忘年会 2
舞台の出し物は、ほとんどは劇か歌か。
たまに、どうやら恒例のかくし芸をやる人がいたりする。
私もいつの間にか、この病院で働く人の大半は知り合いとなってしまった。
だから、とってもその舞台を楽しめた。
「でも自分の番となるとなぁ……」
「そろそろですね。用意しましょう」
「ふぁい……」
私達は用意のために別室に向かった。
やると決めたからには真剣にやる。
楽しんでもらうために全力を尽くす。
そう考えているが、心が折れそうになるよ。
「先生、やっぱり肌がきれー。普段もっとお化粧しないの?」
「ツインテール似合いすぎ。先生、これは反則」
「服、服。みんなで隠すから着替えて!」
看護師の女の子たちが寄ってたかって私の用意を進めていく。
何をやるかって?
解るだろ。
ツインテールにして、ランドセルを背負って「マル・マル・モリ・モリ!」だよ。
芦田愛菜ちゃんだよ!
28歳に何やらせているんだよ!
「先生、ランドセル違和感なさすぎ」
「可愛い!!」
「うっさい!!」
心の何かがガリガリ削られている感触がする。
最後まで心が持つか、あるいは明日になって正気でいられるか、自信がなくなってきた。
「先生っ! 用意できましか? そろそろ出番…………大変よく似合ってますよ」
「圭吾、言うな」
「いや本当に」
「……今は何も言わないで。お願い」
ちなみにお相手の福ちゃんは、長谷部さんの息子さん。本当の小学生だ。
横に並んでも、身長が同じだったりして……。
「あかりちゃん。よろしくね」
「……よろしく」
クラスメートと勘違いしてないか。
こちとら、倍以上生きてるって!
「先生、出番です! よろしくお願いします!」
「ああ、もう行ってやる!」
舞台に出ると、歓声に、カメラのフラッシュに、大変なことになっていた。
狂わんばかりの騒ぎ。何だこのテンションは。
わずかにしか聞こえない、バックミュージックに従って、一生懸命おぼえた踊りを踊っていく。
終始笑顔を保ったが、引きつっていただけとも言える。
心のなかでは、「すべての画像と動画を消してやる……」と心のなかで繰り返していた。
えぇぃ! 盛り上がりすぎだ! 何がそんなに楽しい!
「先生! 可愛い!」
「似合いすぎ!」
こらっ、そこっ! 腹を抱えて笑うな!
あーーー、もう!
私の心とは裏腹に、私の芸は大盛況のなか幕を閉じた。
舞台が終わった私は、部屋の片隅で体育座りをしていじけていた。
「……死にたい」
「先生、最高でした。ほらいじけてないで、飲んで笑い話にしましょう!」
「……明日起きた時に、うつになりそう」
「その時は、明日も飲みましょう!」
「私も付き合いますよー!」
「…………あー、解った! 飲もう!」
そうだな。
まさかこの年になって、こんな馬鹿騒ぎができるとは思わなかった。
それはそれで、楽しい。
みんなが愛しい。
私は夜が明けるまで、一緒に飲み明かした。
翌朝、落ち込むことはなかったが、二日酔いには苦しんだよ……。




