結夢の眠る場所
「さあ、お兄ちゃんそろそろ寝ようか」
「ああ、そうだな、じゃあ」
「おやすみいいいい!」
そう言うと結夢は一目散で俺のベットに……
「まてまてまてまて!」
「ん?」
布団に潜り込み顔をだす結夢……畜生なんでこんなに可愛いんだ……
「誰が一緒に寝ると言った」
「え~~~~いたいけな少女に床で寝ろと?」
「自分でいたいけとか言うな」
「可憐な少女に床で寝ろと?」
「可憐て……、あるから、来客用の布団があるから」
「えーーーーーー」
「えーーーーーーじゃない」
「一緒に寝ようよお兄ちゃん~~~」
「だから……」
「また何か発見できるかもよ?」
「いや……」
ほんと勘弁してくれ……これ以上は俺の理性が……
「なんだったら……最後まで~~」
「おい」
「あ、言い間違えた、朝まで?」
「く……」
「あ~~~~お兄ちゃん顔真っ赤、エッチ~~~~」
「お前わざとだな! からかってるだろ?!」
「からかってないよ……からかって……ない…………ただ……不安なだけ……」
「あ……」
「だから一緒に……ね?」
「──くっそ、わかったよ、でも! な、なにもしないからな!」
「あはははははは、逆でしょそのセリフ」
俺は諦めて結夢の隣に寝転ぶ、誰かと一緒のベットで寝るのは物心ついてからは初めての経験……いや……遠い昔妹と二人で寝た事があった。ベットでは寝た瞬間俺の頭の中でその時の事が甦る。
あの時は夜で、大きな雷が鳴っていた。父さんも母さんも居ない、妹が俺の部屋に来て「お兄ちゃん一緒に寝て」と……あんな妹を見たのは初めてだった。いつもは生意気で勝ち気で、そしてあの時同じ顔をついこの間見た。あの雷の日と同じ不安そうな顔で妹は俺を見ていた…………俺が家を出た日に……
「お兄ちゃん?」
「……あ、いや……!」
天井を見ながらそんな事を思い出していると、結夢が俺を呼ぶ……そうだった今隣で少女と寝ているんだったと思いだしそっと横を向くと俺の顔近くに結夢の顔が……
近い、近すぎる……一緒に寝るってこんなに近いのか……シングルベットで二人で寝る、さっきみたいに振りではなく実際に、この近さで寝るとか無理なんじゃね? 俺は若干後退りをする。だって近いんだもん、もう顔所か全身が近い、触れては居ないんだけど、体温を感じる程に近い、近すぎる。
「お兄ちゃん落ちちゃうよ~~もっとこっちに」
結夢はそう言うと俺の背中に手を回し俺を抱き寄せるってえええええええ!
身体が密着する、胸が密着する、顔同士がくっつく……俺の全神経が接触部分に集中する。結夢のお風呂上がりの匂いが俺の脳を刺激する。俺と同じシャンプー、俺と同じリンスを使った筈なのに何故違う匂いがするんだ? 甘い甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「…………」
声が出なかった……出せなかった。やめろと拒絶しなければいけない筈なのに、出来ない、かといって抱きしめ返す勇気もない……俺は結夢のなずがまま、抱かれるままただじっとしていた。
すると……
「う、ううん……おにい……ちゃん……」
俺の耳元から甘い囁きが……え? え? ええええええ!?
これって……そう言う事? 俺を抱きしめながら何かもぞもぞと動いている……いや、誰かとこんな状態で一緒に寝た事なんてないから、でも俺の知識では、この拙い知識ではこれが何を意味するか、一つしか考えられない……
美少女が突然家にやって来て、一緒のベットに入ってそして耳元で囁かれて……こんな美味しい展開……いやいや待て、まだわからない、これが美人局の可能性も、手を出したら玄関の扉が開き怖いお兄さんが入って来て……
いやそれならばさっきの段階で入って来てもいいはず、さっき俺の小説の真似をした時は下着姿だった。今はあまり変わらないとは言え、パジャマがわりにロングのシャツを着ている。ちなみに下着姿で寝ようとしてたので俺のを貸した。
鍵はしっかり閉めた。今の所外に誰かいる気配は感じない。
つまり……これは……据え膳ってやつなのでは?
なんだっけ? えっと据え膳食わねば高楊枝だっけ?
作家志望なのに言葉が出ない、いつもの癖でスマホを探そうとしてしまう。
違う、今はそれどころじゃない……童貞捨てる道程なんだ……いや、本当に何を言っている俺……
とりあえず、こういう時は何か言うんだよな、えっと……
「結夢」
よくわからないのでとりあえず名前を呼んでみた…………返事がないただのしかばねのようだ……
違うううううううう……違う違うそうじゃない。
「結夢? えっと良いの?」
何が良いのか全然わからないけど、わからない事は聞けと死んだ婆ちゃんも言っていたし。
「…………」
俺がそう聞くが結夢は何も返事をしない……恥ずかしがっているのか、怖がっているのか……とにかく俺は多分年上だ、経験が無くても俺がリードしなければ……
俺はそっと結夢を抱きしめそして、ゆっくりと唇に近づきキスを
「むにゃ……おにい……むにゃ……すーーーーすーーーー」
「寝てるんか~~~~~い」
結夢は俺に抱きついたまま寝てしまっていた。安心そうな顔で……ベタな落ち……
でも……自分の中に記憶が無い、覚えていた事は俺の小説だけ、その小説を書いている俺だけが唯一の知り合い、そう考えると恐ろしい。俺だったら耐えられるのだろうか? 真の孤独と言うものに。
今はその孤独から一時的に解放され安心したのだろうか? 結夢は幸せそうな顔で寝ている。
なのに俺は自分の事、自分の欲望の事ばかり……
少し自己嫌悪に陥りながら、俺は結夢を起こさない様に俺からそっと離し隣に寝かせ布団をかけた。
暫く隣で結夢を見ていた。可愛い寝顔……その可愛らしい寝顔を見ているうちに俺は少しだけ結夢がいとおしくなってくる……まるで本当の妹の様に……
どっちなんだああ、少しずつ増えてるブクマ……
とりあえずもう少し続けて見ようかな……
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