持ちを高めるためだとか。
私は、温かな甘酒をいただく。
八海山の甘酒とのこと。
あるんだ、そんな高級そうな甘酒。
うまー。
「それじゃあ、先生。見ていてもいいですが、そろそろ私達も着替えますので」
「あー、はい。外に出ていますね」
見ていていいんだ。
あまり見たくないけどね。
扉の外で立ち止まり、私は甘酒を一口すする。
喉を通り過ぎると、胸のあたりがじんわり温かくなった。
先日、医局長から連絡があった。
やっぱり大学に戻ってきて欲しい、とのことだった。
新しい部署立ち上げのために、シニアレジデントとして、実働部隊として働いて欲しい、と。
『 ここはどうなってしまうのですか? 』
と聞いたら、しばらくは1-2ヶ月毎に交代で医師を派遣するが、時期を見て派遣は中止になるだろう……ということだった。
私はここの必要性、重要性、そして勉強になることを伝えたが、医局長の先生は、
『 解っている。よく解っている。 』
と言って、それ以上は語らなかった。
私もそれ以上は何も言えなかった。
そして、私はしばらくの沈黙の後で、申し出を受け入れた。
3月末で、私はここを離れる。
そのことを、まだ私は院長先生以外、誰にも伝えられていない。
院長先生は、本当に残念そうな顔をして、そしてやはり引き止めの言葉をかけてくれたが、どうしようもないことは解っている様子だった。
「また、いつでも来て欲しい。待っている」
と肩をたたいて、笑顔でそう言ってくれた。
本当に申し訳ない。
扉が開いて、中から上半身は裸の白い出で立ち姿の男衆が出てきた。
その中には当然、圭吾もいる。
なかなかの筋肉質。眼福だ。
遠慮なく、全身を眺めさせてもらった。
「さあ、あかり先生も行きましょう。沿道で待っていてくださいね」
「うん。楽しみにしているよ」
圭吾は、いつにない男らしい笑顔でうなずいてくれた。




