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水の無い川  作者: 京夜
27/31

裸押合大祭 2



 その日はあっという間にやってきた。

 祭りそのものは昼過ぎから始まるが、準備は午前中から始まる。

 旅館の一室をそれぞれのグループで貸し切り、そこで食事をしたり、お酒を飲んだり、トイレに行ったりして時を待つ。

 ある所ではさながら同窓会のようだったりするが、圭吾たちが参加するのは病院の集まりだ。それでも、複数に分かれているというから、参加人数はどれぐらいになるのだろう。

 始まる前からお酒を飲んでいるが、表情は誰もが真剣だ。

 お酒を飲むのも身体を温めるためと、気持ちを高めるためだとか。

 私は、温かな甘酒をいただく。

 八海山の甘酒とのこと。

 あるんだ、そんな高級そうな甘酒。

 うまー。


「それじゃあ、先生。見ていてもいいですが、そろそろ私達も着替えますので」

「あー、はい。外に出ていますね」


 見ていていいんだ。

 あまり見たくないけどね。


 扉の外で立ち止まり、私は甘酒を一口すする。

 喉を通り過ぎると、胸のあたりがじんわり温かくなった。


 先日、医局長から連絡があった。

 やっぱり大学に戻ってきて欲しい、とのことだった。

 新しい部署立ち上げのために、シニアレジデントとして、実働部隊として働いて欲しい、と。


『 ここはどうなってしまうのですか? 』


 と聞いたら、しばらくは1-2ヶ月毎に交代で医師を派遣するが、時期を見て派遣は中止になるだろう……ということだった。


 私はここの必要性、重要性、そして勉強になることを伝えたが、医局長の先生は、


『 解っている。よく解っている。 』


 と言って、それ以上は語らなかった。


 私もそれ以上は何も言えなかった。

 そして、私はしばらくの沈黙の後で、申し出を受け入れた。


 3月末で、私はここを離れる。

 そのことを、まだ私は院長先生以外、誰にも伝えられていない。


 院長先生は、本当に残念そうな顔をして、そしてやはり引き止めの言葉をかけてくれたが、どうしようもないことは解っている様子だった。


「また、いつでも来て欲しい。待っている」


 と肩をたたいて、笑顔でそう言ってくれた。


 本当に申し訳ない。



 扉が開いて、中から上半身は裸の白い出で立ち姿の男衆が出てきた。

 その中には当然、圭吾もいる。


 なかなかの筋肉質。眼福だ。


 遠慮なく、全身を眺めさせてもらった。


「さあ、あかり先生も行きましょう。沿道で待っていてくださいね」

「うん。楽しみにしているよ」


 圭吾は、いつにない男らしい笑顔でうなずいてくれた。




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